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仙台高等裁判所 昭和44年(ネ)488号・昭44年(ネ)380号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕1亡栄子の失つた得べかりし利益

<証拠>を総合すると、亡栄子は、昭和二一年一月一日生れで本件事故による死亡当時満二二才二か月余の普通健康体の未婚の女性であつたこと、当時宮古市内の土産品販売店「エルザ」こと訴外佐藤ハマ方に女店員として勤務し、事故前の一二か月の給与と年二回支給される賞与等を合算すると年間一九万九、三〇〇円の収入を得ていたことが認められ、この事実と、満二二才の普通健康体の女子の平均余命年数が昭和四二年簡易生命表によれば52.92であることを合せ考えると、亡栄子も本件事故にあわなければ、同程度に生存し得であろうし、そのうち少なくとも満六〇才に達するころまで三八年間、前記程度の収入を得ることができた筈であると認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

被控訴人は、亡栄子が現実に得ていた収入は低額に過ぎるから、全国企業平均年齢別給与額によつて、その収入を算定すべきである旨主張するけれども、亡栄子のように現実に勤務し、具体的に給与を得ている者の収入を、右のように解すべき合理的根拠なり理由なりを見出し得ないから、被控訴人の右主張は採用できない。

また、控訴人は、亡栄子が本件事故による死亡当時二二才二か月余の未婚女性であり、通常女性は結婚適令期に達すれば結婚して家庭に入り自ら他に就労することはないから、従つて一般的に結婚後はいわゆる稼働収入を得ることはない旨主張する。しかし、労働省婦人少年局発行の「婦人労働の実情(一九六六年版)」によれば、女子の労働力率(一五才以上の女性人口に占める労働人口の比率)は昭和四一年の調査で既に五〇パーセントに達し、女子就業者中で有配偶者の占める割合は57.3パーセントに及んでいることが認められ、また、結婚後もいわゆる共稼ぎ夫婦として他に勤め先を持ち稼働収入を得ている妻や、あるいは家庭内で手内職等に従事して収益を得ている主婦が漸次増加していることは顕著な事実であるから、未婚の有職女性の稼働可能年数をその結婚適令時までとすることは相当でないと解せられる。のみならず、本件において、亡栄子が結婚後は他に就労することをやめて専ら家事労働にのみ従事することとなると認めるに足りる証拠はない。よつて、控訴人の右主張は採用できない。

そして、前示被控訴人本人尋問の結果によると、亡栄子の生活費は同女の年間収入の五〇パーセントを越えないものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。従つて亡栄子は本件事件後六〇才に達するまで三八年間、右と同割合の生活費を要するものと解するのが相当であるから、右期間中、年間収入一九万九、三〇〇円からその五〇パーセントの生活費を控除した残額九万九、六五〇円の純収益を得ることができた筈であると認められ、その三八年間の合計額三七八万六、七〇〇円を年五分の割合による中間利息をホフマン式計算法により控除して死亡時の現価を求めると二〇八万九、六九〇円(円未満切り捨て)となること計数上明らかであり、亡栄子は右同額の損害を受けたものであると認められる。

99,650円×20,97029873(利率5%,期数38の単利年金現価率)=208万9,690円

2 亡栄子の慰藉料

亡栄子が死亡当時嫁入り前の若い女性であつて、これから人生の大半を送ろうとしていたものであることは控訴人の争わないところであり、また、<証拠>を総合すると、控訴人と亡栄子とはかねてより恋人同志の関係にあり、本件事故当日も、右両名が岩手県田老町等へのドライブを計画し、控訴人運転の自動車に亡栄子がいわゆる好意的無償同乗者として同乗し、ドライブ中に本件事故が発生したものであることが認められる。このような場合、事故発生自体について、いわゆる好意的無償同乗者自身に直接的寄与がなく、従つて法的な義務違反がなくとも、事故ないし損害の前提となる危険性をともなう生活行動ないしその場を自由意思にもとづいて選択した者として、一種の危険負担としての責任の分配をうけ、その慰藉料の算定にあたつても、これを斟酌し、その減額要素とするのが、最も公平の観念に合致するものと解するのが相当である。

以上の諸点と、本件証拠によつて認められる諸般の事情とを考え合わせると、亡栄子の生命侵害に対する慰藉料としては一五〇万円が相当である。(田中隆 牧野進 井田友吉)

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