大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和56年(ラ)53号 決定 1981年10月19日

抗告人(債権者) 木立昭裕

右代理人弁護士 平田由世

相手方(債務者) 松尾泰夫

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、抗告人は原更正決定の取消を求めた。

二、記録によれば、抗告人は相手方に対する青森地方裁判所昭和五三年(手ワ)第三八号約束手形金請求事件判決の執行力ある正本に基づき同裁判所に対し相手方所有にかかる原判示の不動産(以下「本件不動産」という。)について強制管理の申立をなし、同裁判所は昭和五六年四月三日本件不動産を差し押え、かつ、相手方に対し収益の処分を禁止し、管理人に同裁判所執行官佐々木秀三郎を選任する旨の強制管理開始決定(同裁判所同年(ヌ)第二九号)をなしたが、右決定後に収益の給付義務を負う第三者(寺本産業株式会社)のあることが判明したとして、同年五月二九日職権により「第三者は本件不動産の収益(賃借人寺本産業、賃料毎月三〇万円、期間昭和五九年二月末日まで、支払方法は毎月五日まで前月分支払)を管理人に給付しなければならない。」との原更正決定をなしたことが明らかである。

三、抗告人の主張は、要するに、相手方と寺本産業間の本件不動産賃貸借は執行免脱のためなされた仮装のもので、かつ、登記および引渡の対抗要件を欠くものであるから、これに基づく原更正決定は違法であるというにある。

四、然し、原更正決定は単に職権をもって第三者たる寺本産業に対し本件不動産の収益を管理人に納付するよう命じたに過ぎないもので、抗告人の強制管理の申立の一部を却下したものではなく、また、右収益給付命令によって寺本産業の賃借権の存否や対抗力の有無が確定されるわけのものでもないから、右命令はそれ自体において債権者たる抗告人に対し何らの不利益をもたらすものでもない。

してみれば債権者たる抗告人には、原更正決定の取消しを求めて本件執行抗告を申立てる利益のないことが明らかであるから、本件抗告はその実体について判断するまでもなく、不適法として却下すべきものである。

よって民訴法四一四条、三八三条、九五条、八九条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小木曽競 裁判官 伊藤豊治 井野場秀臣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例