仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)88号 判決 1950年4月12日
被告人
今村弘
主文
原判決を破棄し本件を大館簡易裁判所に差し戻す。
理由
弁護人中村嘉七の控訴趣意第二点について。
原審公判調書によれば昭和二十四年八月四月本件公判を開廷し、合法適正に一切の訴訟手続を履んで訴訟を終結したこと、そして同日直に判決を言渡したことが認められ、同上調書記載中に公判開廷並判決言渡の日附が同日以外の日と疑うべき何等の記載がないのに原判決書を檢するにその作成日を同年八月三日と明記しあるので原判決書は原審公判開廷前に作成されたものと認めざるを得ないことは所論の通りである。
偶々原審裁判官の本件公判期日指定書と公判期日送達報告書記載により原審が本件公判期日を同年八月三日と指定しその日附が原判決書作成の日附と合致するのを認め得るが公判開廷並判決言渡の日附は重要な訴訟手続でその正否は刑事訴訟法第五十二條の明文上公判調書のみが証明し得る事項に属し、從つて此の事項に関する公判調書の記載と符合しない右事実をもつてしては公判調書の証明力を左右し得ないこと明らかだから結局原判決書は本件公判期日前に何等の訴訟手続を履むことなく慢然作成された違法な判決であるといわざるを得ず右違法は判決に重大な影響を及ぼすこと明らかで論旨は理由がある。