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佐賀地方裁判所 昭和61(行ウ)2 行政事件裁判例

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○ 主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

○ 事実

第一 当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

1 被告は伊万里市土地開発公社に対し、金六〇〇万円及び昭和六一年三月一六日から支

払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 仮執行宣言

二 本案前の答弁

主文同旨

三 請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二 当事者の主張

一 請求原因

1 当事者

原告らは、伊万里市内に住所を有する伊万里市民である。被告は、昭和四五年四月以降地

方公共団体である伊万里市の市長の職にあり、同時に同市が全額出資した伊万里市土地開

発公社(以下「公社」ともいう )の理事長を兼務し、公社を代表し、その業務を総理す。

者である。

2 公社がAに対し金六〇〇万円を支払うに至つた経緯

(一) 伊万里市は、Aから、同人所有の昭和五一年四月二六日合筆登記前の伊万里市<

地名略>宅地五〇五・七八平方メートル(以下「本件土地」という )を市営住宅用地の。

部として買収し、昭和三八年九月二八日所有権移転登記を了した後、本件土地上に市営住

宅を建設したうえ入居者に払い下げた。

(二) ところが、最近になつてAは被告に対し 「自分は本件土地を売却した覚えも移、

登記手続をした覚えもない。市は、無断で私有地を使用してきたものである。本件土地は

すでに第三者に払い下げ済みであるから、損害の賠償を求める 」と要求してきた。伊万。

市長でもある被告は、Aの右要求を受けて同人と話し合つた結果、本件土地の売買契約書

や領収書が伊万里市に保存されていないことを理由に、本件土地に関するAと伊万里市と

の間の売買契約は存在せず、売買代金も支払われていないとして、所有権移転登記は錯誤

、 、 、に基づく無効なものであるとみなし 右の前提のもとに 昭和六〇年六月二二日Aに対し

公社の資金から本件土地の代金として新たに金六〇〇万円を支払つた(以下「本件支出行

為」という 。。)

