大判例

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仙台高等裁判所 昭和41年(ネ)442号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、被控訴会社は、もと福島電気鉄道株式会社と称し、大正六年九月六日の創業にかかり、昭和三六年七月一七日福島県南交通株式会社を合併して、昭和三七年七月一二日商号を福島交通株式会社と改め、現在、資本金四四七、四七六、〇〇〇円の鉄道・バス事業を営む会社であること、被控訴人織田大蔵は、昭和二二年五月二八日被控訴会社の取締役に就任し、同会社副社長に就任したことがあること、被控訴人織田正吉、被控訴人織田大蔵の長男で、昭和三二年七月二七日被控訴会社取締役に就任し、同会社の社長に就任したことがあること、被控訴人吉田は、被控訴会社の自動車運転者であつたことは、当事者間に争いがなく、原審における被控訴人鳳城本人尋問の結果によると、被控訴人鳳城は、もと仙台国税局協議団本部長の地位にあつたが、昭和三六年七月二〇日以降被控訴会社の取締役兼経理部長に就任していることが認められる。

次に控訴人は、福島評論社およびおさらぎ新聞社を経営し、月刊「福島評論」、日刊「おさらぎ新聞」の編集ならびに発行の責任者であるところ、右「福島評論」あるいは「おさらぎ新聞」に原判決添付の別紙(一)に記載のとおりの記事(以下本件各記事と略称する。)を掲載して同新聞等を発行したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、「福島評論」の発行部数は約五、〇〇〇ないし六、〇〇〇部、「おさらぎ新聞」のそれは約一、五〇〇ないし二、〇〇〇部であつたことが認められるので、控訴人は、右発行部数とほぼ同数の読者に対し、本件各記事を掲載した「おさらぎ新聞」等を販売し、これを右読者を含めた不特定・多数の人々の閲覧できる状態においたものと認めるべきであるから、本件各記事の内容からして、<中略>各記事によつて被控訴会社、被控訴人織田大蔵および織田正吉のそれぞれ名誉を毀損したことが明らかである。

二、控訴人は、本件各記事は、公共の利害に関するものであり、もつぱら公益を図る目的に出たものである旨主張する。なるほど本件各記事の中には、未だ公訴提起のない犯罪事実に関するものや公益事業を営む被控訴会社が廃車同様の車両を使用したり、劣悪な労働条件で従業員を稼動させるために事故が多い旨の記事等があつて、公共の利害に関する事実とみなされるものも存するが、それらの記事を含めて本件各記事を掲載した意図がもつぱら公益を図ることにあつたとの点については、<証拠判断省略>かえつて、控訴人が、その主張のようにもつぱら公益を図る目的をもつて本件各記事を掲載したとするのなら、おのずからその意図が文章ににじみでて、読む者の共感を呼ぶものがあると考えられるのに、原判決添付の別紙(一)の第一ないし第五の各記事および第六の各記事を掲載したと認められる甲第一ないし第五八号証の読後感には、そのように共鳴するところは全くなく、むしろ本件各記事は、見出しの付け方が悪趣味、また誇張的であり、かつ、どぎつい表現や品格のない言葉をしばしば用いて暴露的な内容を興味本位につづつており、読者の関心をひくのに専念して被報道者に対する影響を忘れた態度がうかがわれるのであつて、それ自体から、それを掲載した意図がもつぱら公益を図るに出たとは、到底認めることはできない。

なお、控訴人は、本件各記事の内容となつた事実は真実である旨主張するのであるが、全証拠によつてもこれを認めることはできないし、また真実であると信ずるについて相当な理由があつた旨の主張についても、<証拠>も右主張を認めさせるものではなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

三、次に控訴人は、法人が無形の損害を蒙るのは、侵害行為時において財産的な計算をなし得ない事情がある場合に限るところ、被控訴会社は独占企業であつて、利用者には企業選択の余地はなく、財産的な計算をなし得ない事情がある場合にあたらないから、被控訴会社に対する名誉の侵害があつたとしても損害を生じることはない旨主張するもののようであり、そのいうところはいわゆる独占企業には、財産的な計算のなし得る損害(すなわち有形の損害と考えられる。)しか発生せず、無形の損害は発生しない旨の主張と理解されるのであるが、そうとすれば、それは独自の見解にすぎないというべきである。けだし、独占企業も法律によつて保護せらるべき人格的利益を有する以上、それを侵害された場合には、有形の損害のみならず無形の損害を発生することについては、非独占企業の場合となんら変りがないといい得るからである。

四、以上判断したとおり、控訴人は、本件各記事を掲載して「おさらぎ新聞」等を発行し販売したことによつて、被控訴人らが蒙つた名誉の侵害に対し損害を填補すべき義務があるものといわなければならない。

(一) ところで控訴人は、「おさらぎ新聞」は余り一般の信用がないから、かかる新聞に記事が掲載されたことによつて名誉が侵害されたとしても、その被つた損害は極めて少い旨主張する。なるほど前記甲第一ないし第五八号証によつて認められる同新聞の形状、記事の種類、その内容等からみて、同新聞に対する読者の信用は低いものであることを推認できるが、本件各記事は、前示認定のとおり、悪趣味といえる見出しをつけ、どぎつい表現や品格のない言葉をしばしば用いて暴露的な内容を興味本位な筆致によりこれをつづり、読者の関心をひいておるのであつてさらに被控訴会社、被控訴人織田大蔵および織田正吉については、繰り返し、しつように非難し、あざけり、さげすんでいることは、同被控訴人らに関する本件各記事の内容および掲載回数によつて明らかであるから、被控訴人らの蒙つた損害は到底僅少であるとは認められない。

(二) <中略>そこで、被控訴人らは、本件侵害行為による無形の損害に対し、金銭による損害賠償と謝罪広告を請求するので先ずその賠償額について判断するに、前示認定にかかる被控訴人らの社会上の地位、職業(被控訴会社についてはその事業内容)本件侵害行為の態様、侵害の程度、その回数(被控訴人鳳城および吉田を除く。)、本件各記事の内容となつた事実がいずれも真実とは認められないこと、「福島評論」および「おさらぎ新聞」の発行部数、<証拠>によりうかがわれる被控訴会社を除くその余の被控訴人らの精神的苦痛の程度、<証拠>によつて認められる控訴人の年齢現在の境遇、資産等その他諸般の事情をしんしやくすると、被控訴人織田大蔵については金一〇〇万円、被控訴人織田正吉については金六〇万円、被控訴人鳳城については金一〇万円、被控訴人吉田については金五万円をもつてそれぞれの精神的苦痛を慰謝するに足りる相当額と認めるべきであり、また、被控訴会社の蒙つた無形の損害については、金六〇万円と評価し、それを控訴人に支払わせるのが至当であると認められる。次に被控訴人らの名誉を回復するには、控訴人に右損害賠償とともに福島県下で発行される福島民報および福島民友新聞に原判決添付の別表記載のとおりの謝罪広告文を掲載させることが相当と認められる。(石井義彦 川名秀雄 丹野益男)

<別紙省略>

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