仙台高等裁判所 昭和27年(う)336号 判決
次に職権を以て調査するに、本件の一は中古荷車一台(時価一、五〇〇円相当)の窃盜であり、他は知人宅での茶ぶ台一個(時価一〇〇円相当)の窃盜であつて、事案は極めて軽微であり、諸般の情状を考量すると、原審の科刑は重きに過ぎるし、被告人に対しては刑の執行を猶予するに足る情状があると認められる。尤も被告人は昭和二六年六月一八日仙台地方裁判所で詐欺、横領罪により懲役一年但し三年間執行猶予の言渡を受けているのであるが当裁判所が職権で取調べた右詐欺、横領事件記録中の各公判調書(調書判決を含む)によると該前科の犯罪事実中一個は本件二個の窃盜後の犯罪であつて仮りに本件が之等の罪と同時に起訴審判せられていたとしてもその全部を通じて執行猶予の言渡を受けていたものと認められる。しかしてこのように同時に起訴審判を受けていたなら全体を通じて執行猶予の言渡を受けていたと認められる様な場合は各別に起訴されその一について既に執行猶予の言渡を受けていたとしても後に審判を受ける犯罪につき重ねて刑の執行を猶予することが出来るものと解するを相当とする。蓋し然らざれば検察官の起訴如何によつて被告人は不当に不利益を蒙る結果を招来するからである。果して然らば原審が被告人に対し刑の執行を猶予することなくして懲役一〇月の実刑を言渡したのはその科刑甚しく過重であつて、原判決はこの点において破棄せらるべきものとする。