仙台高等裁判所 昭和54年(ネ)422号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
公正証書上は借主と表示されているのに、実際は連帯保証人であつたという場合に執行証書としての「流用」を認めなかつた事例である。同旨の判断を示したものとして福岡高判昭51.12.23判時八五二号七八頁があり、そのコメントを参照されたい。
【判旨】
二すなわち、本件公正証書に表示された請求は、貸主被控訴人・借主控訴人間の昭和五三年五月一八日付消費貸借契約に基づく元金五〇万円の返還および利息、損害金の支払に関するものであるのに対し、被控訴人が控訴人に対する請求権の発生原因として主張するところは、被控訴人と齋田武志との間の前記消費貸借契約に付従する控訴人の同日付連帯保証契約であるというのであるから、両者は支払をなすべき金額において一致するものの、債務名義たるべき請求としては明らかに異なるものである。
三しかして、本件公正証書に表示された請求については、その請求権発生の原因たる事実を認めるべき立証がない。
もつとも、<証拠>を総合すれば、被控訴人は、昭和五三年五月一八日、控訴人の子である齋田武志に金五〇万円を、弁済期同年八月一七日、利息年一割八分、期限後の損害金日歩九銭八厘の約定で貸し渡し、借主齋田武志、連帯保証人控訴人と記載された公正証書作成に関する委任状(甲第二号証)と武志の印鑑登録証明書の交付を受けていたところ、その後武志が所在不明となり、右印鑑登録証明書の有効期間も経過し、これを使用して公正証書を作成することができなくなつたため、控訴人から同年七月三日付印鑑登録証明書を徴したうえ、その了解を得ることなく、前記委任状の借主欄の記載を控訴人に改め、控訴人が金五〇万円を借り受けたように内容を変更し、これと印鑑登録証明書を使用して同年一二月一八日本件公正証書作成に至つたことが認められるが、被控訴人から金五〇万円を借受けたのは武志であつて控訴人ではないのであるから、右の事実をもつて、控訴人を主たる債務者と表示した本件公正証書上の請求を理由あらしめるものとすることはできない。
そうすると、本件公正証書は、これに表示された請求を認める余地がないものというべく、その排除を求める控訴人の本訴請求は理由がある。
(田中恒朗 佐藤貞二 小林啓二)