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前橋家庭裁判所 昭和35年(家)2212号 審判 1960年12月21日

申立人 山田久治(仮名)

相手方 山田民子(仮名)

主文

本件準禁治産申立についての審判確定に至るまで

一  事件本人所有の別紙目録記載不動産の管理人として

本籍並びに住所 群馬県甘楽郡下仁田町大字△△○○○番地 上野一郎を選任する。

二  事件本人は別紙目録記載不動産およびその地上生育の立木又は収穫物につき前記管理人の同意なくして売買その他の譲渡、担保権の設定並びに処分行為をしてはならない。

(家事審判官 毛利恒夫)

(別紙省略)

申立の実情

一、申立人は昭和二十一年九月十一日(事実上は同年三月二十七日)山田家の先代亡山田次郎(昭和三十三年七月○○日死亡)の婿養子としてその二女である事件本人と婚姻同棲し、両人の間に長男重男(昭和二十二年一月○日生―中学二年)と二男正治(昭和二十五年九月○○日生―小学四年)との二人の子供を儲け平和に暮して来た。

但、亡山田次郎には長女美子、二女民子(事件本人)、三女春代、四女圭子という四人の子女があつたが、民子のほかの三名は皆他に嫁したので右次郎は申立人の極めて温順な性格を見込んで家を続ぐ娘民子の婿としたものである。従つて、右山田次郎はその生前、重要不動産の大部分を民子に譲渡し、同人に山田家の財産上の実権を握らせた。

二、斯くして事件本人は父、次郎没後一、二年は農家の主婦として尋常の生活をしてきたのであるが、そのうちに順次生活態度が贅沢放縦になり、本年一月頃よりは碓氷郡松井田町○○の苗木屋某と不貞の行為に及び、更にその五月頃からは同郡妙義町○○の小伊戸某という通称天神山なる暴力団的の男と関係を生じ、夫である申立人を無視し、或は月何回となく同人を自宅に招き、酒食を共にした宿泊させ、或は自動車を呼びよせ、料理屋や旅館に同行し共に飲食し宿泊することも度々に及び、申立人は勿論、その他親の諫止をも絶対にきき入れず、その後引続き殆ど家庭をよそに放埓を重ね、金銭を浪費し在宅することは、月の内三、四日に過ぎない狂態を続けている有様である。

三、而して事件本人は、この間何か事業を計画のための金策をするのであると称し、亡父次郎が生前家人や、近親に向い、山田の家宝ともいうべき古い杉山であるから大切に保存し、永く子孫に伝え、万一の場合の用意とするようにと言い遺した、山田家にとり最も大切な財産であると杉山を近々十月下旬から十一月上旬の間に売払い、その代金を浪費しているのである。

前記売払つた杉山というのは次の六筆帳簿上面積一町歩余であつて、その時価は立木地磐とも、少くとも五百万円以上といわれている。

甘楽郡下仁田町大字中小坂字△△○○○○番

一、保安林一反六畝二十三歩

同所字△△△○○○○番

一、保安林二反九畝十九歩

同所字△△○○○○番

一、山林一反四畝七歩

同所字同○○○○番

一、保安林一反八畝十五歩

同所字△△△○○○○番

一、山林六畝二十七歩

同所字△○○○○番

一、保安林一反七畝二歩

四、しかも、事件本人は現在も小井戸某との醜関係を続け、或は同人の指嗾によるか、前掲外の事件本人名義の山林をも売払うべく奔走し、又は畑等の収益を濫費し、この儘放置すれば数年ならずして事件本人自身が生活に窮すべきは勿論申立人の農業経営も困難となり、子供等の教養にも差支を生ずべきは火を見るよりも明かであるので申立人は万止むを得ず事件本人の素行不良による浪費を事由として、本申立に及んだ次第である。

(添附書類省略)

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