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仙台高等裁判所 昭和30年(う)557号 判決

原判決が原判示第四の事実につき挙示する証拠に向井田仁志の司法巡査に対する第一回供述調書及び名須川長の司法巡査に対する供述調書を綜合すれば、原判示花巻土木事務所倉庫内に格納されていた軽油入りドラム罐が同事務所長向井田仁志の管理に属していたこと、被告人及び佐藤三治は、同事務所に常傭人夫として雇われ、右所長の管理するグレーダーの運転手若しくは運転助手として、同所長及び主事名須川長の決裁を受け、右倉庫内にある軽油入りドラム罐から適当量を汲み出してグレーダーのタンクに納めこれを使用していたにすぎないもので、右軽油入りドラム罐そのものについては何等支配力を及ぼし得べき地位にあつたものではなかつたことが極めて明白である。而して、原判決の右引用証拠によれば、被告人は佐藤三治と共謀の上、他に売却処分し利得する目的を以て、右倉庫内から原判示第四の軽油入りドラム罐一本を搬出したものであることが明らかであるから、右所為が原判決の認定するとおり窃盗罪を構成することは、疑を容れる余地がない。次に、原判決が原判示第一及び第二の各事実につき引用する証拠に前掲向井田仁志及び名須川長の各供述調書を綜合すれば、右第一及び第二の各軽油は、いずれも被告人がグレーダーの運転手として適法な手続により右倉庫内の軽油入りドラム罐からグレーダーのタンクの中に移し使用中のものであつたことが認められ、従つて、被告人が右タンク在中の軽油に対し事実上の支配力を有していたことは疑ないところであるが、該軽油については、同時に、同事務所の業務一切を総括主宰し、右業務遂行に必要な備品その他一切の物品管理の責に任ずべき職務権限を有する同所長の事実上の支配の及んでいたことも明らかであるから、右軽油に対する被告人の支配は、結局同所長の指揮監督の下になされる従属的な支配にすぎなかつたものと認むべきである。而して、物に対する事実上の支配が数人により重畳的に行われる場合に、その数人の支配が対等の関係にあるのではなく、主従の関係にあるにすぎないときは、刑法上の占有を有するものは主たる支配者であつて、従たる支配者はこれを有せず、従つて、従たる支配者が主たる支配を排して独占的の支配を形成するときは、右所為は窃盗罪を構成するものといわなければならない。ところで、原判決の前記引用証拠によれば、被告人は他に売却処分し利得する目的をもつて、自己の運転する前記グレーダーのタンク在中の軽油を取り出したものであり、従つて、該軽油に対する同所長の支配を排しこれを自己の独占的支配下に置いたことが認められるから、右所為が窃盗罪に該当することは明白である。更に、記録を精査しても、原判決の事実認定及び法令適用に誤があると認められない。論旨は理由がない。

同第二点について、

原判決は、罪となるべき事実第五として、「被告人が、昭和二九年九月一九日午前零時過頃、花巻市花城町所在の花巻土木事務所事務室にあるキヤビネツト内の手提金庫から同事務所会計係宮台福太郎保管の現金約六四、九八一円を窃取した」と判示している(同年一一月九日付起訴状記載の公訴事実に照応する)。右日時場所において右の如き盗難被害のあつたことは、原判決引用の向井田仁志作成の被害届書及び原審証人曽根正二の証言により明白であるが、原判決の引用証拠中右窃盗犯人が被告人であることを一応認めるに役立つ証拠は、被告人の自白調書である検察官に対する第二回供述調書と、原判示手提金庫の納められてあつたキヤビネツトの扉の内側から検出採取された指紋二箇が被告人の左中指及び左示指の指紋と一致するという事実を認める資料たり得る原審証人佐々木昭の証言(一、二回)、同証人に対する尋問調書、指紋写真一葉(証二号)、指紋転写ゼラチン紙二葉(証五号の一、二)、原審第二回検証調書(指紋印象紙添付のもの)及び黒川広重作成の昭和三〇年四月二二日付鑑定書を措いて他に求めることができない。

