大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(う)912号 判決

論旨は、横領の目的物は残立木其ものであり、横領の着手は昭和二十六年八月中旬、其終了は同年九月上旬なりと主張する。ところで横領罪は其未遂犯が処罰されないことに鑑み、横領行為は不法領得の意思が行為によつて外部に発現したときに着手あり、と同時に行為の終了あり、即ち犯罪として既遂になる、と解すべきである。それ故不法領得の意思を明暸に識別し得べき行為が横領行為なのである。今、所論の証拠から考察すれば、本件に於て、被告人の横領の目的物は所論の残立木約二百四十石、横領行為の既遂時期は所論八月中旬乃至九月上旬迄の間と解し得られない訳ではないけれども、然し此期間に於ては、所論の通り、被告人は右残立木を伐採した伐採賃を自己の費用で支弁したとか、或は斯様に伐採して素材とした旨を官庁備付けの諸帳簿に記帳しなかつたとか謂うだけのことであるから、斯る行為は右立木に対する被告人の不法領得の意思が確定的に発現されたものとは断定し難いのであつて、其後右立木を伐採して得た素材を他に転売すると謂う様な行為があれば、斯る行為こそ此素材に対する被告人の不法領得の意思の発現なりと確定的に評価することが出来るのである。従つて原判決の様に、横領の目的物を前示立木でなく、此立木を伐採して得た素材であると認定し、横領の既遂時期を伐採賃の支払乃至帳簿不記入の期間ではなく、素材転売時期と認定することは、論旨の見解よりももつと正当であると謂わなければならない。

(後略)

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