大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(ネ)336号 判決

被控訴人が控訴人所有の別紙目録記載の土地につき昭和二十四年八月五日宮城県知事発の買収令書によつてしたとする買収処分は存在しないことを確認する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴代理人は主文同旨及びもし買収処分が存在するとすればその無効なることを確認するとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、本訴は先ず第一に買収処分の不存在確認を求めるものであり、次に仮に買収処分が存在するとしても控訴人主張の事由によりその無効であることの確認を求めるものである、と述べたほかは原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する(立証省略)。

三、理  由

別紙目録記載の土地は控訴人が昭和十年十二月二十九日仙台市から払下を受け、翌十一年一月十一日その所有権移転登記を経由したものであること、仙台市原町南地区農地委員会は右土地が不在地主の小作地であるとして昭和二十三年七月二日これにつき自作農創設特別措置法に基く買収計画を立てたこと、以上の事実は当事者間に争がなく、被控訴人が本件土地は右買収計画に基いて宮城県知事の昭和二十四年八月五日発した買収令書により既に買収処分ずみであるとしていることは控訴人も認めるところである。

控訴人はいまだかつて右土地の買収令書を交付された事実は無いと主張するので、まずこの点について判断する。

原審証人大宮外守の証言、及び同証言によつて真正に成立したと認められる乙第一号証の一、二及び成立に争のない乙第二号証、甲第一号証、同第三号証を総合すれば、仙台市原町南地区農地委員会は宮城県知事の依嘱により昭和二十四年八月五日仙台市元寺小路百六十一番地『日本仙台教区天主公教会宣教師社団』(控訴人の旧名称)宛に本件農地の買収令書を他の書類と同封して普通郵便で発送したことを窺知し得なくはないが、次に認定する事情からみて右発送された郵便物が控訴人に到達したものと推測することは困難であり、しかも前記乙第二号証末尾の記載に従つて控訴人から同農地委員会に対して右買収令書を受領した旨の書類が提出された形跡のないことも右証人の証言によつてこれを推知するに十分である。

次に、成立に争のない甲第二号証、同第三号証、原審証人深沢豊治の証言を総合すると、控訴人は日本天主公教仙台教区内における日本天主公教所属の教会その他の団体の為に布教及び公益事業を行うに必要な土地建物等の資材を供用することを目的とする社団法人であつて、本件土地も右の目的を達成するために払下を受けたものであること、即ち仙台教区内における日本天主公教所属の教会は控訴人社団の管理下におかれ、各教会の使用する土地建物など一切の不動産は全部控訴人社団がこれを所有しているのであるが、各教会と控訴人社団とは別個の法人であること、控訴人社団事務所はもと仙台市元寺小路百六十一番地に在る日本天主公教所属の元寺小路教会と同一地番内に存在したが、昭和二十年の戦災で焼失し、昭和二十四年十二月再び右の場所に事務所を復活したこと、控訴人社団代表者理事浦川和三郎は戦争中弘前市に疎開し、終戦後仙台市東仙台の修道院に移り前記事務所の復活する迄同所にいたのであるが、前記事務所焼失後復活までの間は元寺小路百六十一番地には特に控訴人社団の事務所もなければ専従の本務取扱者も居らず、昭和二十四年八月頃は元寺小路教会司祭深沢豊治が教会の仕事の傍控訴人社団の事務を手伝つていたに過ぎない状態であつて、控訴人社団宛の郵便物が往々にして誤つて元寺小路教会に配達されることがあつたが、これは右深沢豊治が東仙台に居る浦川理事に廻付していたこと、しかしその頃控訴人社団宛の農地買収に関する書類と覚しき郵便物が元寺小路教会に配達され、これを浦川理事に廻付した事実の存することは右深沢司祭もこれを確認し得ないこと、以上の各事実が認められる。

以上認定の諸般の事情に徴すると、仙台市原町南地区農地委員会が仙台市元寺小路百六十一番地控訴人社団宛に発送した本件土地の買収令書がその頃確かに控訴人に到達したものとはたやすく認め難く、被控訴人の全立証を以てしても本件土地の買収令書が控訴人に交付されたことを確認するを得ない。

而して、被控訴人が前記昭和二十四年八月五日発の買収令書の交付により買収処分ずみであると主張しきたつていることは前示のとおりであるからして、被控訴人に対し右買収令書の交付による買収処分の不存在確認を求める控訴人の本件請求は正当としてこれを認容すべきである。右と所見を異にする原判決は不相当であつて、本件控訴は理由ありとせねばならない。

