千葉地方裁判所 事件番号不詳 決定
主文
本件準抗告の申立を棄却する。
理由
第一、申立の趣旨並びにその理由
(一)(イ) 申立人小島、同山口、同川越の申立の趣旨
頭書検察官山岡文雄、司法警察員日色義忠は頭書被告人鈴木充と右申立人等とを頭書被告事件につき自由に接見、交通させねばならないとの決定を求める。
(ロ) 申立人小島、同山口、同川越の申立の理由の要旨
(A) 右申立人等は右被告人鈴木充につき右被告事件に関し、弁護人を選任し得る者の依頼により弁護人となろうとする弁護士であるが、昭和四一年五月一六日右鈴木の勾留されている場所たる代用監獄千葉中央警察署留置場に赴き、右鈴木に接見しようとしたところ、右検察官山岡文雄、右司法警察員日色義忠はこの接見を拒否した。
(B) 元来弁護人を選任し得る者の依頼により弁護人となろうとする弁護士は被告人と自由秘密交通権を有することは明白である。
(C) しかるに右検察官、司法警察員は何等の理由なくしてこの接見を拒否したのである。
(D) 尤も右検察官、司法警察員は接見拒否の根拠を刑事訴訟法三九条三項にもとめるものの如くであるが、同条項の制限は被疑者に限るものであるから、これを被告人たる右鈴木に適用することは明らかに違法である。
(E) なお検察官は前記接見拒否の理由として
(a) 右申立人等は何人の依頼を受けて弁護人になろうとしているのか明らかでないと主張するが、弁護士は何人より依頼されたかを明らかにする必要はなく、明らかにすることは弁護活動に制限を加えるものである。にもかかわらず右申立人等は被告人鈴木自ら並びに同人の妻より依頼を受けたことを明白にしたものである。
(b) 右申立人等は依頼されたことの資料を提出しないと主張するが、依頼された事実については書面によることなどを要せず弁護士が口頭でのべれば足りると解すべく、特に被告人より依頼を受けた場合にはそうである。のみならず、既に弁護人の選任届をした弁護士鈴木元子が同道し、申立人等は被告人及びその家族から弁護人の依頼を受けて来たものであることを保証していたのであるから、疎明は十分である。
(c) 控訴提起後であるから、裁判所に弁護人選任届が提出されている筈であると主張するが、依頼を受け被告人と接見し、その後に選任を受けるかどうかを決定しようとする者に選任届がある筈がない。
(二)(イ) 申立人山本幸子の申立の趣旨。
頭書検察官富田康次、同山岡文雄は、頭書被告事件につき、頭書被告人鈴木充と右申立人とを自由に接見交通せしめねばならないとの決定を求める。
(ロ) 申立人山本幸子の申立の理由の要旨。
(A) 右申立人は右被告人鈴木充につき弁護人を選任し得る者の依頼を受け弁護人になろうとする弁護士であるが、昭和四一年五月一七日右被告事件に関し勾留の場所たる代用監獄千葉中央警察署留置場に赴き右鈴木に接見しようとしたところ、右検察官富田康次、同山岡文雄はこれを拒否した。
(B) ((一)(ロ)(B)と同じ)
(C) ((一)(ロ)(C)と同じ)
(D) 尤も右検察官等は接見拒否の理由として右申立人には右被告人鈴木の両親又は配偶者の依頼が必要で、被告人鈴木のみの依頼では依頼を受けたとは認めないというものの如くである。然し右申立人は右被告人鈴木自身より依頼を受けたものであつて、これ以上何人の依頼も必要でないことは明白であるから、右拒否は不法である。
第二、検察官の意見
千葉地方検察庁検察官山岡文雄作成の意見書(二通)の要旨。
(イ) 本件申立を棄却する旨の決定をもとめる。
(ロ) 申立人等の第一(一)(ロ)(A)(B)、(二)(ロ)(A)(B)の主張(接見拒否、弁護人と被告人の自由秘密交通権)についてはこれを争わない。
