仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(ナ)1号 判決
原告 竹内幸次郎
被告 青森県選挙管理委員会
一、主 文
被告が昭和二十七年十二月十日なした原告の中津軽郡東目屋村教育委員会委員の当選を無効とする旨の裁決を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め、その請求原因として、一、訴願人訴外寺崎俊男外三名は昭和二十七年十月五日施行の原告居村中津軽郡東目屋村教育委員合併選挙に際し、同年十月十二日東目屋村選挙管理委員会(以上村選管と略称する)に対し選挙の効力に関する異議申立をなしその理由として、(一)東目屋村教育委員会の委員選挙は同年十月五日午前八時から午後六時までの間に投票を終り同日午後七時から同村役場において助役西沢敬次郎を開票管理者として開票立会人五名立会のもとにその開票が行はれた結果、福沢芳穂候補の得票は六百四十九票、三上久雄候補の得票は三百九十九票、三浦喜一候補の得票は三百九十三票、竹内幸次郎候補(原告)の得票は三百四十一票、以上の四名は当選、寺崎俊男候補の得票は三百三十九票で落選となる旨告知された、(二)然しながら右の開票は投票の点検及び投票の有効無効決定の方式、その他が適法に行はれたものではない。すなはち前記開票管理者は立会人等に一列の机及び椅子を与え整然と立会はしめたが、三個の投票箱は之を離れた机上に並べ同村役場吏員十一、二名をして之を順次各別に開票点検せしめその間同吏員が疑問投票を発見したものが時々右管理者の許に赴き指示を受けて処理したようであり、立会人等には全然その内容を聴取することができなかつた。管理者は特に低声私語して指示を与へていた実情であつた。斯くして全投票は各候補者毎に区分され且五十枚を一綴とした後これを各立会人に廻付したが、立会人等は一々この投票を点検する余裕がなくただ一瞥したのみで他に廻す外なかつたし、また五十枚に達しない投票綴及び無効投票綴などは管理者が専ら保管しついに立会人には回覧されなかつた。以上の次第であるから、右の開票は投票の点検及びその有効無効の決定に関する法規に違反したもので公明且適正なものとはなし難い。現に開票の結果有効投票と決定されたもののうちに他事記載と認むべきものが四票以上、自書でないものと認むべきものが若干あるとの説をなす者が少くないし、無効投票と決定されたものが果して真に無効なりや否や疑わしく、その他にも幾多の疑義をさしはさむ余地がある、(三)そうだとすると、今回の選挙の結果に重大な異動を生ずる虞ある場合に該当するから公職選挙法第二百二条、第二百五条に従い異議の申立をなすと主張している。二、然るに被告が、裁決書において、訴外寺崎俊男外三名が昭和二十七年十一月十五日被告に対してなした訴願の要旨として掲げたところによると、昭和二十七年十月五日執行の中津軽郡東目屋村教育委員会委員合併選挙における選挙又は当選の効力について同年十月十二日付同村選管に対し異議申立をしたところ、同年十月二十三日村選管において審議の結果、異議の申立相立たない旨の決定をなし、同年十月二十六日その決定書の送達を受けたが、その決定に承服できないというので訴願を提起し村選管の右決定を取消し本件選挙の当選人中竹内幸次郎(原告)の当選を無効とし次点者寺崎俊男を当選人とする旨の裁決を求めたものとしている。すなはち被告は右寺崎俊男等が村選管に対し該選挙の効力または竹内幸次郎の当選の効力について異議の申立をなしたものと誤断し、本件訴願を受理し審査の結果、「昭和二十七年十二月十日、村選管が同年十月二十四日付をもつて訴願人等から提起された同村教育委員会委員合併選挙における選挙又は当選の効力に関する異議申立に対し為した決定は之を取消し同選挙における当選人である原告の当選を無効とする」旨の裁決をなした。三、しかしながら、訴願者訴外寺崎俊男外三名の村選管に対する異議申立はその題目に選挙の効力に関する異議申立とあるばかりでなく、その異議の理由は明かに公職選挙法第二百二条、第二百五条に当る旨明示されている。