大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和25年(う)262号 判決

なるほど、所論の起訴状には、その罪名及び罰条として、強盜傷人、刑法第二百四十九条とのみ記載され、住居侵入、刑法第百三十条の記載が欠けているのにも拘らず、原判決が住居侵入の訴因を認定していることはまことに論旨のとおりである。しかし、該起訴状をみると、「被告人義兼、勇助及び定俊の三名は、一二郎方寝室に金品強奪の目的で押入り…………」と記載していて、住居侵入の訴因を明示しており、単に、罪名及び罰条の記載を欠いているにすぎない。かかる起訴状が不完全であることは論をまたないが、一方公訴事実としての訴因の記載があり、被告人小野勇助、三上義兼、坂本定俊の三名は原審第一回公判期日において、副検事の起訴状朗読後事実はそのとおり相違なく弁解することはない、或は、佐藤一二郎方に侵入した目的は強盜のためではなく、酒を飲むためでもあつたと陳述し、各弁護人もいずれも、冒頭において陳述することがないと述べていることにかんがみるとき、被告人等は住居侵入の訴因に対しこれを認め、その防禦の機会が与えられている次第であるから原審は、検察官をして罪名、罰条の追加をさせる手続をとらなかつたが、その訴因を認定しても、前記のとおり起訴状の訴因について防禦方法を講じてきた被告人等に不意打をくわせたともみられない。換言すれば、被告人等の防禦権を侵害したものといいえないから、その訴因についての罪責を問い得るものと解すべく、原判決には所論のような違法なく、論旨は理由がない。

K弁護人の控訴趣意第一点について。

論旨は原判決が証拠として採用した、被告人小野勇助、同坂本定俊の各副検事に対する供述調書が任意性を欠いていることを非難するのであるが、右各被告人等の副検事に対する供述が強制または威圧による不任意のものであることは、これを認むべき資料なく、その調書の記載内容と、公判廷における右被告人等の供述とが異なつているとの理由のみをもつては任意性を否定し得ないのであり、したがつて、該調書を証拠に採用しても何等採証の法則に違反したものとはいえないから、論旨は理由がない。

同弁護人の控訴趣意第二、第四点について。

しかし、被告人小野勇助の副検事に対する第一回供述調書中に、同被告人の供述として、相被告人三上義兼が佐藤一二郎と組合つている折、一二郎がワアワアと叫ぶので、しやくにさわり、かつとなつて、同人の背中を右手の短刀で突き剌した、一二郎方を逃げ出してから相被告人三上義兼から短刀を受取り、夜が明けた後は、相被告人坂本定俊の雨合羽の下にかくし、さらに、川部から線路伝いに歩く途中で、北常盤駅五、六分位の距理にある堰の土の中に二本とも一緒に埋め、後一週間程してから掘り出した、領置に係る短刀は自分が佐藤一二郎を傷つけた際に使用したものに相違なく、当時はそれ程錆びていなかつたが、土の中に長いこと埋めたり、また手入れもしなかつたのでそのように錆びてしまつた、とあり、また、相被告人三上義兼の副検事に対する第一回供述調書によれば、同人の供述として、自分が佐藤一二郎の腹を突いた丁度その頃、被告人勇助が佐藤一二郎の後から短刀で一突き突いたように思つた、旨の記載があり、また、医師鳴海詮作成の証明書には佐藤一二郎に背部剌創の創傷が記載されているのであつて、以上は、すべて原判決が証拠としたところであるから、原判決には、虚無の証拠によつて、被告人小野勇助が佐藤一二郎の背部を短刀で斬りつけた事実を認定した違法はすこしもないから、所論の非難はいささか当らないのみならず、さらに、原審が、論旨摘録に係るとおり、短刀につき、血痕附着の有無の鑑定の申請を却下したのは、前記のように、短刀が水分の多い堰の傍らに埋められ錆が生じていたため、その鑑定が不能とみたとともに、前記各証拠によりその必要なしと解したものとみるのを相当とし、その間審理不尽の違法のあるものとも考えられないので、論旨はいずれも理由がなく採用し得ない。

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