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仙台高等裁判所 昭和28年(ネ)471号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人が昭和二十七年三月二十四日控訴人のした訴願(藤崎町農業委員会が原判決添附目録記載の農地につき昭和二十三年四月十五日たてた買収計画に対する異議申立棄却決定に対する訴願)を棄却する旨の裁決はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、

一、控訴人が藤崎町農業委員会に対してした本件買収計画に対する異議は、その申立期間経過後に申立てたものであることはこれを争わないが、同委員会及びその訴願庁である被控訴人はいずれも控訴人の申立てた異議又は訴願を右の理由を以て却下することなく、実体上の審理を為した上これを棄却したのである。

二、斯くの如く行政庁が期間経過後に申立てた異議訴願を期間懈怠を理由として却下することなくこれを受理し実体上の審理をしてこれに対する裁決をした以上右期間懈怠という手続上の瑕疵はここに治癒せられ期間懈怠がなかつた場合と同様な効果を生ずるものと解すべきことは訴願法第八条第三項の規定の趣旨に鑑み疑う余地がない。従つて被控訴人の当審における主張は理由がない。

と述べ、被控訴代理人において、

一、控訴人の異議申立はその申立期間経過後になされたものであるから不適法として却下さるべきものであり、従つて本件訴願もこの点で却下さるべきものである。被控訴人は本件訴願を実体について審理し訴願理由なしとして棄却したが右は結局控訴人の申立を排斥したことに帰するから仮に右裁決の理由が相当でないとしてもこれを取消す必要がない。

二、控訴人の右期間経過後の異議申立につきこれを宥恕すべき事由のあつたことは否認する。この点に関する控訴人の前記二の主張はこれを争う。

と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する(証拠省略)。

三、理  由

訴外藤崎町農業委員会が控訴人主張の農地七筆(原判決添附目録記載の農地)につき昭和二十三年四月十五日自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に基いて買収計画をたて同日その旨を公告し同日以降十日間その書類を一般の縦覧に供したこと及び控訴人が右買収計画に対する異議申立期間経過後である昭和二十七年二月二十三日同委員会に対し異議を申立てたところ同年三月十八日異議申立棄却の決定があつたことは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第二号証によると、右異議申立棄却決定はその申立の適法不適法について判断することなく実体について審理の上これを理由なしとして棄却したものであることが明かである。しかして控訴人が更に同月二十四日被控訴人に対し訴願したこと及び被控訴人がこれを不適法として却下することなく実体について審理し右買収計画を支持して同年四月二十二日右訴願を棄却する旨の裁決をしたことはいずれも当事者間に争がない。

右によると控訴人の前示買収計画に対する異議申立はその申立期間経過後にされたものであるからこの点に宥恕すべき事由のあることが認められない限りこれを不適法として却下すべきものであることが明かであり、従つて訴願についても先ずこの点について判断しその宥恕すべき事由のあることが認められない限りこの点において異議申立は排斥を免れず訴願は結局理由なしとしてこれを棄却すべきものといわなければならない。

控訴人は藤崎町農業委員会及び被控訴人が右のように異議申立がその申立期間経過後にされた点について申立を排斥することなく実体的な審理をしたものである以上異議申立についての期間懈怠という手続上の瑕疵は治癒せられたものである旨主張するが、異議申立がその申立期間経過後にされた点につき宥恕すべき事由があるかどうかの判断は行政庁の自由裁量に属する事項ではなく法規裁量に属する事項であると解するのが相当であるから、たとえ訴願庁においてこの点につき審理することなく進んで実体上の審理をしたからといつて右の異議申立に関する瑕疵が当然に治癒されたものということはできない。しかして本件において右異議申立期間の懈怠につき宥恕すべき事由のあつたことは本件に顕出された全証拠によつてもこれを認めることができないから控訴人の右主張は理由がない。

右の次第で、被控訴人のした前示訴願棄却の裁決はその棄却の理由として訴願の実体について審理し本件買収計画を支持すべきものとした点において不当であることを免れない。しかし右訴願は、その前提である異議申立がその申立期間経過後にされた不適法なものであり、従つてその異議申立を棄却した決定の取消を求めるに足る理由がないものである点において結局棄却を免れない。この意味において右訴願棄却の裁決はその理由が不当であつても結局結論において相当に帰するものといわなければならない。

よつて右裁決の取消を求める控訴人の本訴請求は失当である。原判決は結局相当で本件控訴は理由がない。

よつて民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 村木達夫 高橋雄一 佐々木次雄)

原判決の主文および事実

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十七年三月二十四日なした原告の訴願(藤崎町農業委員会が別紙目録記載の農地につき昭和二十三年四月十五日たてた買収計画に対する原告の昭和二十七年三月二十二日附訴願)を棄却する旨の裁決はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として、

「(一) 訴外藤崎町農業委員会は原告所有の別紙目録記載七筆の農地につき昭和二十三年四月十五日自創法第三条第一項第一号に則り買収計画をたて同日その旨を公告し同日以降十日間その書類を一般の縦覧に供した。そこで原告は右買収計画を不服とし昭和二十七年二月二十三日同委員会に異議を申立てたが同年三月十八日棄却されたので更に同月二十四日被告に訴願したところ被告もまた同年四月二十二日これを棄却し同月二十四日原告にその裁決書を送達した。

(二) しかしながら本件農地はいずれも原告が従来自作していたものであつて小作地ではないからこれを小作地なりとしてたてた本件買収計画は違法である。従つて右買収計画を支持し原告の右訴願を排斥した被告の本件裁決もまた違法にして取消さるべきものである。」(立証省略)

被告訴訟代理人は主文と同趣旨の判決を求め答弁として、

「原告主張事実中本件農地は原告が自作していたもので小作地ではないとの点を否認するその余はすべてこれを認める。別紙目録一乃至三の農地は訴外対島多次郎が同四乃至七の農地は訴外木村国蔵がそれぞれ本件買収計画樹立当時原告からこれを賃借し耕作していたものであつて小作地であることが明である。よつて本件買収計画に違法な点はない。」(立証省略)

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