大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(ネ)225号 判決

控訴人等は連帶して被控訴人に対し金二万五千百円及びこれに対する昭和二十五年四月二十三日以降完済に至るまで金百円につき一日金十銭の割合による金員を支拂うべし。

被控訴人その余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審共控訴人等の連帶負担とする。

この判決は被控訴人において両名に金七千円の担保を供するときは仮りに執行することができる。

二、事  実

控訴人等は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。被控訴人の事実上の主張は、本件約束手形の受取人は被控訴人であつて被控訴人は満期に、控訴人等の肩書住居である仙台市北三番丁目五十一番地において、控訴人等にこれを呈示してその支拂を求めたと述べた外原判決事実摘示と同じであるからこれを引用する。

控訴人しゆくは答弁として被控訴人主張の事実中本件約束手形を振出したこと、満期の後における損害金支拂の特約をしたことは爭わないが、満期に本件手形を呈示したとの主張は否認すると述べた。

控訴人彌右衞門は当審においても本件口頭弁論期日に出頭しないし、また、答弁書その他の準備書面も提出しない。

三、理  由

本件約束手形振出の事実及び満期後は手形金に対する月一割の損害金を支拂う特約をした事実は控訴人彌右衞門においては明かに爭わないから、これを自白したものとなすべきであり、控訴人しゆくにおいてはこれを認めるところである。被控訴人が右手形の満期に控訴人等の肩書住居で支拂要求のために右手形を呈示した事実は控訴人しゆくの否認するところであつてこの点からみると、控訴人しゆくと住居を同じくする控訴人彌右衞門においてもこれを爭う趣旨と解し得られなくはないが、右呈示の事実を認め得る証拠はない。然らば本件手形の共同振出人である控訴人等は連帶して被控訴人に対し手形金二万五百円及びこれに対する本件支拂命令が控訴人等に送達せられた日の翌日であること記録上明らかな昭和二十五年四月二十三日以降完済に至るまでの遅延損害金を支拂う義務ありというべきであるが、被控訴人の満期の翌日から昭和二十五年四月二十二日迄の損害金請求は失当というべきである。次に右手形金に対する月一割の損害金支拂の特約の効力につき檢討するに、約束手形の振出人の債務は商行爲により生じた金銭債務であつて、その不履行による損害賠償債務も亦商行爲に基く金銭債務にほかならないから、規定に基き損害金の予定を約し得るけれども、その損害金たるや、一般取引の観念に照し、社会及び経済生活の常態に適應し一般取引の安全を維持するに足る相当の数額でなければならない。ゆえに、もしその損害金にして特別の事情がないのに拘らず、債権者に過大の利益を與えると共に債務者に過重の負担を課してその社会及び経済生活を脅威し、延いて一般取引の安全を阻害するような過当の数額であるとするならば、その損害金支拂の約定は即ち公の秩序又は善良の風俗に反するものであつて、その相当額を超過する限度においては、民法第九十條により無効のものといわなければならない。控訴人等が本件約束手形金の支拂について約した前示月一割の損害金はこれを日歩に換算すると金百円につき一日約金三十三銭に当るが、特段の事情の認められない事件の場合にあつては、諸般の事情に照し妥当と認められる金百円につき一日金十銭を超える部分については、前叙の理由により無効と解するのが相当である。されば被控訴人の本訴請求は以上説明の限度において正当としてこれを認容すべきであるが、その余の請求は失当として棄却すべきである。

よつて被控訴人の請求全部を認容した原判決は一部失当であるから、民事訴訟法第三百八十四條、第三百八十六條、第九十六條、第九十二條、第九十三條、第八十九條、第百九十六條を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 猪狩真泰 菅藤栄)

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