佐賀家庭裁判所 昭和37年(家)783号 審判 1962年12月07日
後見人 西田正夫(仮名)
被後見人 西田太郎(仮名)
主文
上記後見人解任審判事件の審判が確定するまでの間後見人西田正夫の職務の執行を停止する。
代行者として佐賀県佐賀市△△△町大字○○○七○○八○番地大田信一を選任する。
理由
(一) 当裁判所調査官飯野勲の報告書の記載によれば被後見人の親権者父義雄は昭和一九年一二月二五日戦死、親権者母タミは昭和三〇年五月一〇日死亡したため後見開始し祖母西田キヌが後見人となつたが同人が昭和三六年六月一二日死亡したので被後見人の叔父にあたる西田正夫が昭和三七年一月三〇日後見人に就職した。そして後見人は被後見人の所有の水田四反八畝と被後見人の受くる父戦死による公務扶助料を被後見人に代り管理又は受領しているがその管理に不正があり後見人としての任務に適しない事由があるものとして調査官より報告があり当裁判所で昭和三七年一一月九日後見人解任手続開始相当と認め立件されている。
(二) 家事審判規則第八六条は後見人解任の際同規則第七四条を準用しているので職権による後見人解任請求事件の場合も申立がなければ後見人の職務執行停止又は代行者の選任ができないのではないかとも考えられるが同規則第七四条は親権又は管理権喪失宣告の場合で民法第八三四条、第八三五条によればその申立権者を子の親族又は検察官としているのに後見人解任の場合は民法第八四五条によれば後見監督人又は被後見人の親族若しくは検察官の請求によつて又は職権で解任できることとなつて居り、親権管理権喪失の場合と後見人解任とはその重要の程度も異なるし職権で後見人の解任ができると規定した以上は同規則第七四条を同第八六条で準用する場合は「申立によつて又は職権で」と解して準用すべきものと解する。
(三) 当裁判所調査官飯野勲の調査報告書の記載によれば被相続人に支払われる公務扶助料昭和三七年四期分金一三、〇〇〇円余の支払期日は昭和三七年一二月一一日であり被後見人の利益のため緊急の必要があり代行者に選任する大田信一は被後見人の叔母の夫であり水田一町五反余畑三畝を所有しその人格も真面目な人であると認めるので主文の通り審判をする。
(家事審判官 大津浅吉)