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仙台高等裁判所 昭和46年(ネ)476号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(格落ち損について)

2 いわゆる格落ち損とは、破損した自動車を修理してもなお完全に修復し得ないことによつて生ずる評価損をいうものであり、新車の場合のみでなく、中古車の場合にも格落ち損は生ずるものと解される。本件についてみるに、

(一) <証拠>によると、

(1) 被控訴人が本件自動車を訴外岩手三菱販売株式会社から新車として買受けたのは昭和四四年二月頃であり、当時における新車販売価格は宮城県下において金一二一万円、岩手県下にいてはそれを若干上廻り金一二一万八、〇〇〇円程度であつたこと

(2) 本件自動車の登録後本件事故直前までの経過年数は一年三箇月(一ケ月未満切上げ)であり、次の車検までに一〇箇月を残していたが、その走行距離数は六万一、〇〇〇キロメートルで、自家用のこの種の自動車の全国平均の年間走行距離数三万一、〇〇〇キロメメートルと比較して約二箇年分に相当し、かつ、その用途が木材の運搬であつたため普通の用途に使用される場合に比較して損耗度がかなり大きく、三割程度が見込まれることが認められ、以上認定の経過年数、走行距離数、使用状況、損耗度、車検残存期間その他諸般の事情を勘案すると、本件自動車の本件事故直前における価格は、耐用年数五年、経過年数一年三箇月、定率減価償却率〇、四二七として定率償却法により算出した金額の七割に相当する金四八万八、五三九円または経過年数を実質上二年、定率減価償却率〇、六〇二として定率償却法により算出した金四八万四、七六四円を基準として少くとも金四八万円(償却率六〇、六パーセント)程度であると認めるのが相当である。

もつとも<証拠>によると、訴外会社では昭和四五年六月一七日本件自動車の本件事故直前における下取価格を金五五万円と見積つていることが認められる。しかしながら、下取価格なるものはもともと新車を売渡すことを前提として評価するものであり、とくに無事故車の場合には、往々にして実際の価格よりも若干高く評価し、これを新車の販売によつてある程度補填する傾向にあることは否定できず、しかも右甲第四号証はその算定の基礎について何らの記載もなく、金五五万円の評価が適正であることについて裏付けとなる証拠はないから、全幅の信をおくことができない。また、当審証人米倉市郎の証言により成立を認めうる乙第一号証と右証言の中には、右価格が金四〇万円である旨の記載または証言部分があるが、経過年数を二年二箇月として算定しているとみられることを考慮すると、たやすく措信することができず、他に叙上認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(二) 次に<証拠>によると、控訴人運転の車が本件自動車に衝突した個所は、右側面荷台から右後部フェンダー、後部車輪にかけてであり、右後部フェンダー、後部車輪、プロペラシャフト(推進軸)などが損傷し、荷台やシャーシー(車台)にも狂いを生じたこと、本件自動車は外観上も機能的にもほぼ完全な程度に修復され、控訴人はその費用約一七万円を支払つたが、修理した後もその機能に障害が残り、金四二万円程度に価格が低下したことを認めることができ、右認定に反する前記証言及び本人尋問の結果はたやすく措信できず、他にこれを動かすに足りる証拠はない。

(三) そうすると前記金四八万円と金四二万円との差額金六万円はこれを格落ち損と認めるのが相当であり、控訴人は被控訴人に対しこれを賠償する義務があるというべきである。

(佐藤幸太郎 田坂友男 佐々木泉)

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