一、論旨は、被告人の自白は任意性及び真実性がないと主張するので、まず、この点について検討する。(被告人は司法警察員に対する第二回供述調書でも自白しているが、その内容は前記検察官に対する第二回供述調書記載の自白と同旨であるから、以下両者を区別せず、単に自白と称していずれも判断の対象とする。)

被告人の自白によれば、被告人は、昭和二九年九月一八日妻を伴つて花巻市に祭見物に出掛け、午后一〇時三〇分頃同市発のバスで帰途につき、午后一一時前頃帰宅し、家族と共に土産のさつま芋を食べ、午后一一時過頃寝床に入り、約三〇分経つてから起き出し、自宅から自転車に乗つて花巻土木事務所に赴き(この間の距離約一里、自転車で約二〇分の行程)、本件犯行を犯したと述べている。而して、安藤ハツの検察官に対する供述調書、原審証人鎌田仁蔵、同小原ツユ、同中村フキ子の各証言、原審証人安藤ハツの証言(後記措信し得ない部分を除く)、営業日報(証六号)及び車掌扱旅客運賃計算書(証七号)によれば、被告人が妻と共に同日花巻市より帰宅するため乗車したバスは、午后一〇時三〇分同市所在花巻バス株式会社車庫発笹間行臨時最終バスであり、右バスが事実上右車庫を発車したのも同時刻頃であつたこと、右車庫、下坂井停留所間のバスの所要時間は一〇分ないし一二、三分であり、右停留所から被告人方までの徒歩による所要時間は五、六分であることが窺われるから、当日は祭典のため乗降客が混雑し、バスの発着に平生より若干多くの時間を費したものとしても 被告人は少くとも午後一一時前後頃には帰宅していたものと認められるのであつて、右バスの発車及び被告人の帰宅の各時刻の点に関する原審証人佐立守康、同安藤ハツ、同安藤ハル及び同安藤信行の各証言は措信することができない。次に、原審証人曽根正二の証言によれば、当時花巻土木事務所宿直室で宿直していた同人が本件被害を発見する直前砂利を踏む足音で目を醒したのが翌一九日午前零時三〇分頃であり(所論のように一八日午後一二時頃目を醒したとは述べていない)、事務室で被害を発見し花巻警察署に電話でこれを届け出たのが午前零時三七分頃であつたというのであるから、本件犯行の行われた時刻はおよそ午前零時三〇分前頃と推定される。以上を綜合して考えるに、被告人が帰宅してからそのいうような経過を辿つて同事務所に赴き犯行を犯したという被告人の自白にかかる事実は、それが真実であるか否かの点はしばらく措き、当時夜間であつたこと、右証人の証言により明らかであるとおりその頃小雨が降つていたこと、犯行自体にも若干の時間を要すべきこと等を考慮しても、所論の如く時間的に必ずしも不可能であるということはできない。しかしながら、他方、被告人の自白は重要な点において他の証拠と矛盾し、又、それ自体不自然不合理なものを含んでいることも否むことができない。すなわち、

(イ)、被告人の自白によれば、被告人は九月一八日午後一一時過頃寝床に入り、三〇分位過ぎてから花巻土木事務所に行つて金を盗つて来ようと思い起き出したとき、同じ床に寝ていた妻ハツはまだ眠らないでいたようであつたので、小便に行つて来ると声を掛けて出たというのであるが、同女は原審証人として、就寝中夫が起き出した事実があつたかどうかは全然わからなかつたと述べている。

(ロ)、被告人の自白によれば、被告人は被告人方と犯行現場である花巻土木事務所との間を被告人方の自転車で往復したというのである。当時雨天であつたことは前述のとおりであるから、被告人の右自白が真実であるとすれば、右自転車は泥で汚染した筈であるのに(被告人は帰宅後右自転車を清掃したとは述べていない)、被告人の弟安藤信行は原審証人として、九月一九日午前五時三〇分頃起床して土間を掃除した際、同人方の自転車は二台共同所に並べてあり、使つた形跡は全然認められなかつたと述べている。

