仙台高等裁判所 昭和31年(う)537号 判決
次に、職権を以て調査するに、原判決は原判示第八の(1)(3)において、原判示山林北端の国道側に積重ねてあつた原判示執行吏保管の杉素材を他に搬出して窃取した所為を認定して、これに対し刑法第二百三十五条を適用している。そして、前記山林北端の国道側に積重ねてあつた杉素材とは、国道に少しかかつてはいるがこれに接する右山林内に積重ねてあつた杉素材(同山林内に生育したものを伐採した)の趣旨の認定であることは前段説明のとおりである。ところで、森林内に発生生育する産物に加工したものをその森林内で窃取した場合には、その所為は森林法第百九十七条にいう「森林においてその産物(人工を加えたものを含む)を窃取した者」に該当すること疑を容れない。本件において、原判示山林内に生育杉立木を伐採して同山林内に積重ねておいたまま執行吏保管に移されたものを、搬出窃取したというのであつて、即ち森林内の産物たる立木に加工せられたものをその森林内において窃取したものであるから、右所為は森林法第百九十七条に問擬さるべきである(大審院判決・昭四・五・二八言渡・刑集八巻二九二頁参照)。されば、原判決は法律の解釈適用を誤つたもので、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決中被告人長谷川(原判示第八の(1)(3)の事実は同被告人に関する原判決その余の事実と併合罪として一個の刑を科されている)及び同沓沢に関する部分は全部破棄を免れない。
(裁判長裁判官 籠倉正治 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)