すなはち同法第二百二条は選挙の効力に関する異議、訴願の規定であり、同法第二百五条は選挙無効の決定、裁決、または判決の規定であるから、本件の異議申立は当選の効力を争うものでないことは何等疑問の余地はない。四、訴願における審理の限界は異議申立の対象となつた範囲に限られるものである。もし然らずして異議申立の対象とならない新事実に対してまでも拡張して審理することが許容せられるものとせば異議申立に対し審理の結果決定した事実の是正を求める訴願の本質を破壊する結果となる。これは異議申立の対象とならない新事実を附加して審理するからである。而して被告が昭和二十七年十二月十日原告の東目屋村教育委員会委員の当選を無効とする裁決をなしたがこの裁決は寺崎俊男外四名が村選管に対してなした異議申立の対象とならなかつた新事実についても審査裁決している。詳言すると本件異議申立の対象となつた事実は本件訴願の趣旨として記載された「昭和二十七年十月五日施行の同村教育委員会の委員選挙(一部又は全部)を無効とする」との点であり、選挙の効力そのものであつた。本件訴願の趣旨として記載された「昭和二十七年十月五日施行の同村教育委員の選挙につき竹内幸次郎を当選者と決定したのを取消して寺崎俊男を当選者と決定告知する」旨の裁決を求めている点は当選の効力に関するもので、訴願において新に附加されたものである。尤も被告は本件訴願の処理に当り事前に訴願代理人武山敏二に宛て書面をもつて右訴願を当選の効力に関するものとして処理し度い旨を申入れているが、この事実自体が被告が異議申立の対象とならなかつた新事実について裁決せんとしたことを示すものである。要するに被告が異議申立の対象とならなかつた当選の効力までを附加して本件訴願を審理しその結果原告の当選を無効と裁決したのは、これは訴願審理の限界を誤つた違法行為であり、当然取消さるべきものである、五、なお本件異議の申立は選挙の効力に関するものであるが、仮にこれが当選の効力に関するものであつたとしても、各候補者の得票数は村選管で決定したとおりであるから、被告のなした当選無効の裁決は失当であるから取消さるべきものである。と述べた(立証省略)。
被告代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、一、現行の公職選挙法第十五章において選挙の効力を争う場合と当選を争う場合とを区別し適用条文を別々に規定しているが、一般選挙人には如何なるものが選挙の効力を争う場合であるか如何なる場合が当選の効力を争う場合であるか明白でないため、従来から相当の誤があつた。異議申立又は訴願提起にあたり標題には選挙無効と記載しながら、その内容においては当選無効を主張していたり、又はこれと反対に標題には当選無効の申立と表示しながら、その内容においては全く選挙の効力を争うものもあり、また一の異議申立または訴願において選挙の効力と当選の効力との双方を争つているものも少くない。
よつて異議申立書または訴願書を受理した場合においては、その内容を審査しその内容によつて選挙の効力を争つているか、或は当選の効力を争つているかを判定すべきもので、その標題または適用法条の記載に拘泥すべきものではない。従つてまたその審査に当り異議申立または訴願の内容に不備な点、前後矛盾する点があるときには、申立人に対し訴願法第九条第二項の規定に基き期限を指定して補正させ、しかる後に決定または裁決すべきである。これは公職選挙法第二百十六条において訴願法第九条の規定を適用しているからである。二、本件異議申立書の内容について検討する。本件異議申立書の標題は選挙の効力と記載しているが、その異議申立の理由は、本件選挙における投票の有効無効の決定方法が適正且公明でなかつたので右投票を再点検して正当なる当選人を決定するよう要求し、(1)右選挙においては各立会人に対しては投票の点検並びに回覧をさせないで選挙長及び一部役場職員のみが之に当り投票の有効無効を決定し当選人を決定したのは不当の処置である。