仙台高等裁判所 昭和27年(う)479号 判決
昭和二十七年四月二十二日附原審公判調書によれば、検察官が専売監視の五十嵐寅鬼に対する犯則事件調査顛末書(第三回、第五回、第六回)謄本を、情状の証拠として取調べを請求したのに対し、弁護人が右書面を証拠とすることに同意しなかつたのに、原審がその証拠調べをしたことは、所論のとおりである。
しかし、記録を精査するに、右五十嵐に対する犯則事件調査顛末謄本は、原審が証拠として原判決中に挙示せざるところであり、且つその中に記載せられた供述内容は、専売監視の被告人に対する犯則事件調査顛末書(第一回乃至第五回)及び被告人の検察官に対する供述調書を通じ、その供述として記載せられているところと同趣旨である。而して、原判決には右の後の二種の書類に記載せられた被告人の供述が証拠として挙示せられている。されば、原審が前記五十嵐に対する犯則事件調査顛末書謄本の証拠調べをまつて、はじめて、被告人に対する刑の量定をしたものとは考えられない。従つて、仮に、所論の如く、量刑に関する事実も厳格な証拠法によるべきであり、証拠能力のない書面の証拠調べをしたことが訴訟手続上の法令違反になるとしても、その違反は、判決に影響を及ぼすことが明かであるとはいえないから、原判決破棄の理由とはならない。論旨は理由がない。
同第二点に対し。
原判決が、追徴の理由として、原判示所為により譲受けた葉たばこの中、沒収したその余の部分については、既に現物を沒収することができないから、たばこ専売法第七十五条第二項により、その価格を追徴する旨説示したこと所論のとおりであつて、その沒収することができない理由が右法条所定の何れの場合に当るかを説示していない。しかし、前記専売監視の被告人に対する犯則事件調査顛末書及び被告人の検察官に対する供述調書によれば、右は大阪方面の朝鮮人等に譲渡したものであることが認められる。それ故、追徴理由の説示として不十分ではあるけれども、原判決には、所論のように、前記法条を不当に適用した違法は存しない。