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佐賀地方裁判所 事件番号不詳 判決

右に対する法人税法違反被告事件に付当裁判所は検事某立会の上審理を遂げ左の通り判決する。

主文

被告佐賀合同運送株式会社を罰金二百万円に

被告人片倉輝夫を懲役六月に

夫々処する。

理由

被告佐賀合同運送株式会社は佐賀市神野町四百十六番地に本店を有し運送業等を営む資本金三十万円(内金二十五万円払込済)の株式会社にして税法上の所謂同族会社、被告人片倉は同会社の株式を多数有し且代表取締役として実質上同会社の業務を独裁的に掌裡して居るものなるところ

第一、被告人片倉は昭和二十二年三月頃より自己並家族の財産税約八十二万円(後に約百八万円に更正決定)の納付に苦慮して居たが之が金策に窮した結果被告会社の財産を形式上自己名義に移した上処分し然も之が代金を会社の利益に計上することなく挙げて全部を自家の財産税に充てんことを企て被告会社の業務に関し

(一)  昭和二十二年六月二十八日佐賀県佐賀郡久保田村大字久保田所在の被告会社所有に係る宅地等五筆合計三百八十三坪五建物四棟建坪合計百十二坪電話モーター各一(記帳価格合計金五千八百十三円二十四銭)を被告会社と被告人片倉との間に低廉なる価格金一万二千八百八十八円五十銭にて売買ありたるが如く仮裝し、更に僅に十数日を経過した同年七月十二日右物件全部を形式上の所有名義者たる被告人片倉より長崎市千馬町二丁目旭食料品工業株式会社に対し金六十万円にて売却したるにも拘はらず同年七月十五日右仮裝の売買代金一万二千百八十八円五十銭と当該物件の記帳価格金五千八百十三円二十四銭との差額金六千三百七十五円二十六銭を雑収入として同会社の利益に計上したるに止まり旭食料品工業株式会社に対する売却代金六十万円より右記帳価格金五千八百十三円二十四錢並右雑収入として計上した金六千三百七十五円二十六錢を控除した金五十八万七千八百十一円五十銭に付いては同会社の利益として故らに計上せず

(二)  同年七月二日福岡県三潴郡大川町大字小保所在の被告会社所有に係る宅地六筆合計三百二十二坪八五建物八棟建坪合計二百十五坪三電話五基(記帳価格合計金五万七千九百九十五円二十銭)を被告会社と被告人片倉との間に低廉なる価格金六万五千円にて売買ありたるが如く仮裝し更に右物件中建物五棟建坪合計百四十三坪及電話一基(記帳価格金三万一千百七十四円)を数十日を経過した同年九月十七日形式上の所有名義者たる被告人片倉より福岡県食糧営団に対し金六十三万二千円にて売却し、次に右物件中電話二基(記帳価格金二千二百三十円)を七月三日前同様被告人片倉名義より龍敏栄外一名に対し金三万二千円にて夫々売却したるにも拘らず同年八月二十八日右仮裝の売買代金六万五千円と右物件全部の記帳価格金五万七千九百九十五円二十銭との差額金七千四円八十銭を雑収入として同会社の利益に計上したるに止まり福岡県食糧営団及龍敏栄外一名に対する売却代金合計金六十六万四千円より之が記帳価格合計金三万三千四百四円並右雑収入として計上して金七千四円八十銭を控除した金六十二万三千五百九十一円二十銭に付いては前同様同会社の利益として故らに計上せず

第二、同年十月一日被告会社より日本通運株式会社に対し諸用紙代として合計金四十七万五千六十四円五十七銭の支払方請求を為し内金二十五万円を同年十月三十日残金二十二万五千六十四円五十七銭を同年十二月二十二日夫々受領しその頃佐賀合同運送株式会社社長片倉輝夫名義にて佐賀興業銀行普通預金に預入れたにも拘はらず之を被告会社の帳簿に故らに記載せず右三口所得金合計百六十八万六千四百六十七円二十七銭を昭和二十三年二月二日附同会社の当該事業年度(昭和二十二年六月一日より同年十一月三十日迄)の確定所得申告に際りその申告を為さず以て右所得金に対する法人税百九万六千二百三円七十二銭を不正に免れたものである。

右事実は

一、被告人の当公廷に於ける自分は脱税の意思なく且判示第二の金は仮受金であつて被告会社帳簿に記載しなかつたのは使用人の手落であつて故らに記帳しなかつたものでない旨夫々弁疏する外被告人片倉が被告会社の業務を独裁的に掌裡して居ること及び判示売買が仮裝のものである点を除き判示同旨の供述並昭和二十二年十一月三十日現在被告会社の株は自分が二四一六株、江口寿八が一六六四株、樽原小善太が一一四〇、江口茂が五五〇株、片倉輝敏が五〇株、片倉秀夫が三〇株、片倉タマが五〇株、片倉政登が五〇株、江口マツエが三〇株、楢村秀が二〇株を夫々所有して居たが之等の株主中片倉輝敏同秀夫は自分の息子、片倉タマは自分の妻、江口寿八、楢村小喜太は自分の従弟、江口茂は寿八の長男、江ロマツエは寿八の妻、楢原秀は小善太の妻、片倉政登は自分の甥であるところ同年六月当時は右株主の外に他人の納富栄三が総株数の二三割程度を持つていたがこれは全部自分が譲受けた旨の供述