よつて民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条に則り主文のように判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 沼尻芳孝)

(目録省略)

原審判決の主文および事実

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告が原告所有の別紙目録記載の農地につき為した買収処分(昭和二十四年八月五日買収令書発送の旨仙台市原町南地区農地委員会の文書収発簿に登載のもの)は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、その請求の原因として、原告は日本天主公教仙台教区内における日本天主公教所属の教会その他の団体の為に布教及び公益事業を行うに必要なる土地建物等の資材を供用することを目的とする社団法人であつて、昭和十年十二月二十九日右目的達成のため仙台市から別紙目録記載の農地の払下げを受け、昭和十一年一月十一日その所有権移転の登記を経由した。しかるに昭和二十三年七月二日訴外仙台市原町南地区農地委員会は、これを小作地として買収計画を樹て、被告は昭和二十四年八月五日原告に対する買収令書の交付により、これを買収したものと為している。

然し乍ら右買収処分は左の点において重大な瑕疵がある。すなわち、

(一) 被告は原告に対し、昭和二十四年八月五日本件土地の買収令書を郵送して交付したものとなしているが、左様な事実はない。原告社団は仙台市元寺小路百六十一番地に事務所を設けていたが、昭和二十年七月の空襲により焼失し、責任者たる理事は各地に転出し外人宣教師は海外にあつて復帰せず、昭和二十五年二月になつて漸く復興をみたのであつて、その間原告社団の事務は同一系統に属する仙台市畳屋丁教会の日本人宣教師が臨時に手伝つたが、右箇所に原告社団の事務所は存在せず、他に仮事務所も存在しなかつたのであるから、原告社団責任者との間に連絡のつかぬことが多く、被告が原告に対し右買収令書を郵送して交付し得る筈がない。

(二) 本件土地は都市計画法第十二条第一項の土地区画整理施行地区に編入されていたので、仙台市長は昭和二十三年五月八日宮城県知事に対し自作農創設特別措置法第五条第四号により買収除外の指定方を上申し、同知事は同年八月五日これを売渡保留地に指定した。このことから看ても本件農地は同条第五号にいう近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地として買収から除外さるべきであるに拘らず、敢えてこれを買収した瑕疵がある。

(三) 本件土地は現況及び公簿上の地目が共に畑ではあるが、原告社団は前掲目的に供するために所有していたものであつて、従来何等農地としての国家的保護に浴せず、専ら、宗教上の社会福祉増進のため必要な土地としての保護を受け来つたのに拘らず、自作農創設のため買収するが如きは違法である。

(四) 原告社団は、昭和十四年末頃訴外佐々木忠之助に対し、本件農地の見廻り程度の管理を委任し、同時に右農地中仙台市連坊小路二百九十八番の八畑一反九畝三歩の一部三十坪を家庭菜園とする目的で耕作することを許したのに、佐々木は原告に無断で右畑全部を耕作し、更に擅に本件農地中他の二筆(別紙目録(二)及(三))を訴外林谷清に、同一筆(同(四))を訴外鈴木誠に、同二筆(同(五)及(六))を訴外市川勇賢に耕作せしめたものであるから、本件農地は自作農創設特別措置法にいう小作農地ではない。

よつて右買収処分は無効であるから、その確認を求めるため本訴請求に及ぶと述べた(立証省略)。

被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張の事実中、原告が日本天主公教の教団であること、原告がその主張の日時仙台市から本件農地の払下げを受け、その所有権移転の登記を経由し、訴外佐々木忠之助に対しその管理を委任したこと、右農地の現況が農地で右訴外人及び、原告主張の三名の者がこれを耕作していたこと、訴外仙台市原町南地区農地委員会が、原告主張の日時右農地につき買収計画を立て、被告が昭和二十四年八月五日買収令書を発送してその買収処分を為したことは何れも之を認める。原告が訴外佐々木忠之助に対し本件農地の管理を委任するに当り、その一部についてのみ耕作することを認めたこと、右訴外人が擅に訴外林谷、鈴木、市川等に耕作させたとの点は否認する。原告社団の目的が原告主張の如きものであること、原告の事務所が空襲により焼失し、原告主張の頃復興したとの事実は何れも不知と答え、被告は昭和二十四年八月五日同日附を以て原告に対し、その主たる事務所々在地である仙台市元寺小路百六十一番地に宛て、本件農地の買収令書を郵送し、右令書はその頃原告に到達したから被告の買収処分には何等の違法はないと述べた(立証省略)。

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