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3 本件支出行為の違法性

(一) 公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公有地拡大法」という )一七条及び。

社の定款の定めによると、公社の業務は公共用地の取得、造成等に限定されているし、同

法一八条六項により、

余裕金の運用方法も限られている。

( ) 、 、 、二 しかしながら 本件土地は 伊万里市が既に第三者に払い下げている土地であり

本件支出行為については宅地の取得費という名目が使われているものの、本件支出行為に

よつて公社が現実に本件土地を取得するものではない。本件支出行為は、伊万里市とAと

の間の本件土地に関する紛争の示談金を伊万里市の公金から支出することができないの

で、

伊万里市長でもある被告が公社の資金を流用したもので、実質的には公社が伊万里市のた

めに立替え払いしたものにほかならず、公社の設立目的に著しく違反し違法な支出行為で

ある。

4 損害

本件支出行為により、公社は金六〇〇万円の損害を受けている。

5 監査請求

原告らは、昭和六〇年一二月二五日地方自治法二四二条に基づき、伊万里市監査委員に対

して住民として監査請求を行い、昭和六一年二月二二日監査結果の通知を受けたが、右監

査結果に不服がある。

6 よつて、原告らは、地方自治法二四二条の二第一項第四号に基づき、伊万里市土地開

発公社に代位して被告に対し、本件支出行為による損害金六〇〇万円及びこれに対する不

法行為の後である昭和六一年三月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による

遅延損害金の支払を求める。

二 被告の本案前の主張

地方自治法二四二条の二第一項は、地方自治法に定められている普通地方公共団体に適用

、 、され あるいは同法に定められている特別地方公共団体である財産区に準用されるもので

同法と法体系を異にする公有地拡大法に基づいて設立された伊万里市土地開発公社につい

て適用あるいは準用されるべきものではないから、本件訴えは違法な訴えとして却下され

るべきである。

三 本案前の主張についての原告の反論

公社は、公有地拡大法一〇条に基づいて設立された法人であり、地方公共団体とは別個の

法人ではあるものの、その定款は地方公共団体の議会の議決を経て作成されること、出資

者は地方公共団体に限られていること、その業務は公有地となるべき土地の取得、造成、

、 、管理等に限られていること 財務については設立団体の長の承諾が必要とされていること

解散後の残余財産は出資した地方公共団体に帰属し、公社の財産の変動は最終的に地方公

共団体に影響を及ぼすことになることなど地方公共団体と密接な関係を有するから、

公社の財務会計上の行為についても地方自治法二四二条の二の規定の適用があると解すべ

きである。

四 請求原因に対する認否

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1 請求原因1は認める。

2 同2(一)は認める。但し、本件土地は現在公社が所有権を有している。

同2(二)は否認する、Aは、昭和四八年以降再三伊万里市役所を訪れ、本件土地を伊万

里市に売却した覚えはない旨主張し、本件土地の買取りを伊万里市に要求していた。そこ

で、伊万里市が改めて調査したところ、本件土地については売買契約書が存在しないばか

りか、昭和三八年度の決算書中に本件土地の売買代金を支出した形跡が認められず、同年

度中にはAから本件土地の他にも土地を買収していることから、当時の伊万里市の担当吏

員が誤つて、他の土地と併せて本件土地の所有権移転登記手続をしてしまつたものと考え

られるに至つた。したがつて、伊万里市は本件土地の所有権を取得しておらず、所有権移

転登記も無効であると認められ、取得時効についても地方公共団体である伊万里市がこれ

を援用することは信義上はばかれたので、伊万里市の意を体した公社が本件土地を公共用

地として買受けることとし、昭和六〇年六月二二日Aとの間に本件土地の売買契約を締結

し、同日代金六〇〇万円をAに支払つて所有権を取得したものである。

3 同3(一)は認める。同3(三)は否認する。

4 同4は争う。公社は、本件土地の所有権を取得しているのであるから、公社には損害

が発生していない。

5 同5は認める。

○ 理由

一 まず、被告の本案前の主張について判断する。

住民訴訟を認める地方自治法二四二条の二の規定は、普通地方公共団体について定めてい

る同法第二編の中に位置しており、かつ、その文理上からも普通地方公共団体に関する規

定であることが明らかであるところ、土地開発公社は普通地方公共団体ではなく、その外

郭団体にすぎないから、公社の財務に関する行為について同条が適用されることを法は本

来予定していないことが明らかである。

そこで、まず、公社の支出行為をその設立者である地方公共団体(設立団体)の支出行為

とみることができるかについてみると、公社は、設立団体とは別個の法人格を有し、公社

の支出行為の効果も設立団体ではなく、公社に帰属するから、公社の支出行為を地方公共

団体の支出行為とみて右規定を適用することはできないといわざるをえない。

次に、

右規定を土地開発公社の財務行為に準用あるいは類推適用できるかについて検討する。

地方自治法二四二条及び二四二条の二のいわゆる住民訴訟の規定は、個々の住民の法律上

の利益にかかわらない事項すなわち法律上の争訟にあたらない事項について、一定の政策

的理由により特に創設された規定であるから、単に右規定の適用の実際上の必要性等があ

るからといつてみだりに類推適用されるべきものではなく、法文の規定の解釈上適用ある

いは準用の定めがあるとされる場合でない限り、右規定に基づいて訴えを提起することは

許されないと解すべきである。

而して、公有地拡大法及び関係法令中には地方自治法二四二条の二の規定を準用すべき旨

を定めた明文の規定が存在しないばかりでなく、公社の財務については、地方自治法二〇

四条以下の普通地方公共団体の財務の規定とは全く別個の制度が公有地拡大法一八条によ

り規定されていること、監査機関についても、地方自治法の規定する監査委員の制度は設

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、 、けられておらず かえつて公有地拡大法一六条により監事を役員として置くべきものとし

監事は民法上の法人の監事の職務権限を行うものとされている(同法二三条一項による民

法五九条の準用)ことなどからすると、公社について地方自治法二四二条の二の規定を準

用あるいは類推適用する余地はないものというべきである。

二 以上の次第で、公社の支出行為について地方自治法二四二条の二の規定により代位訴

訟を提起することは許されないから、その余の点について判断するまでもなく、本件訴え

は却下を免れない。よつて、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八

九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森林 稔 森野俊彦 甲斐哲彦)

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