(ハ)、被告人の自白によれば、被告人は裏付半長靴を穿き自転車で花巻土木事務所にいたり、自転車を同事務所前道路の右側の下水に横に置き、玄関に向つて右側にある自転車置場の更に右側(庁舎の東側)にある板塀を土足のまま乗り越え、鍵の掛つていない便所の窓を開けてその中に入り、そこから玄関内側の階段下を通り、所長室の前から事務室に入つて犯行をなし、その後侵入したときの順路を逆に通つて外に出たといい、なお、同事務所内に入つたときは便所、事務室北側の廊下及び小使室にも電燈がついていたようであつたというのである。ところで、当審証人佐々木昭の証言及び当審検証調書によれば、花巻土木事務所(当審検証当時は稗貫福祉事務所)前道路は舗装されていない道路であり、被告人が自転車を置いたという箇所は、花巻土木事務所の向側東北方にある花巻建設事務所の北側門柱から北方に約四六尺離れた右道路の東側測溝上であり、被告人が乗り越えたという花巻土木事務所の板塀との間に相当の距離があることが認められ、なお、当時雨が降つていたことは前説示のとおりである。従つて、被告人の自白が真実であるとすれば、被告人が右板塀を乗り越える当時、その穿いていた半長靴は若干泥で汚染していたものと認められるから、被告人が右板塀を乗り越えて事務室内のキヤビネツトの傍に至る順路のどこかに、殊にその板塀に靴跡が残されたものと認めざるを得ない。然るに、当審証人佐々木昭は、実況見分当時板塀にはこれを乗り越えたような形跡はなかつたと述べ、当審証人曽根正二は、被害発見当時右事務所庁舎内に足跡が認められなかつたと述べ、当審において取り調べた右佐々木昭外一名名義の実況見分調書(二通)にも以上の点については何等記述するところがない。又、就寝前右庁舎内の電燈を全部消したと思う旨の当審証人曽根正二の証言も被告人の自白と合致しないし、同証人が犯人の遺留したものと認められる貯金通帳数冊を発見した箇所であるという廊下は、事務室の北側にあり、被告人の自白にかかる犯行後庁舎外に出た順路には含まれない所である。なお、原審証人曽根正二が述べているように、庁舎東側の板塀の北隅に取り付けてある裏門の格子戸には当時(夜間でも)施錠をしていないものとすれば、被告人が右格子戸を開けて構内に入らず、わざわざ困難を冒して右板塀を乗り越えたということも諒解し難いことである。

(ニ)、被告人の自白によれば、被告人が右事務室に入り、宮台福太郎の机の中から鍵を取り出し、キヤビネツトの鍵穴に鍵を入れて廻したら、ダイヤルを廻さないでも扉が開いたので、中にあつた手提金庫を取り出し、そのダイヤルをいじつているうちに、鍵が掛つていなかつたと見え、右金庫は簡単に開いたというのである。右キヤビネツト及び手提金庫のいずれにも施錠装置としてダイヤルと鍵が取り付けられていることは、原審第一回検証調書及び当審検証調書により明らかである。而して、原審並びに当審証人宮台福太郎は、本件盗難被害前に右キヤビネツトに鍵を掛けたことは確かだが、ダイヤルを閉鎖位置に廻したかどうか記憶がないと述べ、他にこの点につき確言する者がないのでキヤビネツトの鍵穴に鍵を入れて廻したら、ダイヤルを廻さないでも扉が開いたとの被告人の供述が、真実であるかどうかを確定するに由ない。たゞ、原審証人佐藤修は平生手提金庫はダイヤルを廻さず鍵を掛けておくだけであると述べているので、手提金庫のダイヤルをいじつていたら鍵がかかつていなかつたと見え簡単に開いた旨の被告人の供述は、右佐藤修の証言と合致しない。かりに右金庫のダイヤルが閉鎖位置に廻されてあつたものとしても、当審証人宮台福太郎の証言によれば、庁員でダイヤルの廻し方を知つている者は、その取扱者である同人、名須川長及び佐藤修の三名のみで、人夫である被告人はもとより知る筈がないと認められるから、ダイヤルをいじつていたら簡単に開いたとの被告人の供述は、にわかに首肯し得ないといわざるを得ない。

