大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(う)596号 判決

被告人は元連合国占領軍高館地区高館警備隊長であつて、右高館警備隊に贈与された石炭を業務上保管中、其の一部たる合計十二屯半を訴因記載の通り他に売却処分したが、その売却処分するに至つた事情は当時右警備隊が其の機構改革の結果、予算著しく寡少で維持費にも事欠く始末であり、加えて被告人としては警備隊として米軍係官との接衝の円満を期する為其の方面との交際を円滑にする必要があるのに拘らず是が交際費としてなかつたことである。斯様な維持費・交際費其の他の雑費を捻出する目的で被告人は、或いは警備隊との交渉を持つ業者に寄附を仰いだり、或いは右のように警備隊用の石炭を売却処分したりしたのである。そして右受贈の石炭は警備隊員詰所用としては余剰が生ずる程の数量で被告人の処分したのは正にその余剰に当る数量のものであつたし、このような石炭を警備隊で処分してはならぬという理由があつたとも認められず、又同隊で之を処分するとすれば如何にすべきものかについては特段の規則もなく、むしろ隊長たる被告人において適宜売却する等を適当とする状況にあつたことが認められる。而して、被告人はその売得金を私用に費消したわけではなく、警備隊のために米軍係官との交際費に費消したのである。換言すれば、警備隊長たる被告人はその権限に従つて警備隊の為の費用を捻出する為に他に売却したのである。そうだとすると被告人の所為は横領罪(業務上横領罪)其の他の犯罪を構成するものでないことは言を俟たない。従つて被告の行為は罪とならぬ。ただ被告人は前示の事情の下に右の売却行為に出たものであるから、之を被告人に他の適法行為に出づべきことの期待が不可能であつたものと認めることは出来ない。然るに原判決は被告人に斯様な期待をすることが不可能であつた旨認め、被告人に責任阻却の事由があるものとして無罪を言渡したから、原判決には期待可能性なしと認めた点で誤認があつた訳であるけれども、此の誤認は単に被告人の所為が罪となることのない理由づけに関するものであるに過ぎなく、判決に影響を及ぼすことの明らかな違法だとは謂い得ないから、判決破棄の理由とはならない。

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