佐賀簡易裁判所 平成5年(ハ)518号 判決 1994年8月04日
原告
松隈久典
被告
松尾泰幸
主文
一 被告は原告に対し、二一万二〇〇〇円及びこれに対する平成五年八月一六日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、その五分の二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 一項につき仮に執行することができる。
事実及び理由
一 請求の趣旨
被告は原告に対し後記損害の賠償として三九万二一二七円及びこれに対する同損害発生の平成五年八月一六日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払え。
二 争いのない事実
平成五年八月一六日午後四時三〇分ころ、三養基郡基山町大字長野一〇三九番地三先道路で、被告運転の普通乗用自動車(以下被告車という。)が原告の所有で松隈千華の運転する普通乗用自動車(昭和六〇年式ホンダシビツクオートマチツク以下原告車という。)に追突し、原告車が損傷する交通事故(以下本件事故という。)が発生した。
三 争点
1 本件事故の発生状況。それによると、被告に本件事故発生につき自動車運転上の過失が認められるかどうか。また、原告車の運転者の過失の存否・程度はどうか。
2 本件事故による原告の損害
(一) 原告の主張
原告車の修理費用 二五万二一二七円
同車修理中の代車使用料 三万円
弁護士費用 一一万円
合計 三九万二一二七円
(二) 被告の主張
原告車の損傷は経済的全損に当たり、右修理費用額は原告の損害とならない。
四 争点に対する判断
1(一) 証拠により認められる事実(一部争いない事実を含む。)は次のとおりである。
(1) 本件事故現場は国道三号下り線の緩やかな下り坂で、当時路面は濡れていた。
(2) 松隈千華は原告車を運転し、停止、進行を繰り返す渋滞車両の中にあつて本戸猛博運転の普通乗用自動車(以下本戸車という。)に追従して進行するうち、時速約三〇キロで本件事故現場にさしかかつたところ、本戸車が前方の車両に従つて停止した。ところが、右千華は、助手席の友人と言葉を交わして前方に対する注意が疎かになつていたため本戸車の停止に気づくのが遅れ、かつブレーキ操作が不適切であつたことにより、原告車は本戸車の後部に軽く追突して停止した。
(3) 被告は、原告車に追従して時速約三〇キロで本件事故現場にさしかかつたが、同車がいつどういう状況で停止してもそれに即応できるような車間距離を保たず、かつ同車が急停止しようとしているのに気づくのが遅れたため、急制動の措置も間に合わず、被告車は原告車の後部に追突して停止した。
(二) これらの状況からすると、被告は本件事故の発生について自動車運転上の過失があることが認められる。
一方、松隈千華(原告側)についても本件事故を発生させる原因を作り出した過失があることが認められ、この両者の過失の態様、程度を対比すると、相互の過失割合は被告が六五%、原告側が三五%であると認めるのが相当である。
2(一) 証拠によると、次の事実が認められる。
(1) 原告は、本件事故による原告車の損傷(直前の本戸車との衝突に起因すると認められるものを含まない。)を修理した費用として二五万円を、その修理期間中の代替車の使用料として相当と認められる三万円をそれぞれ修理業者(田原自動車)に支払つた。
(2) 本件事故による損傷前の原告車と同種同程度の車両を相当期間内に中古車市場で取得することは可能であり、本件事故時におけるその客観的取得価額は一三万円程度である。しかし、これを同額で取得したとしても、その取得により登録関係諸費用の支出や自動車重量税の二重支出の損失を余儀なくされることとなり、その額は少なくとも合計四万円程度となる。
(二) (一)(1)のように二五万円程度の費用で車両の損傷の修復が可能な場合、これと同(2)の客観的取得価額及び必要な支出見込額の合計約一七万円とを比較すると、この程度では、本件原告車の損傷について前者が後者を著しく超えるいわゆる経済的全損に当たるものとは認められない。
そうすると、(一)(1)の合計二八万円は本件事故により原告に生じた損害ということができる。
3(一) 1(二)の当事者相互の過失割合に従うと、このうち被告の原告に対し賠償すべき額は一八万二〇〇〇円となる。
(二) 本件訴訟に至る経過、同訴訟の内容と経過、前記賠償認容額等の事情によると、原告の弁護士費用相当額の損害として本件事故と相当因果関係のあるのは、三万円と認められる。
五 したがつて、原告の請求は主文一項の限度で理由があるが、これを超える部分は理由がない。
(裁判官 吉岡幹郎)