大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和35年(ラ)43号 決定 1960年6月13日

抗告人 菊地八重子

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

民法九七六条三項は、「家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。」と規定するから、家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得たならば、これを確認しなければならないものである。この確認は、もともと無効な遺言を有効とするものではなく、無効な遺言は確認を経ても依然として無効であることにはかわりはなく、ただ、本来有効なるべき遺言もこの確認を経ないときは無効となるに過ぎないものである。すなわち、遺言の確認は、遺言が遺言者の真意に出たものであることを一応認定するに過ぎないものであつて、遺言の効力を終局的に確定するものではないのである。遺言の効力の終局的な確定は、当事者に十分な攻撃防禦の方法を講ずる機会の与えられる訴訟手続によつてなされるべきものである。

ところで、本件記録によると、原審判は、家事調査官をして本件遺言確認審判の申立人である大谷好道について事実の調査をさせ、原裁判所自ら右申立人、本件遺言に立ち会つた小松兼吉、大槻房市及び佐藤キヨの審問をなした上、本件遺言が遺言者の真意に出たものであることを確認したものであることが明らかであつて、これらに本件遺言書なる書面をあわせてみれば、本件遺言は遺言者の真意に出たものであることを一応認定することができ、これに誤りがあるとは認められない。所論の各事実は右の認定にそわない見解であつたり、確認の審判でされるべきものではないものであつて、さきの認定をくつがえすべき事由とすることはできない。

よつて、原審判は相当であつて本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 鳥羽久五郎 裁判官 畠沢喜一 裁判官 桑原宗朝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例