仙台高等裁判所 昭和49年(ウ)21号 決定 1974年4月22日
申立人(附帯控訴人) 坂本容子
同(同) 坂本公司
右両名未成年者につき法定代理人親権者母兼申立人(同) 坂本ヒデ子
右三名代理人弁護士 佐藤光将
主文
本件各申立をいずれも却下する。
申立費用は申立人らの負担とする。
理由
申立代理人は、附帯控訴状に貼用された金五万〇一〇〇円の過納手数料の還付を求める旨申し立て、その理由を別紙のとおり主張した。
よって考察するに、一件記録によると、当庁昭和四七年(ネ)第四〇二号損害賠償請求控訴事件(控訴人有限会社小名浜タクシー、被控訴人申立人ら)が当庁に係属していたところ、申立代理人は、昭和四八年一〇月八日、申立人ら主張の額の印紙を貼用した附帯控訴状を、これが訴訟委任状とともに当庁に提出して附帯控訴をなし、当庁受付同年(ネ)第三〇六号をもって適法に受理された。しかして同附帯控訴事件は、実質的に弁論に上程する機会もないまま、右控訴事件とともに、昭和四九年一月一七日付決定をもって当裁判所の調停に付され、同年二月二一日調停成立により終了したことが明らかである。
申立代理人は、申立人らには附帯控訴の意思がなく、本件附帯控訴状は誤って受理された旨主張するが、前記のごとくこれが適法に受理されたのみならず、およそ訴、控訴、附帯控訴等一定の裁判の申立を内容とする訴訟行為は、表示された内容にしたがって効果を生じ、錯誤等行為者の内心の意思によりその効果は左右されないと解すべきであるので、右の主張は採用できない。
更に、民事訴訟費用等に関する法律第九条二項の規定は、訴、控訴、その他同項所定の各申立が却下の裁判又は取下げにより終了したとき、手数料のうち法定の一部を還付することにあるところ、本件訴訟の全経過に徴するも前示調停成立前に本件附帯控訴の取下げがなされたものとみるべき事跡は存しないのみならず、却って前示のとおり本件附帯控訴事件を含めて調停が成立しているから、申立人ら主張の手数料の還付はこれを求めることができないというべきである。
よって、申立人らの本件申立は理由がないからこれを却下することとし、申立費用は申立人らの負担とし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 井口源一郎 裁判官 伊藤俊光 佐藤貞二)
<以下省略>