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仙台高等裁判所秋田支部 昭和25年(う)40号 判決 1950年7月31日

被告人

菊地広

主文

原判決を破棄する。

本件を原裁判所に差戻す。

理由

弁護人古沢斐の控訴趣意について。

およそ、自己の占有する他人所有の金銭を数回にわたり費消し橫領罪に問われる場合には、各費消毎に独立して、個別的に犯罪が成立するものと解するのを相当とし、したがつて費消の数だけの併合罪として処断すべきこと当然であるから費消橫領の犯罪事実を認定するにあたつてはその費消の日時、場所、金額目的等を逐一個別的に明確にしなければならないことは、まことに所論のとおりである。そこで、原判決認定の第二(1)乃至(4)の各費消橫領の事実をみるに、判示はいずれも自己の遊興費等に費消しとあり、その遊興費以外の費消が果して如何なるものであるか判然しないが、原審第一回公判調書の各病院から集金した金の方(即ち橫領の分)は遊興費にも使いましたが衣類等も買いました旨の被告人の供述記載等に徴すれば、遊興費以外の分は衣類の買入れに費消されたようで、これと遊興費と合せて、(1)乃至(4)の四個の併合罪として認定したものと解されるのであるが、前記説明に照し衣類の買入に費消されたとの點は判示自体に明確を欠き理由不備の譏りを免れないのみならず、弁護人摘録の被告人に対する司法警察員及び検察事務官各作成の供述調書によれば、判示(1)乃至(4)の各費消金員はいずれも被告人がその費消に先立ち不正に領得したことがうかがわれ、判示記載の各費消はいずれも、その領得後の処分にすぎない疑があつて、審理を盡さない違法も存するので被告人提出の控訴趣意に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十八条第四号、及び第四百条本文に従い主文のとおり判決する。

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