一、検事の江口寿八に対する第一回聴取書中自分は佐賀合同運送会社の株主名簿上は形式的に取締役と云ふ事になつて幾何かの株を持つて居るようになつて居りますがそれは単なる名義を貸して居るに過ぎず全部片倉の株であります。従つて役員としての報酬又は賞与と云ふ様な物も形式上は出して居る事になつて居りますが実際は受取つた事はありません。合同運送会社の取締役その他役員として掲げられて居る者は自分初め何れも親族許りで株主となつて居る者も何れも名義を貸して居るに過ぎず実際は片倉輝夫個人の株である旨の陳述記載

一、検事の被告人に対する聴取書中自分は昭和十四年以来個人の営業は失業となり生活困難の事情にあり而も五月不法に拘留されて昭和二十年十一月拘留を解かれたので上告手続の為め東京に赴き滞在中財産税の公布となり急遽帰り金策に奔走しましたが昭和十四年以来約十年間個人営業を失業致して居た為め中々思ふ様に金策も出来ず苦慮して居た時久保田の土地建物等を貰ひ度いと云ふ人が居りましたので財産税の引当の為め転売致しました。然し尚それでは不足しますので他より借受けする様物色して居た折又大川の土地建物等を買ひ度いと云ふ人がありましたのでそれを転売し財産税の納付に当てた旨の陳述記載

一、検事の江口壽八に対する第二回聴取書中会社の資産を一応片倉個人で安く買受けて他に直ちに高く転売して居りますが当時片倉は財産税納付の為め金策に苦心して居ましたが久保田大川の建物等は利用して居ない為め腐朽の虞あり売り度いと思つて居た時丁度買の申出がありましたのでこの際全部処分した方が得策だと云ふ社長の意見でもあり自分達もその様に感じたのであります。処分する事に就いて会社より直接他人に売らず一度片倉個人が買受けて転売した事情は処分するにしても代金その他に付個人名義にして置いた方が便利だからと云ふ理由丈にあると思ひます。然し結果から見れば会社より個人で安く買入れてそれを直ちに他に高く転売して居る為め最初から計画的にして居ると思はれるかも判りませんが自分は当時社長が財産税に付苦慮して居た事情を考えて金の出所が無い以上当然だと考えて居りました財産税は全部で百二十万位と思ひますが最初八十万円位だつた処後で更正決定があり結局四十万円位増へた様に記憶する旨の供述記載

一、検事の江口茂に対する聴取書中自分は佐賀合同運送会社関係の経理の仕事をして居りますが先づ久保田の資産については昨年七月十五日附にて諸整理をして居ります。御示し現金出納簿(証第二十九号)、伝票(証第二十五号)、集計表(証第二十六号)、元帳(証第二十七号)の記載は殆んど自分が致して居りますが記載の順序は伝票、現金出納簿、集計表、元帳の順であります。先づ伝票に依れば昨年七月十五日土地建物科目として三、七八八円五十錢、一、七八七円九十八錢、什器科目三六円七六錢、二百円の四口合計五、八一三円二十四錢が会社記帳の価格の受入であり、雑収入科目の六一二円二錢、二、九五三円二四錢二、八〇〇円の三口合計六三七五円二六錢が雑収入としての会社利益であり右記帳価格及雑収入を加へた合計一二、一八八円五〇錢が片倉に売つた代金となります。次に大川の資産売却の件ですが之は八月二十八日附にて只今の帳簿に記載してあります。それは八月二十八日収入伝票中土地建物科目一二、八三三円二五錢、三九、一〇一円九五錢、什器科目六、〇六〇円の三口合計五七、九九五円二〇錢が記帳価格の受入であり同伝票収入科目七、〇〇四円八〇錢が一括した雑収入利益であり右記帳価格、雑収入の合計六五、〇〇〇円が売却代金であります。今申した久保田、大川資産売却の事実は右伝票に基き集計表及総勘定元帳に記載されて居る旨の陳述記載

一、検事の小井手完一に対する聴取書中自分は日本通運会社佐賀支店長代理を勤めているが日本通運会社より佐賀合同運送株式会社に諸用紙代等を支払つた事に付申上げます。昭和十九年七月頃片倉輝夫が経営して居る佐賀合同運送会社が営業停止になりましたので日本通運がその後を引受けて運送事業等を経営する事になりました。当時自分の方は開設した許りで用紙等がないのに片倉はそれが不用になりましたので、諸用紙等を買受けたのですが、昨年(昭和二十二年)十月一日頃未払になつて居た二口合計四十七万五千六十四円五十七錢を請求しましたのでその後昨年十月三十日その内金二十五万円同年十二月二十二日二十二万五千六十四円五十七錢を諸用紙代として支払ひました。それは片倉が当時支店長に面会して請求し自分の会社では右の二回に支店長が何れも小切手を片倉に渡して支払つたもので勿論それは諸用紙代として支払済になつて居るもので貸金その他別に片倉から返還を受ける性質のものではない旨の陳述記載

