大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和42年(行コ)4号 決定 1968年1月24日

第一審の原告

清水誠弥

変更前の被告

青森市

変更後の被告

三浦新之助

主文

本件訴訟を青森地方裁判所に移送する。

理由

本件訴訟(注・旧被告青森市)については、昭和四三年一月二四日当審において被告の変更を許す旨の決定をしたので、地方自治法二四二条の二の五、六項、行政事件訴訟法四三条三項、四〇条二項、一五条七項により、青森市役所の所在地を管轄する原審裁判所に移送すべきである。

ところで行政事件訴訟法一五条七項による移送の裁判は判決、決定のいずれをもつてすべきかについてなんら規定するところがないが、同条が上訴審において被告変更の決定をした場合、訴訟を管轄裁判所に移送しなければならないことと定めたのは、被告の変更は、これによつて従前の被告に対する訴えの取下げがあつたものとみなされる(同条四項)と同時に変更後の被告に対しては、新たな訴えの提起があつたものとみるべきところ(同条三項参照)、右新たな訴えを上訴審に提起することは、審級管轄に反することとなることを考慮したためにほかならないものと解される。とすると同条所定の移送は、管轄違いに基づく移送の一場合であるというべきところ、民訴法三〇条所定の管轄違いによる移送は、ひとり土地管轄、事物管轄違背の訴訟のみについて適用すべき規定であると狭く解する必要はなく、右のような審級管轄違背の訴訟についても、その適用があるものと解するのが相当であるから、行政事件訴訟法一五条七項の移送は、民訴法三〇条の移送の規定の適用のあることを明らかにしたにすぎないものと解される。

よつて右裁判は決定をもつてすべきものとし、主文のとおり決定する。(鳥羽久五郎 松平晃平 飯沢源助)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例