仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)206号 判決
弁護人は被告人両名に共同正犯の責任を負わせることはできないと主張するのでこの点を検討する。
原判決引用の証拠によれば被告人両名は事件当夜山中キミ方を立ち去つた後に実行担当者のうち誰がどんなことをするかというような分担などの具体的細目が協議決定されたのであり、また金承吉なる者が新たに参加するに至つたことが認められるので、被告人両名はこれらの点については謀議に加わらず、全く認識がないのである。
しかし火焔瓶投入の場所を小坂町警察署および西田後道方住宅とすること、決行の時刻を当夜午後一〇時三〇分ごろとすること、林正守、伊藤清人、中沢政七、渋谷政弘が実行に当ることは山中キミ方において被告人両名がその他の者と謀議決定しているし、投入する火焔瓶四本もその際被告人両名のいるところで製造されていて、被告人両名はこれを知つているのであるから、この程度の謀議に参加している以上、実行方法の具体的細目についての協議に参加せず、したがつてこれを知らなくも、被告人両名は実行担当者である朴正守等とともに、本件放火(未遂)について共同正犯の罪責を負うべきものである。なお共謀者のうち一部の者に犯罪を実行させたとき被告人両名のようにその実行行為に加担しない者も共同正犯の責任があることは最高裁判所の判例とするところである。