大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和25年(う)245号 判決

被告人は公判廷で原則として身体の拘束を受けないことは、刑事訴訟法第三百八十七条の規定するところであつて、このことは裁判の実際に於て我国で忠実に履行されているので、刑事訴訟法第四十八条、刑事訴訟規則第四十四条はこれを特に公判調書の明示的な記載事項としていない。又旧刑事訴訟法第六十四条が「公判期日に於ける訴訟手続は公判調書のみに依り之を証明することを得」と規定したのに反し、刑事訴訟法第五十二条は「公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明することができる」と規定している。これらのところからしてみると、公判調書に被告人が身体の拘束を受けないことを明記していないからとて、直ちに被告人が公判廷で身体の拘束を受けたものと認むべきではなく、むしろ公判調書の他の記載、その他の資料により被告人が身体の拘束を受けなかつたかどうかの推定又は証明が許されるものと言うべきである。

今本件につき記録を調べてみると、昭和二十五年五月八日の原審第二回公判調書には「検察官沖中益太出席各被告人及び国選弁護人三上啓二出頭し公開の法廷で公判を開廷す云々」と記載してあつて被告人等が身体の拘束を受けなかつたかどうかについては何等明示的な記載のないこと所論のとおりである。しかし前述した理由から右公判廷に出席した右検事又は出頭した右弁護人から被告人の身体拘束につき異議の申立がされた形跡が右公判調書にみえないし、又被告人の身体を拘束したことを疑うに足る証拠もないから、被告人は右公判廷で身体の拘束を受けなかつたものと認めなければならない。されば原審の訴訟手続には所論のような違法はなく論旨理由がない。

弁護人Sの控訴趣意第一点、同Yの控訴趣意第二点について。

原判決援用の証拠によれば「被告人両名は当初より強盜の目的を以て被害者山形富弘を追跡し五所川原町北方に当る同町隔離病舎附近の岩木川左岸堤防路上で追いつき、同人に対しその着衣の外套を要求して暴行した為同人は身軽になろうとして右外套を脱ぎ、所持せる刻煙草桔梗五十個外通帳等在中の白風呂敷一個と共にその場に置いたところ、更に被告人両名は交々同人を殴打し又は足蹴にして同人を同所附近の田圃に転落させ、同人が畏怖して同所に俯伏している隙に乗じ右物件を持ち去つた」ものであること明かであるから、右被告人両名の所為は正に山形に対し暴行を加えその反抗を抑圧して前示物件を奪取したものと言うべきであるから原判決には少しの事実誤認はなく論旨理由ない。

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