大判例

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前橋家庭裁判所 事件番号不明 決定

少年 S子(昭二一・三・二八生)

主文

少年を前橋保護観察所の保護観察に付する。

理由

(虞犯事実)

少年は中学二年在学中の頃から異性男子数名と交遊したため、近隣の人々からよくない噂を立てられ、そのようなことから肩書居宅に居づらくなり、無断出奔して上京しようと考えるようになり、同級生M子も亦同様の企図を持つていることを知り、相互にしめし合せて、右のM子が家から盗み出した現金五千円を旅費その他にあて家出しようと考え、昭和三十五年四月八日午後七時頃、両名ともしめし合せて無断家出をし、沼田市内に赴むき同夜は同市内の映画館で共に映画見物をなした上、同地の旅館に投宿し、翌日更に何等のあてもないのに東京に行こうと企て、途中埼玉県大里郡○○○○に在る少年の親戚○橋○雄方に立寄つたところ、同人ならびにその家人等によつて両少年が無断家出中なることを看破せられ同家によつて急拠各家人に連絡せられたため、家人等が少年を引取りに赴いたのであるが、少年両名は家人と共に帰宅することを嫌がり、護送せられて帰郷する途中、家人の隙を伺い逃走しようと相談した結果、前記M子少年のみは首尾よく逃走に成功したのであるが本件少年は家人の看視が行届いていたためその目的を達しえなかつたものである。

(処分の方針と理由)

少年の父は少年出生後間もなく死亡し、母親○○シ○エ(大正十二年四月二十八日生)はその後一時再婚したのであるが、好ましからざる相手であつたため遂に離婚し、少年と共に前記肩書居宅に居住し、そこから沼田市内へ工員として毎日通勤し細々として生活を立てて居り、ために少年は、平素学校から帰宅しても一人留守居をする外なく、近隣の人々とも親しく交際するに至らず、孤独の淋しさを紛らわすすべもないままに偶然知り合いとなつた不良の異性等と諸所を徘徊することに興味を憶えるようになつたため、母親にも無断で無一物のまま出奔し、何等のあてもないのに、東京へでも行けば何とかなるだろうという浅はかな考えをもつようになるに至つたもので、その旅費や宿泊は勿論、前途についての考慮もなされていない。しかして少年をとりまく環境は依然として改善されていない現状からすれば、少年は将来再び本件同様の行動を繰返す可能性が極めて大きく、将来罪を犯し又は刑罰法令に触れる行為を反覆する虞があり、本少年の家庭はこの点保護指導の能力を欠如しているので専門保護司の保護指導によるべく、本件少年の保護については次の諸点に注意して保護指導されたい。

(一)  不良交遊とくに異性との交遊をいましめること。

(二)  学校より帰宅後の行動について少年宅の近隣の人々と協力して少年の孤独化を防止するよう、少年は読書は好きだといつているようであるので図書の貸与等その他善良なるリクリエーシヨンを与え地域社会全般が協力して不良化の防止に格段の工夫努力を払うこと。

(三)  昼夜を問わず無断外出を禁止するため隣家等の人々と保護司および少年の母とが相協力して少年をあたたかい気持で地域社会の一員として観護してやること。とくに少年を孤立化せしめないように、あたたかく抱擁してやる気持をもつて近隣の人々も相互に協力し合うように指導されたい。

以上によつて少年法第三条第一項第三号イ、ロ、ハ、ニ、第二十四条第一項第一号を適用し、少年を前橋保護観察所の保護観察に付する。

(裁判官 藤本孝夫)

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