仙台高等裁判所 昭和25年(ラ)25号 決定 1953年4月22日
抗告人 伊藤五八
主文
原審判を取消す。
抗告人の名「五八」を「修」と変更することを許可する。
理由
本件抗告の要旨は
抗告人の名「五八」という呼称は珍奇でなく抗告人の社会的信用に影響がないとして抗告人の申請を却下した原審判には不服であるから原審判を取消し、「五八」を「修」と変更することの許可を求める。と云うのである。よつて抗告人の名「五八」を変更するについて正当な理由があるかどうかについて按ずるに「五八」と云う名は一般的にみて必ずしも珍奇とはいい難いし、この名のためにその人の社会的信用を損うものともいいきれないであろうが、しかし「五八」なる呼称が何となしに低俗な感を伴うことも否定し難いところであり、従つてこの名をもつ人の社会的地位及び環境等との関連においてこれをみるときこの名がその人の社会的信用に影響を及ぼすこともないとは断じ難い。記録によると抗告人は、○○県立○○農業高等学校教諭として奉職するものであることが認められ、抗告人のかかる社会的地位及び日常多数の子弟や同僚に接せざるを得ない環境等からみて、抗告人が自分の名「五八」を気にすることもまことに無理からんところと推測し得られる。なお「五八」が数字的であるため、とかく番号日附等の数字と間違えられ日常生活上甚だ不便であるとする抗告人の言分も肯き得ないことはない。以上の次第で抗告人がその名「五八」を変更しようとするについては正当の理由があるものとみるのを相当とするから、抗告人の本件申請はこれを許容すべきであつて、これを排斥した原審判は当を得ない。よつて特別家事審判規則第一条、家事審判規則第十九条第二項により主文のとおり決定する。