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仙台高等裁判所 昭和47年(ラ)6号 決定 1972年3月02日

抗告人 正木知治

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである。

不動産競売手続において競売開始決定や競売期日の公告に不動産の表示が要求される趣旨は、競売手続を進行するため競売の目的たる不動産を特定する必要のあること、競売関係者に対し右物件の実質的価値を調査判断するための手がかりを与えることの二点に存すると解せられるところ、現在不動産の公示に登記制度が採用されていることからすると、右表示は、登記簿の記載に基づき、その所在地番、土地については地目、地積、建物については家屋番号、種類、構造および床面積(但し、実測面積との差があるときは、可能な限り実測面積をも表示すべきである。)を記載することをもって必要かつ十分とすべく、抗告人主張のごとく個々の土地につき隣接地との境界の位置もしくはその境界が不明であることなどの点についてまで記載することは不要といわなければならない。

抗告人の主張を推し進めるならば、裁判所は競売の目的たる土地一筆ごとに原則としてその具体的範囲を特定して表示しなければならないことになるが、その正確性の点は措くとしても、かくては競売手続をいたずらに煩雑化し、その簡易かつ迅速な処理を期待することができなくなり、さらにはその境界が不明であるかもしくは争いがあるときは結局該物件については競売の目的を達することができないという不当な結果を招くことにもなる。

かような点からみても、競売裁判所はさきに掲げた事項を表示すれば足りるものであり、その余の不動産の現況については競売に参加しようとする者において自ら調査して競落すべきか否かを決すべきものであり、ひとたび競落許可決定がなされたのちは隣地との境界問題のごときは競落人自らの責任において解決すべきことと思料される。そして右のような解釈は、民法五六八条の法意にも合致するものと考える。

次に現行競売手続は、個別競売をその建前とするのであって、抗告人主張のようにかりに二筆の土地が一団の植林地として利用され、外形上境界が明らかでないとしても、その境界に争いがあれば後日別にその確定を求める途が存する以上、右のような事情が存するというだけで直ちに一括競売をなすべきものではない。

記録を精査するも他に原決定を取り消すべき違法はみあたらない。

よって本件抗告は理由がないので棄却することとし、民訴法九五条・八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田坂友男 裁判官 佐々木泉 小林隆夫)

<以下省略>

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