(2)右投票中有効と決定されたもののうち他事記載のため無効と認むべきもの四票ありまたその他にも選挙人の自書にあらざるものと認むべきものが混入しており、さらに無効投票と決定されたもののうちには有効と認むべきものがあるから全投票の再点検を求む。(3)従つて右投票の再点検の結果において当選人の当落に異動を生ずる重大なる結果を生ずる虞ある場合に該当すると主張しているし、またこの選挙においては定員四名に対し立候補者が五名であつたから落選者は唯一人であり、従つて右異議申立においては落選者寺崎俊界の当選の決定を要求していることも明白である。尤もこの異議申立書には公職選挙法第二百二条、第二百五条を掲記しているが、これは同法第二百二条と同法第二百六条を挙示すべきを誤つて第二百五条を記載したのにすぎない。また原告代理人は本訴において村選管が本件異議の申立を選挙の効力に関するものとして却下したように主張しているが、村選管は本件異議について決定をなすに当り何等これを問題とせず、単に異議申立において主張されているような事実がないとの理由でこれを却下する旨の決定をなしたものである。要するに本件異議の申立はその標題に選挙の効力と記載しているにも拘らず、その内容においては明らかに当選の効力を争つているものである。三、本件訴願について検討する。前記の異議申立に対する決定につきこれを不服として被告に対し訴願が提起されたが、その訴願書においては、該選挙の当選人である竹内幸次郎が落選し次点者である寺崎俊男の得票が多くなるのであるから同人を当選人とすることを要求していたので、被告もこの内容に従つて裁決をなしたものである。而して右訴願書の末尾に近く「選挙の効力又は当選の効力について裁決を仰ぐ次第である」と記載してあつたので被告は右裁決前に訴願人に対し書面をもつて該訴願書は当選の効力に関するものとして処理し差支ないかを問合せたところ、異議なかつたので当選の効力に関するものとして処理し裁決したのであるから何等違法の点はない。四、被告は右訴願の提起によつて該選挙の投票を調査したところ、その投票整理が極めて粗雑であり(イ)同選挙会では候補者福沢芳穂の得票を六百四十九票としているが、その実数は六百四十八票であつた。(ロ)同福沢芳穂の得票中には同寺崎俊男の有効投票が二票混入している。(ハ)同三浦喜一の得票を三百九十三票としているが、その実数は三百九十四票である。(ニ)無効と決定した投票中から次のような有効投票を発見した。同寺崎俊男の有効投票二票、同福沢芳穂の有効投票一票、同三上久雄の有効投票三票。以上のような結果から、次点の者寺崎俊男の有効投票が三百四十三票となり、最下位当選人竹内幸次郎の得票三百四十一票に比較して寺崎俊男の得票が二票多くなるので被告は訴願人の請求は理由あるものと認めて村選管の決定を取消し選挙会で当選人と認められた竹内幸次郎の当選を無効とする旨の裁決をなしたのである。以上のように被告は本件訴願を当選の効力に関する申立として受理し、全投票を再審査した結果、適正なる当選人を決定したものであるから、被告の裁決は正当であり、原告の主張は何等の理由がない。五、原告は訴願審理の限界は、異議申立の対象となつた範囲に限るのであつて新事実を主張して是正を求めることはできないから無効であると主張するが、異議申立又は訴願の段階においては、これを受理した行政庁においては職権審理主義が採用されているから異議申立人又は訴願人は果して何を求めんとしているのであるかを考へその申立全体の内容を見極めてこれに適合した決定又は裁決をなすべきものであることは幾多の判例の示すところであり、また異議申立又は訴願においてその異議などを強化するため、その申立人から主張を追加するか又はその理由を追加してその事実を主張することは法において認めていることであるから原告の主張は全く当らない。六、本件異議の申立は当選の効力に関するものであり、訴願も亦同一であつたからに之に対し被告が原告主張の如く裁決をなしたものであるから、原告の予備的請求は法律上許されない。と述べた(立証省略)。
