大判例

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仙台高等裁判所 昭和29年(ネ)338号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人は控訴人が原判決添付目録<省略>記載の建物につき占有権を有することを確認すべし、被控訴人は右占有権を妨害すべからず、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めなお控訴人の訴の変更が許容されるときはその新たな請求棄却の判決を求めると申立てた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は控訴代理人において、

控訴人は本件賃借権に基き原判決添付目録記載の建物を占有するものであるところ当審においては賃借権確認の請求を取やめ専らこれが占有権の確認を求めなお被控訴人の仮処分執行によつて占有権に対し妨害を受けたので新にこれが妨害の禁止を請求するものである。

と述べ、被控訴代理人において、

一、控訴人の請求の変更には異議がある、右は不当な訴の変更であるから許されないものである。

二、控訴人は被控訴人が別件(後記土地明渡請求事件)においてなした仮処分の執行当時から本件土地を占有していたと主張するが被控訴人において控訴会社の代表者酒井友太郎、監査役酒井恵助の両名個人を被告として提起した福島地方裁判所白河支部昭和二十二年(ワ)第六号土地明渡等請求事件の審理に際し、同人等は口頭弁論でも検証でも右事実を主張した事実なく、昭和二十七年に至り上告審に係属してから初めてこれを主張したものである、また昭和二十三年七月十三日同裁判所昭和二十二年(ヨ)第九号仮処分決定の執行に際しても同人等はこれを主張しないことは勿論同日執行吏に対し個人名義で使用願を提出し、その許可を得て使用しているのであるから控訴人の占有は存在しないことが明かである。

三、酒井木工所なる商号は訴外酒井恵助の個人の営業に附せられたものであつて有限会社の設立によつて発生したものではない、而して有限会社設立後と雖も訴外恵助は個人で酒井木工所名義の下に営業を継続していたものであつて、会社名義の標札を掲げた事実はないのである、もし仮処分執行に際し会社名義の標札があつたならば仮処分の執行は不能に帰すべき筈であるから、控訴人主張の有限会社酒井木工所は単なる帳簿上の存在に過ぎないものである。

と述べ<立証省略>た外、原判決摘示の事実及び証拠関係と同じであるから、これを引用する。

三、理  由

本件において控訴人は当初その主張の建物を目的とする訴外酒井恵助を賃貸人、控訴人を賃借人とする賃借権の確認を該建物の敷地所有者たる被控訴人に対して請求していたのであるが、当審においては右賃借権の確認請求を撤回し、専ら右建物に対する占有権の確認と占有権に対する妨害禁止を求める趣旨に請求と請求原因を変更する旨申立てたものであるところ、被控訴人は右訴の変更は不当であると抗争するので案ずるに、そもそも本件原判決は被控訴人が当事者としての適格を有しないものであるとして本案の審判を為さずして訴を却下したものであるから、右訴の変更を許すべきものとして控訴人の右新請求についてその理由ありや否やを判断することとせば、これを認容する場合は勿論、請求を棄却することとなる場合も原判決はその取消を免れないのであるから、当審としては必ずや本件を原審に差戻さざるを得ないこととなるのである。

而して本件を原審に差戻して本案の審判を為すこととせば更に証拠方法等の新たな提出も予想され、この間相当の日時を要すべきは必然であるから、本件訴の変更は著しく訴訟手続をおくらせる場合に当り、許されないものといわなければならない。

然らば従前の賃借権確認の請求は依然当審における審判の対象となるわけであるから案ずるに、記録によれば被控訴人は本件建物の敷地の所有権を主張しているに止り、右建物については所有権は固よりこれが占有を伴う如き権利その他何等の権利をも主張するものでなく控訴人も該土地に対する賃借権又は被控訴人に対抗しうべきその他の権利を主張するものではないから、いわば被控訴人は控訴人主張の賃貸借関係とは無縁の第三者に外ならないといわなければならず、被控訴人との関係において訴外酒井恵助と控訴人間の右建物の賃借権を確認したからといつて、本件被控訴人の敷地の所有権行使を差止め得るものでなく、その他何等の利益のないものであることはいうまでもない。

従つて被控訴人に対し右の如き賃借権の確認を求めるのは被告の適格を有しないものを相手方とした不法があるから、本件賃借権確認を請求した本訴を却下した原判決は正当というべきである。

よつて民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 板垣市太郎 檀崎喜作 沼尻芳孝)

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