一、検事の桐山篤三に対する聴取書中自分は昭和十九年七月日本通運佐賀支店開設当時より現在迄支店長をして居ります。諸用紙の点に付き申し上げます。日本通運としては合同運送より人員設備運搬具等重要な物を譲受けましたが当時の常務取締役納富栄三よりその様な重要な物許りでなく用紙等合同運送として不用の物があるから引取つて呉れと申出がありましたが当時日本通運としては諸用紙は持つて居りましたので差当り必要ではありませんでしたが先方の要求に応じて随時十数回に亘り譲受け昭和二十年一、二月頃迄買入れて居りましたが諸用紙等の件に付ては社員に任せて居り当時自分は重要輸送業務に追はれて決済を失念して居たのですがその後も双方共事務員も尠くその交渉が延々になつて居た処昭和二十二年六月家賃値上の問題が起きた時片倉より諸用紙代が未払になつて居るから引取つた品物の調書を出して呉れと云ふ事でありましたので引受希望価格を添へて出しましたが仲々解決が出来ず漸く七月二十八日頃妥協が出来て諸用紙代として六万四千九百四十五円六十五銭を家賃その他の借賃と共に一緖に支払ひました処が九月二十日頃片倉より用紙代が洩れて居るから至急洩れて居る分の再調査をして呉れとの事でしたので調査の結果尚相当洩れの事実がありましたので九月二十二日その調書並に引受希望価格を出しました。これに対し片倉の方から十月一日に洩れの部分の計算総額三十六万六千二百五円八十八錢及前回代金支払の分に対する価額更正の計算書が出されました。価額更正の計算書と云ふのは支払つた六万四千九百四十五円六十五錢が安過ぎるからその追加分として十六万八千八百五十八円六十九錢の計算書であります。その様な申出がありましたが自分の方の計算とは相当な開きがあり数回接渉しましたが仲々解決せぬ内片倉より十月三十日に二十五万円要るから内払して呉れとの要求でしたので自分も二十五万円以上になると思つて居ましたので取敢へず十月三十日その内金として二十五万円を支払ひました。そしてその後接渉しましたが結局十二月二十二日片倉の要求通り四十七万五千六十四円五十七錢で解決し残額二十二万五千六十四円五十錢を即日支払ひました。以上申し上げた七月二十八日家賃その他用紙代も含めて支払ひをした当時から最後の用紙代の残額を支払つた事情は初めは自分が片倉と接渉して居ましたが問題が重大で片倉の要求も強かつたので自分丈で計ひ兼ねると思ひ門司の支店長津和野繁高氏に来て貰ひその交渉に当られ解決されたものであります。右諸用紙代として三回支払をしましたのは何れも当時用紙代の解決金として支払つたもので仮払と云ふ性質のものではありません。仮払と云う性質のものであればその交渉に手数をかける事はない筈なる旨の陳述記載

一、証人小田德の当公廷に於ける、自分は昨年(昭和二十二年)八月一日より現在迄熊本財務局の直税部第二課長として法人税の仕事をして居りますが佐賀税務署から自分宛に佐賀合同運送株式会社に於て法人税逋脱があるので之を告発しやうと思ふがどうだろうかと云つて指示を仰いで参りました。それで自分方では正式の回答としてではなく参考迄に告発した方が良いだろうと云ふ意見を佐賀税務署長に伝えたのであります。之を告発した根拠はその物件が何十倍と云ふ価格で他に売れると云ふことが殆んど確実だと判つて居るにも拘はらず之を社長個人が非常に安い価格で譲受けること自体が既に法人税法第四十八条の所謂不正の行為でありますから之に依つて告発したのであります。それから佐賀合同が日通佐賀支店から受取つた四十七万五千六十四円五十七錢の金を法人税逋脱と認めた根拠はそれは会社の帳簿にその記帳もなく申告もしてありませんでしたので税務署としては之は記載を洩らして脱税を計つたのだとみて不正の行為と認めた旨の供述

一、押収に係る江口壽八、楢村小善太、片倉政登、江口マツエ、楢村秀作成名義の約定証と題する書面六通(証第七六号、第七八号乃至第八〇号)、伝票綴(証第二五号)中昭和二十二年七月十五日附収入伝票七通、同年八月二十八日附収入伝票六通、売渡証一通(証第六八号)、同二通(写)(証第八六号)、領収証一通(証第八八号)、同一通(証第八九号)、同一通(写)(証第八五号)及総括計算書と題する書面一通(証第九〇号)の各存在

を綜合して之を認定する。

法律に照すと被告人片倉の判示所為は法人税法第四十八条第一項に該当するから所定刑中懲役刑を選択しその刑期範囲内で被告人片倉を懲役六月に処すべく、又被告会社に対してはその代表取締役たる被告人片倉に於て前記の如く同会社の業務に関し同法第四十八条第一項に該当する違反行為をしたものであるから同法第五十一条に則り同法第四十八条所定の罰金刑に処しその金額の範囲内で罰金二百万円に処すべきものとする。

仍つて主文の通り判決する。

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