大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)146号 判決

しかし原審は所論の各証拠その他を援用し、これを総合して、その判示犯罪事実を認定したものである。これらの証拠のうち所論山谷石次郎の検察官に対する第二回供述調書などと所論被告人の司法警察員に対する第四回供述調書との間に被告人が本件犯行当時携帯した照明用具について差異のあること及び所論成田三丈の供述調書と所論被告人の供述調書との間に被告人の逃亡経路について差異の存することは所論のとおりであるが、この照明用具及び被告人の逃亡経路は原判決の判示しないことであり、また直接に判示犯罪の構成要件には関係のない事項であるばかりでなく、凡そかかる相容れない矛盾する証拠を総合して特定の犯罪事実を認定するところに、所謂総合判断の妙味が存するのである。この場合援用した証拠のうちその心証または認定事実と相容れない矛盾する証拠またはその一部は総合判断における心証形成の過程において除去せられるに至るものであつて、心証の形成され事実の認定された結果から観れば、かかる証拠乃至その一部はその認定に不必要であり寧ろこれを妨げる点がないではないが、総合判断における心証形成の資料としては、かかる証拠乃至はその一部も必要とする場合があるのであつて、その必要とする場合がいかなる場合であるかは理論上並びに一般経験の法則に従い具体的事案において裁判所が決定すべき判断事項である。本件において原審はその専権に基き互に相容れない矛盾する所論二種の証拠乃至はその一部を必要と認めて援用しこれを総合判断して判示犯罪事実を認定しているのであるが、右二種の証拠等を総合すれば、該犯罪事実は優にこれを認定し得られるところであつて原審のかかる証拠の総合判断による判示犯罪事実の認定は理論上並びに一般経験の法則によつて可能であり従つて原審が所論の如き相容れない矛盾する証拠乃至はその一部を援用しこれを総合して判示犯罪事実を認定したからと言つて、これをもつて判決の理由にくいちがいがあるということはできない。論旨は理由がない。

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