佐賀地方裁判所 昭和29年(行)7号 判決
原告 辻丸亀一
被告 佐賀税務署長
一、主 文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は「被告が昭和二十八年四月十六日なした原告の昭和二十七年度所得税確定申告に対する更正処分(所得税額五万八千四百円)の中、一万三千六百円を超過する部分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として次のように述べた。被告は昭和二十八年四月十六日原告の昭和二十七年度所得税確定申告に対する更正処分をなしたが、原告は右課税に異議があるので、被告に再調査の請求をなしたところ、右再調査請求は棄却された。そこで原告は福岡国税局長に審査の請求をなしたところ昭和二十九年五月二十日右審査請求を棄却する旨の決定の通知書を受取つた。右被告のなした更正処分によると原告の昭和二十七年中の魚類販売事業所得は二十九万八千六百円、課税標準は二十二万四千六百円、この税額は五万八千四百円というのであるが、原告の同年中の仕入の中三十六万五千四百八十一円六十銭に該当する仕入品は僅かな手数料を得て訴外山田祐次に譲渡したもので、右仕入品から普通仕入品を販売する場合のような売上利益を得たものではないのであつて、原告の同年度の所得は十四万二千百六十九円七十三銭に過ぎず、これより扶養親族控除等の控除をなした後の課税標準は六万八千百円で、この税額は一万三千六百円である。
よつて右一万三千六百円を超過する部分の課税の取消を求めるため本訴に及んだ。
かように述べた。(立証省略)
被告指定代理人は本案前の答弁として主文同旨の判決を求め、被告が原告主張の日原告の昭和二十七年度所得税確定申告に対する更正処分をなしたこと、原告がその主張のとおり再調査請求及び審査請求をなしたところ、いずれも棄却されたことは認めるが、原告が本件審査決定の通知書を昭和二十九年五月二十日受領したとの事実は否認する。右審査決定通知書は福岡国税局長より同年四月二十一日普通郵便で発送されているので原告は遅くとも同月二十三日までには右通知書の配達を受けた筈である。しかるに本訴が提起されたのは同年八月十七日であつて所得税法第五十一条第二項に定める審査決定に係る通知を受けた日から三箇月以内という出訴期間を経過した後に提起されたことが明らかである。よつて本訴は不適法として却下さるべきものであると主張し、本案に対する答弁として「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、原告の昭和二十七年度分の所得税として原告主張のとおり課税したことは認めるが、その余の事実は否認すると述べた。(立証省略)
当裁判所は職権で原告本人を尋問した。
三、理 由
先づ本件訴の適否について判断する。
被告が昭和二十八年四月十六日原告の昭和二十七年度所得税確定申告に対する更正処分をなしたこと、原告が右課税につき再調査請求及び審査請求をなしたところ、いずれも棄却されたことは当事者間に争いがない。
証人荒牧貫志の証言によつて真正に成立したと認める乙第一号証の一、二、三及び成立に争いのない乙第二号証、乙第三号証の一、二並びに右証人荒牧貫志、証人中原義隆の各証言を綜合すれば、福岡国税局長の本件審査決定通知書が、昭和二十九年四月二十一日同局総務部総務課文書係を経て普通郵便で発送されたこと、同日右通知書と同時に発送された訴外中原義隆に対する審査決定通知書が、佐賀市水ケ江町二五七の八番地の同訴外人の住所に遅くとも同年四月中に届いて同訴外人がこれを受取つていることを認めることができ、右事実に徴すれば原告に対する本件審査決定通知書も遅くとも同年四月中には原告の住所に配達されたことを推認することができる。
所得税法第五十一条第二項によれば、審査請求の目的となる処分の取消又は変更を求める訴は、審査の決定に係る通知を受けた日から三箇月以内に、これを提起しなければならないところ、右に謂う通知を受けた日とは同法第四十九条第六項所定の理由を附記した書面即ち審査決定通知書を受取つた日を指すこと明らかで、右通知書が郵便により配達される場合は、特段の事情のない限り右通知書が、当該請求者の住所(又は居所)に配達された日を以て右通知を受けた日と解するのを相当とする。仮りに原告本人尋問の結果の如く原告が現実に右通知書を了知した日が、右配達の日より後の同年五月二十日であつたとしても、原告は右通知書が自己の住所に配達された日以降は何時にても右通知書を了知し得る状態におかれていたのであり、単にその不注意によりこれを了知しなかつたに過ぎないものであるから、右配達の日を右通知書を受取つた日と解して支障ない。
してみれば原告が本件審査の決定に係る通知を受けた日は遅くとも昭和二十九年四月三十日であるといわねばならない。しかして本訴が提起された日が昭和二十九年八月十六日であることは記録上明らかであるから、本訴は所得税法第五十一条第二項所定の出訴期間経過後に提起された不適法の訴と断ぜざるを得ない。
よつて爾余の判断をまつまでもなく本件訴は不適法として却下すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岩永金次郎 田中武一 富川盛介)