三、理 由
訴外寺崎俊男外四名が弁護士武山敏二を代理人として、昭和二十七年十月五日施行された青森県中津軽郡東目屋村教育委員会委員の合併選挙につき、同年同月十二日同村選挙管理委員会(以下単に村選管と略称する)に対し異議の申立をなしたが、村選管においては異議申立却下の決定をなし、その決定書は同年同月二十六日右異議申立代理人に交付されたこと。右寺崎俊男外三名はこの決定に不服ありとして、同年十一月十五日被告(青森県選挙管理委員会)に対し訴願を提起したところ、被告においては、同年十二月十日「昭和二十七年十月二十四日附をもつて中津軽郡東目屋村選挙管理委員会が訴願人等から提起された同村教育委員会委員の合併選挙における選挙又は当選の効力に関する異議申立に対して為した決定は之を取消し同選挙における当選人中竹内幸次郎の当選を無効とする旨の裁決をなし同年十二月十一日その要旨を告示したこと。原告が昭和二十八年一月九日当裁判所に対し右裁決取消の訴を提起したことは弁論の全趣旨に徴し当事者間に争のないところである。
而して原告は本件異議の申立は選挙の効力を争つたものであると主張するに対し被告はこれをもつて当選の効力を争うものと主張するので審案するに、成立に争のない甲第一、二号証並びに弁論の全趣旨を総合するに、訴外寺崎俊男外四名が昭和二十七年十月十二日村選管に対してなした本件異議申立(甲第一号証参照)は法律専問家である弁護士武山敏二を代理人としてなしたものであり、右代理人の作成した本件異議申立書(甲第一号証)にはその標題として「選挙の効力に関する異議申立」と記載してあるばかりでなく、異議申立の理由として掲ぐるところは、「右選挙の開票は投票の点検及び投票の有効無効の決定方式その他が違法であつた、すなはち投票は同村役場吏員のみに点検させ、同吏員が有効無効につき疑のある投票を発見したときも、開票管理者の指示だけで処理し立会人の意見を求めず、投票の整理を終つた後初めて投票を立会人の回覧に供したけれども立会人等は一々これを点検する余裕がなく一べつしたのみであり、五十枚に満たない投票綴及び無効投票綴などは開票管理者が保管し立会人には回覧しなかつた。以上の次第であるから有効投票と決定されたもののうちに他事記載によつて無効とみるべきもの四票以上、自書にあらざるものと認むべきものが若干あるとの風評もあり、また無効投票と決定されたものでも果して無効であるかどうか疑はしく他にも幾多の疑義をさしはさむ余地がありこれは今回の選挙の結果に重大なる異動を生ずる虞ある場合に該当すること」などであるから、いづれも右選挙そのものの管理執行が規定に違背することを主張しているのみで、選挙会における各候補者の得票数の計算が誤つているとか、原告の当選は無効で訴外寺崎俊男が当選人たるべきものであるとか、その他当選人の決定が不当であると主張している形跡はないこと。この異議申立書には選挙の効力を争う異議、訴願、訴訟にのみ関し、当選の効力を争うそれらには関係のない公職選挙法第二百二条、第二百五条が挙示されていることを認めることができる。(尤も被告は右第二百五条は第二百六条の誤記であると主張するけれども、証人武山敏二の証言をもつてはまだ右主張を肯認するには足らずその他にこの主張を認めることのできる証拠はないので被告の右主張は採用できない。)右認定を覆するに足る証拠はない。
しからば本件異議の申立は、該選挙の効力を争う趣旨をもつて提起されたものであり、何等当選の効力を争う趣旨を包含していないものといわねばならない。
しかるに、被告は本件異議の申立が選挙または当選の効力を争つたものであるとなし、この前提の下に本件訴願を当選の効力を争うものとして審査裁決したことは冒頭に説明したところによつて明白である。
