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佐賀家庭裁判所 昭和55年(家)331号 審判 1980年9月13日

申立人 今吉夫

相手方 山尾あけ美

事件本人 山尾美江子 外二名

主文

一  事件本人山尾美江子、同山尾広治の親権者を、いずれも相手方から申立人に変更する。

二  申立人のその余の申立てを却下する。

理由

第一申立ての趣旨

事件本人山尾美江子、同山尾広治、同山尾太三郎の親権者を、いずれも相手方から申立人に変更する。

第二申立ての実情

一  事件本人三名は、申立人と相手方との間に、名生年月日欄記載の日に、それぞれ出生した未成年者であるが、申立人と相手方とは昭和五三年一月一四日協議離婚し、その際、事件本人らの親権者を母親である相手方と指定した。

二  ところで、相手方が親権者として事件本人らを監護教育することは、事件本人らの福祉を害するものであるから、申立ての趣旨記載のとおりの審判を求める。

第三当裁判所の判断

一  記録によると、次の事実が認められる。

1  申立人と相手方とは、昭和三八年一一月二七日婚姻し、事件本人らを出生。

2  申立人は自衛官として、昭和五〇年八月、沖縄県の部隊へ転属となり、相手方と事件本人らを申立人の現住所に残して単身赴任した。

3  昭和五一年八月ころ、相手方の申し出により、申立人が○○農協から一九〇万円(うち九〇万円は返済ずみ)、○○相互銀行から一五〇万円(返済ずみ)、融資を受けて、相手方が久留米市内で喫茶店を経営するようになつたが、申立人の不在中、相手方は、申立人名義で、金融機関やサラ金などの金融業者から、四三〇万円余(うち二口については、佐賀地裁で申立人敗訴の判決を受け控訴中)、申立人を連帯保証人として、金融機関から一三〇万円(うち、約三〇万円は返済ずみ)、相手方個人名義で、友人や、サラ金業者数名から約二〇〇万円以上、借金をする始末となり、男関係もあり、昭和五二年一一月、申立人が沖縄から帰省した際、離婚の協議が成立し、その届け出は、相手方が、昭和五三年一月一四日すました。

4  親権者指定については、あまり話しあわれないまま、相手方とされた。

5  その後、相手方は、久留米市内の相手方経営の喫茶店に移り住んだ。

6  昭和五三年三月ころ、店は人手に渡り、相手方は、事件本人らとともに、佐賀市○○○町にある○○クリーニング店に住み込みで働くようになつた。

7  同年七月、○○○○自動車学校の職員として稼働するようになつたが、同月末解雇。

8  ア 相手方は事件本人らとともに同年九月七日佐賀市○○町に移り住んだ。

イ 同月一四日、借家から追い出され、同夜佐賀市内に宿泊。

ウ 同月一六日から二二日まで、佐賀婦人相談所に一時保護された。

エ 同月二二日婦人相談所から佐賀県の母子寮に移された。

オ 同年一二月二七日母子寮から市営住宅に移り住んだ。

なお、同年四月一二日、申立人以外の男との間に広二を出生。

9  申立人は、昭和五三年八月、沖縄から佐賀県内の○○○駐屯地西部方面○○○○隊に転属となり、現住所地に移り住む。月収は、二六万円余であり、これから、諸控除のほか、住宅ローンの支払い、相手方の残した申立人名義の前記借金などの支払いなどで、二〇万円近くもさし引かれるものの、ボーナス等もあり、ぎりぎりだが、なんとか生活はやつていけている。

10  事件本人山尾美江子は、昭和五五年三月一九日、相手方に置き手紙をして、申立人の元へ転居してきた。相手方は、夜ホステス等して朝、事件本人美江子が登校の際に寝ており、昼間も不在がちで、夜は午前三時ころ帰宅し、店屋ものをとつたりする生活で、対話がなく、事件本人美江子は○○○校に受験したが、失敗し、来年再受験をめざしており、本件申立てに賛成している。

11  事件本人山尾広治は昭和五五年三月二四日長崎県にある私立○○中学から、一年の終業式とともに申立人の住所に転居し、地元、○○中学に転入して通学している。本件申立てに賛成している。

12  しかし、事件本人太三郎は、相手方に同情し、相手方とともにくらしている。

二  以上の認定事実を総合すると、相手方は、職場及び住所を転々とし、生活が不安定であつたのにひきかえ、申立人は、生活が苦しいものの、定職を有し、事件本人美江子、同広治は、現実に申立人と同居を望んでおり、相手方を親権者とするよりも申立人に変更するのが、上記両名の福祉に合致するものの、事件本人太三郎は、いまなお、相手方との同居を望み、申立人の元へ移り住むことをちゆうちよし、同人の福祉の立場からは、いちまつの不安が残り、同人が一二歳にも達していることから、同人の選択にまかせるのが相当であり、現段階では、申立人もしいて、自己への変更を固執していないこともうかがわれるので、本件申立てのうち、主文の限度で相当とし認容し、その余を相当でないとして却下することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 知念義光)

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