仙台高等裁判所 昭和33年(ラ)111号 決定 1959年8月31日
抗告人 高山信太郎(仮名)
被抗告人 高山三郎(仮名) 外三名
主文
原審判を取消す。
本件を盛岡家庭裁判所に差戻す。
理由
本件即時抗告の趣旨並びに理由は別紙記載のとおりである。
記録によると、原審は相続財産たる土蔵造亜鉛メツキ鋼板葺平家建倉庫、木造木羽葺平家建物置の建坪を公簿上のそれにより右物置のそれを七一坪五合と認め、この建坪を基準としてこの評価額を算定しているのであるが、当審で取り調べた右物件所在地の村長名義の証明書によれば、右物置の現況建坪は四二坪七五であることが認められるので、右誤認は原審認定の相続財産の評価額に影響を及ぼし、ひいて、相続人の相続分に応当する遺産の分割を誤つたものといわざるを得ない。
又、原審は相続財産を組成する畑、右倉庫及び物置、原野を評価するに当り、鑑定等の措置を採ることなく、いわゆる課税標準価格に基づき評価額を算定し、その遺産分割の方法としては右不動産を個別に一部の相続人に帰せしめ、右不動産を取得する者は、その不動産の右評価額に相応する額を取得するものとし、この見地に立つて遺産の分割をしていることが明らかである。
しかるところ、右不動産の評価額なるものは、不動産の相当価額とは一致しないのが一般というべきである(原審は一応、各種課税評準価格の平均値によつているのであるが)、から、かかる評価額を基準として右のごとき分割方法をとるときは、畑等を取得する者(被抗告人ら)と建物を取得する者(抗告人)との間に過不足を生ずる結果となり相続分に相応する配分は期せられない。
以上の次第で原審判には相続分に応ずる分割に違法のかどがあり取り消を免れない。
よつて家事審判規則一九条一項により主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 龍倉正治 裁判官 岡本二郎 裁判官 佐藤幸太郎)
抗告理由
(1) 審判主文中(5)高山信太郎の希望通り遺産の現物は抗告人に分割し被抗告人等には金銭を以つて支払いたい。
(2) 遺産目録中建物の床面積
木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建倉庫 一二坪
木造木羽葺平家建 物置 七一坪五合
(台帳)
とあるを
木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建倉庫 一二坪
木造木羽葺平家建 物置 四二坪七五
(現況)
とすること。