(ハ) 申立人等の第一(一)(ロ)(C)、(二)(ロ)(C)の主張(接見拒否に理由なしとの主張)について。
右被告人鈴木と申立人等の接見拒否には正当な理由がある。被告人鈴木は頭書傷害事実につき昭和四一年四月一〇日勾留され、同日右事実につき弁護人又は弁護人を選任し得る者の依頼を受けて弁護人となろうとする弁護士以外の者との接見禁止決定を受けその後右事実につき公訴提起をなしたが、依然として前記趣旨の接見禁止中のものである。
(a) 弁護人を選任できる者の依頼により弁護人となろうとする弁護士は、何人により依頼されたかを明らかにしなければならないのに、申立人小島、同山口、同川越は当初何人に依頼されたかを明らかにしなかつた。
(b) 又申立人等は依頼を受けたことについて何等の資料を提供せず、その後申立人小島、同山口、同川越は依頼は被告人鈴木の妻より受けたと称したが右妻に問い合わせたところ右妻より右依頼の事実は否定された。申立人山本は被告人より依頼されたと称したが、この事実は右被告人鈴木によつて否定された。
(c) 公訴提起後にあつては弁護人選任届が裁判所に提出されてある筈であるのにこれが提出された事実もない。
第三、当裁判所の判断
(一) 頭書被告人鈴木充は昭和四一年四月七日傷害事実について逮捕状により逮捕され、同月一〇日右同一事実につき勾留されると共に、刑事訴訟法三九条一項に規定する者以外との接見等を禁止され、次いで同月一九日に勾留期間を同月二九日まで延長され、同月二九日前記同一事実について千葉地方検察庁検察官より千葉地方裁判所に公訴を提起され現に代用監獄たる千葉中央警察署留置場に勾留されているものであること、及び右事実以外については逮捕、勾留は固より起訴されていないものであることが、同被告人に対する起訴状並びに勾留に関する処分の関係書類により明らかである。
(二) 申立人等の第一(一)(ロ)(A)、(二)(ロ)(A)の主張(接見拒否がなされたとの主張)は検察官もこれを争わず、一件記録に徴してもこれを認めることができる。
(三) 申立人等の第一(一)(ロ)(B)、(二)(ロ)(B)の主張(弁護人の自由秘密交通権の主張)は刑事訴訟法三九条一項二項、八一条により明らかに正当である。
(四) 申立人小島、同山口、同川越等の第一(一)(ロ)(D)の主張(接見拒否の根拠を刑事訴訟法三九条三項に求めるは違法であるとの主張)について考察するに、本件記録を通じて検討するも、前記検察官又は司法警察員が申立人等と被告人鈴木充との接見拒否の根拠を同法三九条三項においた主張をしていたことの発見できないことは勿論、検察官等が同条項の解釈を誤り或は同条項を濫用して、あたかも接見禁止中の被疑者に対する指定処分に基く措置の如く同被告人を取扱つた結果、本件接見拒否に及んだものとも認められない。
(五) 申立人等全員に対し検察官等がとつた接見拒否の性質について。
元来法は司法的色彩の強い行政処分である刑事訴訟法三九条三項所定の処分(被疑者に対する接見の指定処分)その他所定の処分については関係人にとつて利害関係の大きいところから、これに対する不服を準抗告の対象として取り上げているが、同法三九条一項八一条所定の被告人と弁護人又は弁護人となろうとする者との接見交通権に関する規制については関係人の良識にゆだねられ、これに関する調整につき格別の司法的措置をとつていないことは、同法四三〇条三九条を対照考察すればまことに明白である。
(六) 結論
果して然らば、被告人鈴木充との接見交通権の行使に関し検察官等のとつた取扱につき不服があるとしてなされた申立人等の本件準抗告は、前記(四)(五)いずれの点においても理由がないから、刑事訴訟法四三二条四二六条一項に則り棄却することとし、主文のとおり決定する。
(昭和四一年五月二一日 千葉地方裁判所第一刑事部)