大判例

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八代簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人は無罪

理由

本件公訴事実は

被告人は橋本一男が他から盗んできたテレビ一台を賍物であることの情を知りながら同人からこれが売却方を頼まれて昭和三十四年四月十二日頃八代市上横手町池田光夫方で同人に対し金三万円にて売りつけ、以て賍物の牙保をしたものであるというのである。

(当裁判所の判断)

証人橋本一男、細川沢子、池田光夫、高岡ヨシ子、西村トミ子の各証言、池田光夫の司法警察員に対する供述調書謄本、細川沢子の検察官に対する供述調書、橋本一男の検察官に対する供述調書謄本被告人の当公廷の供述及び同人の司法警察員並検察官に対する各供述調書、隈部孖作成の被害届謄本を綜合してみると、橋本一男は昭和三十四年四月十一日午前三時頃八代市福正西町一五二〇番地隈部孖方においてナシヨナル十四時テレビ一台を窃取したのであるが、その四、五日前頃橋本は被告人に対しテレビの売却周旋を依頼したので、被告人はこれを承諾し同日頃橋本と共に八代市上横手町池田光夫方に赴き同人に対し、金三万円にてテレビを買う者はないかと申向けて売却周旋をなし、その後四月十二日頃橋本が隈部方から窃取してきた本件テレビを橋本と共に池田方に運搬し、金三万円で買受けることになつた池田光夫に引渡したことが認められる。

賍物牙保罪は賍物たるの情を知りながら、賍物の有償譲渡の周旋をなすことによつて成立するものであつて、行為当時賍物自体の存在を必要とするものと断ずべきで、苟も賍物が存在しない場合は将来賍物たるに至るべき可能性がある物であり、且つその情を知つていたとしてもそれの売却周旋は賍物牙保罪を成立しないというべきである、前記認定事実によると、被告人が池田に売却周旋をした当時本件テレビは賍物として存在しなかつたことが明かであるから、被告人の行為は賍物牙保罪を成立するに由ないものである、本件公訴事実は被告人が四月十二日頃本件テレビを池田方に運搬して金三万円で買受けることになつた池田光夫に引渡した事実をとらえて、その際賍物の売却周旋がなされたとするものであるが、この事実は前になされた売却周旋に附随して行はれた一連の行為の一部とみるべきで、該事実を以て賍物牙保罪を構成すべき売却周旋がなされたとみるのは妥当でない。

しかしながら被告人がテレビを池田方に運搬するに際して賍物たるの情を知つていたとすれば、賍物運搬罪を成立するものと考えられ又被告人が橋本が窃取するものであることを知りながら池田に売却周旋したものであれば被告人の所為は窃盗の幇助に外ならないのでこの点について検討してみるに橋本一男の検察官に対する供述調書謄本及び被告人の司法警察員並に検察官に対する各供述調書によると被告人が本件テレビが賍物であることを知つていたと認められるような供述があるけれども該供述は橋本及び被告人の当公廷の供述に照して俄かに信用しがたく、その余の証拠によつても被告人の知情の点を認める十分の資料となすにたらない。

してみると被告人がテレビを運搬した行為は賍物運搬罪を成立するものでないというべく、又前顕各証拠によつては被告人が売却周旋当時橋本その他の正犯がテレビを窃取するとの情を知つていたものとは認めがたいので窃盗の幇助罪を成立する余地もないといわなければならないから本件は訴因の変更を命ずべき場合にも当らない。

してみれば本件公訴事実はその証明がないので、刑事訴訟法第三百三十六条を適用して無罪の言渡をすべきものである。

よつて主文のとおり判決する。(昭和三四年一一月四日八代簡易裁判所)

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