大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和25年(う)196号 判決

記録を調査するのに、原審第一回公判期日において、被告人両名はいずれも公訴事実を否認し、まず、被告人柴田邦司は「私は沢田と共謀したのではなく、沢田と硫安売買契約を結んだのです」と供述し、次で、被告人沢田助五郎は「私は被告人柴田と共謀したのではなく、柴田より硫安を買受くる契約を結び、私と近野との間で契約したのであります。」

と供述し、その間すこしも利害の相衝突する点がみえないから、原審が被告人両名に同一弁護人を選任していることを目して所論のように刑事訴訟規則第二十九条第二項に違反するものとはいえないから論旨は理由がない。

同控訴趣意第二点及びその補充について。

論旨は、所論摘録に係る検察官の証人鈴木利一、同藤井昇夫及び同近野喜重に対する尋問が、誘導尋問であるとなし、その尋問によつてなされた各証人の証言を原審が証拠としたことを非難するものである。しかし、一般に如何なる尋問方法が誘導尋問と呼ばれるかについては、未だ必ずしも明確な観念がないのであるが、すくなくとも発問者が、相手方をしてその意図する事実を、ことさらに、供述せしめようとする場合についてはこれを誘導尋問というべきことは、異論のないところであり、記録を調査するのに、論旨摘録に係る証人鈴木利一に対する第一九問、証人藤井昇夫に対する第二〇問証人近野喜重に対する第四三問は、いずれも、発問の方式として、いささか穏当を欠く嫌いはあるが、しかし、これに対し各証人は「そんなことは全然ありませんでした」「今になればそう思います」「そのようにいわれた気もする」といずれも否定的に答えているのであるから、検察官が、その尋問によつて、各証人をして、真実にそぐわない答えをなさしめたものとは認められない。すなわち、前記各証言は検察官の誘導尋問の結果によるものとはいえないのみならず、仮りに、これを所論のとおり誘導尋問だと解しても、その故を以て直ちに、その証言の証拠価値を全然否定する規定はわが訴訟法上にないのであるからそれらの証拠を全然無効のものとする論旨は理由がなく採用し得ない。

同控訴趣意第三点について。

原審第八回公判調書によれば、検察官は司法警察員及び検察官並びに検察官事務取扱検察事務官に対する被告人両名の各供述調書の取調べを請求しと記載され、また、原判決が右各供述調書を証拠として拳示していることは、いずれも所論のとおりであり、したがつて右各記載のみによつては、被告人両名の供述調書が、各作成者を異にして一通ずつ作成されたのであるか、或は、三名の作成者が誰の分を何通作成したのか、合計何通の供述調書の証拠調べの請求がなされたかが明確でないことも、これ亦所論のとおりであつて、原審公判調書及び原判決のこの点に関する記載は、いささか疏漏の嫌はあるが、前記公判調書の記載によれば、弁護人は右書類を証拠とすることに同意する、証拠調請求には異議がないと述べ、裁判官はこれについて、証拠調べをする旨の決定を宣し、検察官は前記各書類を朗読して相手方に示し、裁判所に提出し、裁判官は、検察官の提出に係る前記書類はこれを記録に編綴すると告げたことが明らかであるから、記録に編綴されている各供述調書、すなわち、被告人柴田邦司の司法警察員に対する第一回乃至第三回供述調書、検察官に対する第一回供述調書並びに被告人沢田助五郎の司法警察員に対する第一回供述調書、検察官事務取扱検察事務官に対する第二回供述調書、検察官事務取扱副検事に対する第三回供述調書の合計七通について取調べの請求がなされ、これについて、証拠調がなされたことを看取し得られるので、前記公判調書並びに判決書の各記載は、以上の供述調書七通の趣旨に解し得られないことはないから、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

同控訴趣意第四点について。

なるほど、論旨に指摘する被告人沢田助五郎の司法警察員に対する供述調書中には「うまく行つた」とある記載部分を抹消したために、その供述記載の前後の連絡が欠け、帰つてから何と申したか、文意が不明であることは、まことに所論のとおりであるが、右の部分は該供述調書のごく一部分であつて右程度の不明があるとしてもその全体を把握するに支障なく、その抹消が所論のとおり被告人からの申出によつてなされたものとすれば、同調書のその他の記載部分は、被告人において何等異議のなかつたことが、推認され得るのであるから、弁護人の主張とは逆にその供述の任意性を認めるに足りるのみならず、該供述が司法警察員の圧迫または強制によつてなされたことを疑わせるような資料は全然なく、さらに、原審において弁護人が右供述調書を証拠とすることに同意していることにかんがみても、その任意性を認めるに足りるのであつて、所論の非難は理由がない。

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