仙台高等裁判所 昭和26年(う)228号 判決
原判決はその第二(1)の事実として「被告人が原判決の別表第二記載のとおり、昭和二十四年七月八日頃より同年十一月二十四日頃までの間合計約四十九回に亘り原審相被告人鈴木オヨネより政府の免許を受けない者の製造した濁酒合計約三石八斗八升及び同焼酎合計約六斗六升を譲り受け」という事実を挙示の証拠により認定している。しかし右挙示の証拠を検討してみると、被告人が右別表記載のとおり合計約四十九回にわたり右濁酒合計約三石八斗八升及び同焼酎合計約六斗六升を譲り受けたという点については、検察事務官に対する被告人の第一、二回供述調書と大蔵事務官の被告人に対する犯則事件調査顛末書中で、被告人がこれを自白している外は、検察事務官に対する鈴木オヨネの供述調書中で同人が「私が木村留蔵に販売した酒は昨年(昭和二十四年)七月頃から本年になつて税務署員が私方に臨検に来られた頃までの間約五十回か六十回に亘つて濁酒合計約一石五斗位焼酎は合計約二斗位を販売した」と述べ、且つ大蔵事務官の吉本よねに対する質問顛末書の中で同人が「昭和二十四年七月上旬より本日まで約三十六、七回に渉り濁酒一石五斗、焼酎約二斗位を仕入れ、それを譲り渡した数量年月日は忘れましたが、譲り受けた濁酒及び焼酎は全部木村留蔵へ約五十回に渉り販売しました」と述べ更に「木村留蔵へ販売した月日数量は木村留蔵の手帳には次のように記載されて居りますがどうですか、と問われ、右手帳の表を示されたのに対し、そのように沢山仕入れませんし、販売したこともありません」とその譲渡数量を争つている証拠があるだけである。すると、原判決は、この事実については被告人の自白以外にこれが補強証拠が不十分なままこれを認めた違法があると云わざるを得ない。すなわち、原判決は別表記載の各個の譲受所為毎に一罪の成立することを認めたこと明白である以上、右各犯罪事実のすべてに自白以外の補強証拠が要求されること言うまでもないのに、前記の証拠では、そのすべてを補強するに足らないのみならずどの事実を補強するのかも明白でないからである。
然らば原判決はこの点において理由にくいちがいがあると言わねばならぬ。論旨は理由がある。