(ホ)、被告人の自白によれば、被告人は手提金庫在中の現金を盗んで帰宅し、家に入る前に札束とばらの札とを一緒にして家の北裏手に三年位前に植えた杉の根元に置き、その日すなわち九月一九日の朝右札束を新聞紙に包んで家から西方に五〇米位離れている安藤信一方墓場の古墓石の蔭に移し、同月二六、七日頃右札束を持ち出して花巻土木事務所自動車車庫の奥の炭俵の中に隠したが、発覚を惧れて同日朝日橋上から北上川にこれを投げ棄てたというのである。小雨が降つているというのに札束とばら札を一緒にして杉の根元に置き、更に、新聞紙に包んだとはいうものの、墓石の蔭に八、九日間も野晒しにしておいたというが如きことはいささか諒解に苦しむところである。なお、借金の支払に窮して現金を盗んだと自供している被告人が、如何に発覚を惧れたからとはいえ、これを河中に投棄するということも、その河中から現金の発見されていない本件においては、たやすくは首肯し得ないところである。

以上論述したとおりであつて、被告人の原判示第五の現金窃盗に関する自白が果して真相を述べたものであるかどうかは、甚だ疑わしいといわなければならない。そこで進んで、被告人が右の如き自白をするに至つた経過を記録につき検討するに、被告人は右現金窃盗の被疑事実に基いて昭和二九年一〇月一日逮捕され、次いで勾留された上右事実について取調を受け、右勾留期間の満了により同月二三日釈放された直後、更に別箇の軽油窃盗(原判示第四の事実に該る)の被疑事実に基いて逮捕され、続いて花巻警察署を代監として勾留された上軽油窃盗の事実の外現金窃盗の事実についても取調を受け、現金窃盗の事実に関する前記自白は、右第二回の拘禁中である同月二七日に至り始めてなされたものであることが窺われる。拘禁中の被疑者に対し、逮捕状若しくは勾留状記載の被疑事実の外に、これと併合罪の関係にある他の被疑事実について取調をすることは、必ずしも違法ないし不当であるということはできないから、右自白を目して所論のように不当勾留に基く自白であるとなすことはできない。しかしながら、司法警察員の取調中において、被告人が取調官から両頬を殴打され、頭髪を掴んで頭を書類箱に打ちつけられ、家人を石鳥谷、北上、日詰等の各警察署に分散して留置すると脅かされる等暴行脅迫により自白を強要されたという被告人の原審並びに当審公廷における供述が、全幅的には措信し得ないとしても、原審証人石田謙吉及び当審証人宮本義一の各証言に照すときは、被告人の右供述が悉く虚構であつて、被告人が取調を受けた際何等不当な取扱を受けなかつたものとは断定し難いのである。このことと、被告人が本件公訴にかかる五箇の窃盗の被疑事実中現金窃盗を除く他の四箇の窃盗については極めて素直に認めているにかかわらず、現金窃盗については頭初より頑強に否認し、拘禁二七日目に至りやうやく自白するに至つた経過及び右自白の内容が前説示の如く他の証拠と矛盾しそれ自体としても不自然、不合理なものを含んでいる点等を彼此綜合して考察するときは、司法警察員に対して自白する当時、被告人は何等か不当な影響下に置かれて心ならずも真実に反する自白をするに至つたという疑念を抱かざるを得ないのであつて、記録を精査しても、右の疑を払拭し去ることができない。而して、検察官が被告人に対し不当な圧力を加えたという如き事実はこれを認むべき資料はないが、被告人の検察官に対する自白も、その内容に前叙の如き種々の疑点があるのみならず、司法警察員に対する自白と同旨のものであり、かつ司法警察員に対する自白後五日目、引き続き花巻警察署の代監に勾留中になされたものであつて、その任意性はともかくも、その真実性はこれを疑わざるを得ない。

