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函館地方裁判所 昭和41年(ワ)431号 判決 1967年12月25日

主文

被告(反訴原告)は原告(反訴被告)に対し別紙目録記載の土地について、函館地方法務局今金出張所昭和四一年一一月一七日受付第一、〇一六号をもつて原告のためになされた所有権移転請求権保全の仮登記にもとづく本登記手続をせよ。

被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は、本訴反訴を通じて被告(反訴原告)の負担とする。

事実

第一、申立

一、原告(反訴被告、以下単に原告と称する)訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

二、被告(反訴原告、以下単に被告と称する)訴訟代理人は、

(一)  本訴につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決、

(二)  反訴として、「原告は被告に対し別紙目録記載の土地についてなされた主文第一項記載の所有権移転請求権保全の仮登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二、主張

一、原告の本訴請求原因

原告は、昭和三一年一一月一六日被告との間に原告を買主被告を売主として、被告所有の別紙目録記載の二筆の土地(契約当時は瀬棚郡今金町字今金三五九番の一筆の土地であつたが、契約後別紙目録記載のとおりに分筆されたものである。以下本件土地と称する)について、代金四〇万円(但し実測の結果地積に差異を生じた場合は契約当時の価格で増減処置する)で売買契約(以下本件売買契約と称する)を締結した。しかして原告は裁判所より仮登記仮処分命令を得て、本件土地について函館地方法務局今金出張所昭和四一年一一月一七日受付第一、〇一六号をもつて本件売買を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由したが、被告は原告の請求にも拘わらず本件土地について右仮登記にもとづく本登記手続を履行しない。

よつて被告に対し、その履行を求める。

二、本訴請求原因に対する被告の答弁

本訴請求原因事実はすべて認める。

三、本訴に対する被告の抗弁並びに被告の反訴請求原因

本件土地は従来から農地であり、本件売買契約締結当時はもとより現在においても農地であるところ、本件売買契約は本件土地が農地であることを前提としてなされたもので、右契約において、原、被告双方は昭和三三年一一月一七日までに知事に対し本件土地の所有権移転の許可申請手続をなすこと及び右知事の許可のない場合は、被告は原告に対し契約を解除し得ることが定められていた。しかるに原告は右知事に対する許可申請に協力しないばかりか、徒らにその延引を計り、本件土地の非農地化を待つている状勢であり、被告の再三の要請にもかかわらず原告は右許可申請に応じないため、被告はやむなく原告の知事に対する許可申請手続の協力義務不履行を理由とし、また本件土地の所有権移転につき知事の許可がないものとみなして右解除権留保の特約にもとづき、原告に対し昭和四一年六月二一日本件売買契約を解除する旨の意思表示をなし、同意思表示は同月二二日原告に到達し、ここに本件売買契約は解除された。

従つて本件売買契約の存続を前提とする原告の本訴請求は理由なく、本件土地についてなされた主文第一項掲記の仮登記はその原因を欠くに至つたものであるから抹消されるべきものである。

よつて反訴請求として、原告に対し右仮登記の抹消登記手続の履行を求める。

四、被告の本訴に対する抗弁及び反訴請求原因に対する原告の答弁

被告の右主張事実中、本件売買契約が本件土地が農地であることを前提としてなされたもので、右契約において原、被告双方は昭和三三年一一月一七日までに知事に対し本件土地の所有権移転の許可申請をすること及び右知事の許可がない場合は被告は契約を解除し得ることが定められていたこと、被告が原告に対し昭和四一年六月二一日契約解除の意思表示をなし、同意思表示が同月二二日原告に到達したことは認めるが、その余の事実はすべて否認する。

本件土地は、売買契約がなされた当時その一部が畑として利用されてはいたが、それは専業農家でない訴外稲垣保一が自家菜園として使用していたにすぎないものであるから農地法にいう農地に該当しないものであつた。仮にそうでないとしても、契約後の昭和三四、五年頃までには本件土地は事実上宅地となつていたものであるから、もはや農地法にいう農地に該当しなくなつたのである。従つて原告が知事に対する許可申請手続に協力しなかつたこと(この事実は原告の否認するところである)を理由とする被告の契約解除の主張は全く見当違いで採るに足りない。

被告は本件売買契約を解除し得べきなんらの法律上の理由を有しないもので、被告の契約解除の意思表示はその効力を生ずるに由なきものである。

第三、証拠(省略)

目録

北海道瀬棚郡今金町字今金三五九番の二七

一、原野   七四〇・四九平方米(七畝一四歩)

同番の二八

一、原野   六四一・三二平方米(六畝一四歩)

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