原告はこれをもつて被告が訴願審理の限界を逸脱したものであると主張するに対し被告はこれを争うので案ずるに、公職選挙法第二百二条以下において選挙の効力に関する争訟と当選の効力に関するそれとは系列を分ち、選挙の効力に関する異議、その決定に対する訴願、訴願の裁決に対する訴訟と当選の効力に関するそれらとをそれぞれ別個に規定しているところからみて、選挙の効力を争う趣旨をもつて異議の申立がなされた場合には、その異議に対する決定に不服ある者は選挙の効力を争う趣旨をもつてのみ訴願をなし得べく、新に異議申立に包含されない当選の効力を争う理由を附加して当選の効力を争うことは許されないものというべく、訴願において、異議申立に包含されないような当選の効力を争う趣旨が追加された場合にも、訴願を審査裁決するに当つては、専ら選挙の効力を争う点についてのみ実質的に審査決定すべきであつて、当選の効力を争う点についてまで実質的に審査決定すると、これは当選の効力に関する異議及びこれに対する決定を経ないで当選の効力に関する訴願を審理裁決するものであるから公職選挙法において選挙争訟と当選争訟とを区別して規定した趣旨を没却することとなり、その裁決は訴願審理の限界を逸脱した違法のものとして取消を免れないといわねばならない。
これを本件についてみるに、本件異議の申立が、前記選挙の効力を争つたもので当選の効力を争う趣旨を包含しないことは前段に認定したとおりであるに拘らず、被告は本件訴願を審査裁決するに当つて該選挙の効力については何等の裁決をなさず、専ら竹内幸次郎の当選の効力について裁決したことはすでに説明したところである。しからば被告のなした本件訴願の処理は、その前提たる本件異議の申立に包含されなかつた当選の効力について審理決定したものであり、この点において被告のなした裁決は公職選挙法が選挙争訟と当選争訟とを区別して規定した趣旨に背反し違法であり訴願審理の範囲を逸脱したものとして取消を免れない。
尤も成立に争のない乙第一号証、証人武山敏二の証言によると、訴願人寺崎俊男等は本件訴願をなすに当り該選挙を無効とする裁決又は原告の当選を無効とする裁決を求め、当選無効の原因として選挙会が投票の有効無効の決定を誤り候補者寺崎俊男の得票数を候補者竹内幸次郎の得票数よりも少いと判定したがこれは誤つている。寺崎候補の得票数が竹内候補の得票数より多くなり、寺崎候補が当選し竹内候補が落選する結果となるから竹内候補の当選を無効とする旨の裁決を求めると主張していることが認められるけれども、これは右訴願人等が本件異議申立の趣旨たる選挙の効力を争う点を理由あらしめるため新な事実を附加した場合とは異り、右異議申立には全然包含されていない別種の理由を加え新に原告の当選の効力を争つたものであつて、許さるべきものでないことは前段の説明によつて明らかである。従つて被告が右訴願を裁決するに当つても、専ら選挙の効力を争う点について、決定すべく、当選の効力を争う点については、実質的に審理をすゝめ決定すべきではなかつたのである。
つぎに被告は本件訴願を審理するに当つて、訴願代理人武山敏二に対し右訴願を当選の効力を争うものとして処理し差支ないか意見を求めたところ、同代理人に異議がなかつたと主張し、当審証人武山敏二の証言によると、被告の右主張事実を認めることができるけれども、すでに前段に説明したとおり、本件異議申立は右選挙の効力を争うもので、当選の効力を争う趣旨を包含していないのであるから、後日にいたり訴願人等が本件訴願を当選の効力を争うものとして処理するにつき異議がなかつたとしても、これによつて本件異議申立が当選の効力を争う趣旨を包含したものとなすことはできない。よつてこの点からも被告が本件訴願に対してなした裁決を正当なものとなすを得ない。
以上のとおりであるから、原告の被告に対する本訴請求は正当として認容すべきであり、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 中兼謙吉 浜辺信義 裁判官高橋雄一は填補中のところ、帰庁したので署名押印することができない。裁判官 中兼謙吉)