前橋地方裁判所 昭和58年(わ)101号 判決 1983年6月29日
裁判所書記官
白井敬二
本店所在地
愛知県豊田市東山町四丁目一、一一七番地一四四
株式会社猪熊工業
(右代表者代表取締役猪熊茂男)
本籍
大分県日田市大字友田二、〇〇五番地
住居
群馬県新田郡笠懸村大字阿佐美一、八七七番地の一
会社役員
猪熊茂男
昭和七年一月一日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官金田泰洋出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社猪熊工業を罰金一、二〇〇万円に、被告人猪熊茂男を懲役一〇月に処する。
被告人猪熊茂男に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社猪熊工業(以下「被告会社」という)は、愛知県豊田市東山町四丁目一、一一七番地一四四に本店を置き、土木工事等の請負業を営むもの、被告人猪熊茂男(以下「被告人猪熊」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を掌理統括しているものであるが、被告人猪熊は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、賞与賃金の架空及び水増し計上等により得た資金を簿外借名預金とするなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五四年三月一日から同五五年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五三、〇九一、五七六円であるのに、同年四月三〇日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の岡崎税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三一、九三六、〇四二円で、これに対する法人税額は一一、三九一、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額一九、八四九、六〇〇円と右申告税額との差額八、四五八、六〇〇円を免れ
第二 昭和五五年三月一日から同五六年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八四、〇一二、六七六円であるのに、同年四月三〇日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四九、二四七、一九一円で、これに対する法人税額は一七、九一七、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額三一、八二一、六〇〇円と右申告税額との差額一三、九〇三、七〇〇円を免れ
第三 昭和五六年三月一日から同五七年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九二、三〇七、四四七円であるのに、同年四月三〇日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四九、四六七、五〇九円で、これに対する法人税額は一八、五三四、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額三六、五二四、七〇〇円と右申告税額との差額一七、九八九、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人猪熊の当公判廷における供述
一、被告人猪熊の検察官に対する供述調書(昭和五八年三月一七日付)
一、猪熊友則、織戸嗣郎、松岡保博の検察官に対する各供述調書
判示冒頭の事実につき
一、被告人猪熊作成の提出書と題する書面(名古屋法務局豊田支部登記官作成の登記簿謄本添付のもの)
判示第一ないし第三の各事実につき
一、被告人猪熊の検察官に対する供述調書(同年三月二五日付)
一、被告人猪熊作成の答申書と題する書面五通
一、岡崎税務署長作成の証明書二通
一、収税官吏作成の増差所得の内訳と題する書面
一、収税官吏作成の調査書三通
一、検察事務官作成の電話聴取書
判示第一の事実につき
一、収税官吏作成の脱税額計算書並びに修正損益計算書(いずれも自昭和五四年三月一日至昭和五五年二月二九日のもの)
一、収税官吏作成の修正貸借対照表(昭和五五年二月二九日現在のもの)
判示第二の事実につき
一、収税官吏作成の脱税額計算書並びに修正損益計算書(いずれも自昭和五五年三月一日至昭和五六年二月二八日のもの)
一、収税官吏作成の修正貸借対照表(昭和五六年二月二八日現在のもの)
判示第三の事実につき
一、収税官吏作成の脱税額計算書並びに修正損益計算書(いずれも自昭和五六年三月一日至昭和五七年二月二八日のもの)
一、収税官吏作成の修正貸借対照表(昭和五七年二月二八日現在のもの)
(法令の適用)
一、判示第一及び第二の各所為 いずれも刑法六条、一〇条により、昭和五六年法律第五四号(脱税に係る罰則の整備を図るための国税関係法律の一部を改正する法律)による改正前の法人税法一五九条一項(被告会社についてはさらに同法一六四条一項、一五九条二項)
一、判示第三の各所為 いずれも法人税法一五九条一項(被告会社につきさらに同法一六四条一項、一五九条二項)
一、刑種 被告人猪熊につき所定刑中いずれも懲役刑選択
一、併合罪加重 刑法四五条前段
被告人猪熊につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定加重)
被告会社につき同法四八条二項
一、刑の執行猶予 被告人猪熊に対し同法二五条一項
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 松岡和子)