仙台高等裁判所 昭和27年(う)925号 判決
所論は要するに被告人は本件はいずれも商売資金として新田正次郎より借受けたもので、詐取したものではないというに帰するのであるが、それが単なる消費貸借であるか詐欺罪であるかは、諸般の情況から被告人の所為が普通一般の貸借としての取引に伴う正直さと公正さを具備するかによつて、これを区別しなければならないものであるところ、挙示の証拠によれば、被告人は初めから古鉄屑等の入手見込がないにも拘らずあるように装い、新田正次郎に対し古鉄屑等を他から買入れた上之を売渡すことを条件に、いわばその代金の前渡名義で金員の交付方を申向け、同人をその旨誤信せしめた結果原判示各金員を交付せしめたものであることが明認されるのであるから、普通取引に伴う公正さと正直さとがない。従つて被告人の原判示各所為を普通の消費貸借と認めることはできないから、原判決がこれ等の所為をいずれも詐欺罪に問擬したのは正当である。
(後略)