大判例

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前橋簡易裁判所 昭和35年(ハ)142号・昭36年(ハ)49号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕登記簿上及び土地台帳上、地目が畑と表示されている土地であつても、その現状が判示のようなものであるときは、農地法に定める農地とは認めることができず、転用許可がなくとも建物所有を目的とする賃貸借を有効に成立させることもできるし、転用許可申請手続をなすよう求める請求も理由がない。

〔判決理由〕原告は、本件土地が農地であるにもかかわらず、群馬県知事の転用許可がなされていないのであるから、強行法規たる農地法に反し賃貸借契約は無効であると主張するのでこの点について判断する。

成立に争いのない甲第一号証、第二号証によれば、本件土地は登記簿上及び土地台帳上、地目が畑として表示されていることは明らかである。しかし、農地法の適用を受ける農地であるか否かは単に公簿上の地目が農地として表示されているだけでは足りず、土地の客観的事実状態が基準とされなければならない。

ところで、当裁判所の検証の結果(第一回、第二回)によれば、本件土地は、北側に東西に走る舗装道路があつて、向い側に「八百干」という八百屋の店舗、その東隣に野田酒類販売店、その西隣に志塚電気器具店と並び本件土地の西側には秋庭米穀店があり、更にその西隣には路地をへだてて原告方の二階建住宅が建てられている。本件土地の南側にはまさ木の生垣を境にして岩淵三義方の住宅があり、東側には小暮倉治、中井正三等の各住宅が接している。しかも本件土地の周辺は大部分が住宅及びこれを対象とする商店が立ち並んでおり、畑として使用されている土地は散見されているにすぎない。そうして、本件土地の東北隅に本件建物が建築されてあり、同屋内には薪炭が山積され、コンロ等燃料器具、雑貨等も陳列されて店舗として使用されており、空地部分には薪が山積されている。本件土地を除く三二二番の土地の西側部分には前記秋庭商店の木造店舗が道路に面して建てられており、南側部分には原告の木造納屋が建てられ、西南隅にはしゆろ、びわ、あんず、篠竹、松、柿などの庭木が植えられてあり、殊余の空地七坪程度にねぎ、大根、里芋、ほうれん草などが植えつけられているにすぎない。結局、本件土地の現状は農地と見ることは全く出来ないばかりでなく、本件土地を含む一筆の土地である三二二番の土地自体が家庭裁園ともいえないくらいの現状であつて、宅地として使用されているものといわざるを得ない。

しかも、証人<省略>の各証言、原告及被告本人尋問の結果によれば、原告は国鉄職員であり、先代亡勇三は煙草雑貨商を営んでいたもので、いずれも非農家であり、現在まで農産物を供出したこともなく、専ら自家若くは親族に配分する程度で、他に売却して生計の資としたこともないこと、本件土地を借り受けた被告は、当時同地上に生育していた桑の木を二拾数株引き抜いて本件建物を建築したのであるが、原告方において従前から養蚕を営んでいたことはなかつたこと、被告は本件土地を薪炭商として使用する以外に利用価値のないこと、原告の本件土地明渡を求める主たる目的も、同所に姉藤沢昭子のたの家屋を建築することにあつて、同所を農地として使用する考えはないこと、本件賃貸借契約締結当時から本件紛争発生にいたるまで、本件土地が公簿上農地として表示されていることや、農地を他の目的に使用する場合には県知事等の許可を求める許可を求める手続を必要とすることなどは当事者双方全く意識してなかつたことなどの事実が認められる。以上の当事者双方の主観的目的、本件土地使用の経過、事情等を総合して考えると、当事者双方は、古くから今日にいたるまで本件土地を宅地として扱つて来たものであつて、本件土地が農地として認識されてはいなかつたものと解される。

しかして、証人<省略>の各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、本件土地上には戦前から被告に貸与するにいたるまで、芋、大根等の野菜類が肥培されていたことは認め得るが、右は前記認定の諸事実と併せ考えると、家庭裁園の域を出てなかつたものと解され、これをもつて本件土地が農地であると認定することは出来ない。

他に上記認定を覆すに足りる証拠は存しない。

以上の事実によれば、本件土地は農地法に定める農地とは認めることはできないところであるから、原告の再抗弁は理由がないものに帰する。結局、原告の本訴請求は失当であり棄却すべきものである。

そこで、被告の反訴について判断するに、被告が本件土地につき賃借権を有することは前記認定のとおりであり、現にその存在が争われているのであるから、これが確認の利益が存し、被告の請求は正当であつて認容すべきものである。しかしながら群馬県知事に対する転用許可申請の手続をなすよう求める反訴請求部分は、本件土地が農地であることを前提として請求するものであるから、前記のとおり本件土地を農地と認めることは出来ないので棄却すべきものである。(大塚喜一)

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