二、原判示現金在中の手提金庫の納められてあつたキヤビネツトの扉の内側から検出採取された指紋二箇が被告人の左中指及び左示指の指紋と一致することは、さきに説示したとおりである。右事実は、かりに被告人の自白の任意性並びに真実性に疑がないとすれば、右自白の裏付となり、これと相俟つて被告人が現金窃盗の犯人であることを確定するに役立つ有力な証拠たるを失わないわけである。しかし、前段説示の如く右自白を措信し得ない本件においては、これを考慮の外に置き、右指紋の点のみで果して被告人が犯人であることを確定し得るか否かを検討しなければならない。然るときは、結論として否定するの外はない。すなわち、当審において取り調べた司法警察員佐々木昭作成の現場指紋採取復命書、花巻警察署長作成の現場指紋照会書及び岩手県警察本部長作成の現場指紋照会について回答と題する書面(現場指紋対照結果報告書を含む)によれば、本件窃盗の現場にあつたキヤビネツト、手提金庫及び印鑑箱から採取された一七箇の指紋中対照可能のもの八箇のうちキヤビネツトの扉の内側から採取された二箇が被告人の指紋と一致する外、その余は全部宮台福太郎及び佐藤修の指紋と一致することが明らかであり、原審並びに当審証人曽根正二、原審証人宮台福太郎、同佐藤修、同名須川長、同藤井昭子の各証言及び被告人の原審並びに当審における供述によれば、被告人は人夫として外勤する者であり、宮台福太郎は庶務主任として、佐藤修は事務員としていずれも事務室で勤務し、その担当業務の性質上キヤビネツト及び手提金庫等に接触する機会を日常有していた者と認められるから、被告人が犯人であるとの疑を一応受けることは止むを得ないとしても、右各証拠によれば、被告人もまた外勤作業のないとき或は雨天の際等には事務室で記帳その他の事務を執ることがあり、人夫賃の受領その他の用務で同室に出入することもあつたことが明らかであるから、かかる機会に開いていたキヤビネツトの扉に被告人の手が不用意に触れることが絶無であつたとはいい得ないからである。

これを要するに、現金窃盗の点に関する被告人の自白は任意性及び真実性に疑があつて証拠とすることができないものであり、その余の証拠を以てしては被告人が右窃盗の犯人であることを確認するに由ないのであるから、右事実については犯罪の証明がないものとして無罪の言渡をなすべきものといわなければならない。されば、原判決が右自白を証拠として採用し、その余の引用証拠と綜合して有罪の認定をしたのは、証拠の取捨判断を誤り、延いて判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認をしたものである。而して、原判決は右事実とその余の認定事実とが併合罪の関係にあるものとして処断しているのであるから、結局全部破棄を免れない。

論旨は理由がある。

よつて、量刑不当の主張に対する判断は後記自判の際自ら示されるので、ここでは省略し、刑事訴訟法三九七条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により当裁判所は更に次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

被告人は

第一、昭和二八年八月中旬頃、岩手県花巻市山の神地内の国道に駐車中の花巻土木事務所長向井田仁志管理にかかるグレーダー軽油タンクから、軽油一斗を窃取し、

第二、同年九月下旬頃、前同所に駐車中の右グレーダー軽油タンクから、軽油約一斗を窃取し、

第三、昭和二九年三月頃、同市花城町所在右土木事務所倉庫から、同事務所長管理にかかる中古机及び椅子各一脚、同荷車一台、同大釘約八〇本を窃取し、

第四、佐藤三治と共謀の上、同年六月二二日頃、右土木事務所倉庫から、同事務所長管理にかかる軽油二〇〇リツトル入りドラム罐一本を窃取し

たものである。

(中略)

(犯罪の証明のない事実)

本件公訴事実中、被告人が昭和二九年九月一九日午前零時過頃、花巻市花城町一五の一花巻土木事務所事務室にあるキヤビネツト内の手提金庫から同事務所長向井田仁志管理にかかる現金約六四、九八一円を窃取したとの点については、前段説示のとおり犯罪の証明がないので、刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡をする。

(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 有路不二男 裁判官 杉本正雄)

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