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佐賀地方裁判所 事件番号不詳〔2〕 判決

右の者に対する労働関係調整法違反被告事件について当裁判所は檢事長田栄弘立会の上審理を遂げ次の通り判決する。

主文

本件公訴を棄却する。

理由

本件公判請求書記載の公訴事実は、被告人は昭和二十二年十一月下旬頃より本部を東京都に有する全國財務労働組合の中央執行委員長(鬪爭時中央鬪爭委員長)なるところ現業以外の行政事務に從事する者は労働爭議行爲を爲し得ざることを知り乍ら政府に対する地域別最低賃金制の確定その他十数項の要求の貫徹を期する爲に昭和二十三年三月上旬頃同組合本部より同組合本部より同組合佐賀地区連合会を通じて佐賀市所在同組合佐賀税務署支部宛「財鬪イ号計画」なる文書を送達し同月十二日両組合本部より同支部長たる相被告人友納十三男に対し同月十五日右計画を実行する旨打電指令し尚羽柴幸助をして同月十七日別府市において同支部書記長中尾一英を介し相被告人友納十三男に対し「財鬪ロ号計画」なるものを傳達指令せしめ以て之に基き同月十二日職場蹶起大会を同月十三日決行大会を各開催し同月十五日二十四時間罷業を行うべき旨及び同月二十二日外一日各二十四時間罷業を行うべき旨相被告人友納十三男を敎唆し、因て同人をして同月十五日、二十二日、二十三日の三回に亘り右税務署において主動的地位に立ち右支部組合員たる右税務署員百五十四名中の大部分と共に賜暇の名目の下に一斉欠勤の手段に出で爭議行爲を爲さしめたものであると謂うに在りこれと当公廷における立会檢事の釈明事実とを綜合して本件の訴因を要約すれば、全國財務労働組合佐賀税務署支部所属の組合員は昭和二十三年三月十五日、二十二日、二十三日の三回に亘り賜暇の名目の下に一斉欠勤し以て同盟罷業をなしたが、その際全國財務労働組合の中央鬪爭委員長である被告人は右佐賀税務署支部長である相被告人友納十三男に対し右罷業を実行すべき旨の指令を與え以てこれを敎唆指導したものであるから非現業官公職員の團体である右佐賀税務署支部の労働関係調整法第三十八條第三十九條違反の罪に対する敎唆犯として被告人個人を訴追するものであり、本件において被告人に対し地方労働委員会の処罰請求はないが正犯である前記佐賀税務署支部の違反行爲について同支部長たる相被告人友納十三男に対し管轄労働委員会である佐賀地方労働委員会より処罰請求がなされて居るから刑事訴訟法第二百六十八條所定の所謂告訴不可分の原則により右正犯に対する処罰請求は当然に敎唆者たる被告人に対してもその效力を生ずると謂うに在る。

よつて本件につき刑事訴訟法第二百六十八條の適用があるか否かについて按ずるに、労働関係調整法第三十九條は処罰を受くべき者として当該違反行爲について責任のある使用者若しくはその團体、労働者の團体又はその他の者若しくはその團体と規定して居り、右に所謂その他の者若しくはその團体とは労働爭議の当事者たる使用者及び労働者の團体以外の第三者たる個人又は團体が当該爭議行爲を労働者團体に敎唆した場合におけるその第三者の如き者をも指称するものと解すべきであるが、この場合右敎唆者の負うべき刑事責任は同條の規定に基ずく独立のものであつて刑法総則所定の正犯に從属してその責任を問わるる敎唆犯とはその趣を異にし、又爭議行爲の当事者と共同正犯の関係に立つものでもない而して他面労働関係調整法が同法第三十九條の罪については労働委員会の請求を俟つてこれを論ずる事としたる趣意は当該爭議行爲の眞の責任者が何人であるか及び更にこれを処罰する必要があるか否かについて一應労働委員会をして判断せしめその取捨選択に委する事としたものと解すべきであるから、前記の如き爭議行爲の敎唆者が右第三十九條の責を負うべき場合においてもこれに対する訴追は労働委員会の該敎唆者に対する独立の処罰請求ある事をその要件とするものであるから本件に付ては刑事訴訟法第二百六十八條はその適用がないものと解するを相当とする。

果して然らば、被告人に対する管轄地方労働委員会の処罰請求がないにも拘らず労働関係調整法第三十九條違反の罪の敎唆罪としてこれが処罰を求むる本件公訴は不適法たるを免れないから刑事訴訟法第三百六十四條第六号に從いこれを棄却すべきものである。

よつて主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 岩永金次郞 裁判官 富川盛介)

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