仙台高等裁判所秋田支部 昭和27年(う)235号 判決
職権をもつて、原審の追徴の当否について考察するに、刑法第百九十七条の四により、犯人が収受した賄賂を没収することができないときはその価額を追徴すべきことを定めており、原審は被告人と原審相被告人飯沼忠、原政一、細川幸七の収受した賄賂につきその各人の収受した金額が明瞭でないから各平等の割合で追徴するのが相当であると説明し、被告人から金八十六万八千七百五十四円を追徴しているのであるが、検察官に対する飯沼忠、原政一、細川幸七及び被告人の各供述調書によれば被告人等が関谷堅太郎又は三村貞男から収受した原判示各金員は被告人において別途会計として保管していたのであるがこれを支出する場合の責任者は所長である飯沼忠又は原政一であり、被告人は金員支出の場合の会計的事務を執つたに過ぎないのであるから、所長である同人等から賄賂の価額を追徴するのは格別、被告人から追徴すべきではない。けだし、本件のような収受した賄賂の使途が共犯者各人の純然たる個人的用途ではなく、旅費手当慰安費の如く、職員全体のために用いられ、又は接待費の如く事務所としての社交的儀礼のため用いられた場合は支出の責任者から賄賂の価額を追徴すべきものと解するのを相当とする。したがつて原審は追徴の点に関し、事実を誤認したか又は法令の適用を誤つたもので、その誤りは判決に影響すること明らかであるから原判決はこの点において破棄を免れない。