大判例

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仙台高等裁判所 昭和29年(ネ)160号 判決

控訴人は本件口頭弁論期日に出頭しないが、その陳述したものとみなされる控訴状の記載によると「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求めるというにある。これに対し被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

被控訴代理人の事実上の主張は、「勧業経済株式会社が東京地方裁判所で昭和二十九年一月十四日午前十時破産の宣告を受け、控訴人三名がその破産管財人に選任されたこと並びに被控訴人が本件債権を破産債権として届出でたが未だ債権調査期日における調査を経ていないことはいずれもこれを争わない。」と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるからここに引用する。

控訴人の事実上の主張は、その陳述したものとみなされる準備書面の記載によると被控訴人が勧業経済株式会社に対し本件約束手形金の支払を訴求中、同会社は東京地方裁判所において昭和二十九年一月十四日午前十時破産の宣告を受け、訴訟は中断したが、被控訴人は本件債権につき破産債権者として同年三月中同裁判所に破産債権の届出(進行番号第三九七八七号)をし、一般債権調査期日たる同年五月二十九日その債権が確定するかどうか決まるのであつて、その債権が異議を述べられた場合には、その異議者を相手方として訴訟を受継することになる。しかるに原審は右債権の確定、不確定をまたずに破産会社の破産管財人たる控訴人三名に対し訴訟の続行を命じそのまま手続を進行して判決したのであつて、その手続は違法である。その他、原判決が訴訟当事者でない前示破産会社に対し右債権を被控訴人に支払うべきことを命じたことも亦違法である。

尚本訴は約束手形金の請求なるも、それは被控訴人の破産会社に対する投資金即ち貸金であり、その金額には一ケ月五分という利息制限法所定利率を超過した利率による利息が含まれていて、右超過部分の利息については支払義務はない。」というにある。

三、理  由

本件訴訟は、被控訴人が手形上の債権者として勧業経済株式会社に対し手形金の支払請求のために提起したものであるが、その後本件訴訟が原審に繋属中、右会社が東京地方裁判所において昭和二十九年一月十四日午前十時破産の宣告を受けたことは当事者間に争のないところであつて、被控訴人の右訴訟は結局破産宣告前の原因に基き破産財団から弁済を求めるために提起されたいわゆる破産財団に関する訴訟であるということができるから、本件訴訟手続は右破産宣告と同時に中断されたものであることは明白である。

元来破産宣告前の原因に基き破産財団から弁済を求める債権者は破産債権者として破産手続によつてのみその権利を行使し得るのであつて、それがためには先ず破産裁判所に債権の届出をしてその債権を確定させることを必要とする。しかしてその届出債権につき債権調査期日に破産管財人及び他の届出債権者において異議を述べなかつたときは、その債権は破産手続上において確定し、その確定債権については債権表の記載は破産債権者の全員に対し確定判決と同一の効力を有する。又右債権調査期日に破産者においても異議を述べなかつたときは右確定債権は破産者に対し破産外においても確定し、その債権表の記載は破産者に対しても確定判決と同一の効力を有するに至るのである。

いま破産債権につき破産宣告の当時訴訟が繋属する場合について考えるに、右訴訟が破産宣告と同時に訴訟手続の中断されることは前示のとおりであるが、その債権者が債権の届出をし債権調査期日に破産管財人及び他の届出債権者において異議を述べなかつたときは債権は破産手続上において確定するから破産管財人及び債権者において訴訟を受継ぐことを要しないことはいうまでもないが、これらの者において右期日に異議を述べたときは、異議者との間において破産手続上債権確定の必要を生ずるから、この場合に初めて異議者において被告として右訴訟を受継ぐことを要するのである。この場合において右期日に破産者も異議を述べたときは破産者をも異議者の一人として共に訴訟を受継ぐべきものとする。債権調査期日に破産管財人及び他の届出債権者において異議を述べず破産者のみ異議を述べたときは、破産者において訴訟を受継ぐことを要するのであるが、この場合は破産外において債権を確定することを目的とするもので、破産手続上における債権の確定を目的とするものでないから、破産者のみの受継は破産手続解止後においてさるべきが相当である。右期日に破産者も異議を述べなかつたときは訴訟は結局破産手続解止後において破産者において受継ぐほかないが、この場合は債権は破産手続外においてもすでに確定したのであるから債権者においてもはや訴訟を維持する利益を有しないことは勿論である。又債権者が債権の届出をしないときは、右債権者は破産手続に参加することができないのであるから、破産手続の解止後において破産者を相手方として訴訟を受継ぐべきものとするを相当とし、右訴訟手続はそれまで中断する。

以上これを要するに、債権者から債務者に対し破産宣告の当時訴訟が繋属するときは、破産手続における債権届出の有無及び届出債権に対する異議の有無によつて、訴訟を受継ぐべき相手方及び受継の時期が定まるのであるから、これを俟つて初めて訴訟を受継ぐことを要するのである。しかして異議者が訴訟を受継ぐべき場合にその異議者が数人あるときはこれを共同被告とし、破産者が異議者の一人であるときはこれをも共同被告とすることを要するのであつて又従来の訴訟が給付訴訟であるときは、破産外における債権を確定しその給付を求めることを目的とする場合を除き、破産手続上における債権の確定を目的とするものである限り、その訴訟は確認訴訟として初めて許されるのであるから、債権者においてその訴訟における請求を債権確認の趣旨に変更することを要することは勿論である。

本件について見るに、本件訴訟は被告であつた勧業経済株式会社が破産の宣告を受けると同時に訴訟手続の中断されたことは前示のとおりであつて、債権者である被控訴人(第一審原告)が破産手続における債権の届出をしたことは当事者間に争のないところであるが、その債権調査期日における調査を経ていないことは亦被控訴人の争わないところであつて、要するに訴訟を受継ぐべき相手方及び受継の時期は未だ定らないものといわなければならないから、これを俟つて後訴訟を受継ぐべきことを要するものである。しかるに、控訴人等が右会社の破産宣告と同時にその破産管財人に選任されたことは当事者間に争のないところであるが、原裁判所がたやすく破産管財人たる控訴人等において被告として本件訴訟を受継ぐべきものとし、昭和二十九年二月一日控訴人等に対し被告として訴訟を続行すべきことを命じたのは、違法でその取消を免れない。しかして右違法な訴訟手続を取消すことによつて本件訴訟は原審における中断の状態に復するのであるから、更に原裁判所において適法な受継手続をした上これによつて審理することを必要とする。よつて原判決は結局不当で本件控訴はその理由があるから原判決を取消し本件を原裁判所に差戻すべきものとし、民事訴訟法第三百八十六条第三百八十九条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 村木達夫 高橋雄一 佐々木次雄)

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