千葉地方裁判所 事件番号不詳〔1〕 判決
主文
被告人玉屋喜章を懲役二年に、被告人遠山七郎、同稲生清を各懲役一年にそれぞれ処する。
但し被告人遠山七郎、同稲生清に対しては、この裁判確定の日からいずれも二年間右刑の執行を猶予する。訴訟費用中、証人鶴岡栄、同小沼重太郎、同子安猛、同若城隆一、同田中友一郎、同有賀延寿に支給した分は、被告人玉屋喜章、同遠山七郎の各連帯負担とし、証人高橋光江、同坂入長太郎、同町田信良、鑑定人渡辺清一郎、同郡富次郎、同駒沢弘明に支給した分は、被告人玉屋喜章の負担とし、証人小川道雄、同直井鉄也、同岡田三郎、同海保義雄、同村田利一、同中田円司に支給した分は、被告人遠山七郎の負担とする。
被告人玉屋喜章の背任の点、被告人遠山七郎の業務上横領並びに経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律違反の点被告人稲生清の背任幇助の点については、被告人等はいずれも無罪
理由
被告人玉屋喜章の分(省略)
第一、被告人玉屋喜章、同遠山七郎は、法定の除外事由がないのにも拘らず
(一)当時同会社取締役であつた玉屋進及び同会社営業課長であつた日暮好蔵と共謀の上、昭和二十一年四月四日頃から同年十二月三十一日頃までの間四十数回にわたり同会社店舗等で、中村義一外約三十四名に対し住宅店舗建築資金及び事業資金として合計約百十万二千円を利率日歩二銭五厘乃至二銭八厘の約束で封鎖支払によらず現金で貸付け
(二)右玉屋進と共謀の上、同年八月十二日頃から同年十二月三十一日頃までの間約二十一回にわたり同会社店舗等で建石吉見外約十六名に対し前同様の資金として合計金約六十万円を利率日歩二銭五厘乃至二銭八厘の約束で封鎖支払によらず現金で貸付け
(三)右玉屋進並びに当時同会社営業部長兼内務課長であつた林敦と共謀の上、同年十一月三十日頃から同年十二月三十一日頃までの間十一回にわたり、同会社店舗等で、菅谷貞太郎外約八名に対し、前同様の資金として合計金約二百二十三万九千円を利率日歩二銭八厘の約束で封鎖支払によらず現金で貸付け
(四)両名共謀の上、同年八月頃から同二十二年四月頃までの間約九回にわたり、同会社店舗で、片岡伊三郎及び千葉開発株式会社社長川口為之助に対し事業資金として合計金約百二十五万円を封鎖支払によらず現金で貸付け
第二、玉屋喜章の分(省略)
第三、被告人遠山七郎は
(一)無尽会社が無尽に加入しない者に対し営業上の資金を貸付けるのには、有価証券又は不動産を担保に供せしめてこれをなすべきものであるのにも拘らず、その任務に背き或は会社に損害を与えるかも知れぬことを知りながら、
(イ)昭和二十一年七月頃、右千葉合同無尽株式会社で、同会社の無尽加入者でない従兄弟の味噌醤油配給店員村田利一に対し事業資金として同会社所有の現金七千五百円を無担保で封鎖支払によらずに貸付け
(ロ)同月頃、同所で、右会社の無尽加入者でないかねて知合の鞄製造業中田円司に対し、事業資金として同会社所有の現金二万二千三百円を無担保で封鎖支払によらずに貸付け
もつて、金融緊急措置令に違反すると共に一面同会社に対し同額の損害を加え
(ニ)昭和二十一年四月頃から同二十二年一月頃までの間約十七回にわたり右会社店舗等で金丸こと外約十一名に対し事業資金として合計金約百二万千五百円を封鎖支払によらず現金で貸付けたものである。
第四、被告人稲生清の分(省略)
(証拠説明省略)
法律を適用すると、判示行為中被告人玉屋喜章、同遠山七郎の金融緊急措置令違反の点は同令第六条、第八条、第十一条、同令施行規則第十三条、刑法第六十条(但し、判示第三の(ニ)の点については、同条を適用しない)第五十五条、昭和二十二年法律第百二十四号附則第四項に、被告人玉屋喜章の業務上横領の点は、刑法第二百五十三条、第五十五条、前記法律附則第四項(但し、昭和二十二年十二月三十日以降の点については、後二条を適用しない)に、被告人遠山七郎の背任の点は、刑法第二百四十七条、第五十五条、前記法律附則第四項に、被告人稲生清の業務上横領幇助の点は、刑法第二百四十七条、第五十五条、前記法律附則第四項に、被告人稲生清の業務上横領幇助の点は、刑法第二百五十三条、第六十二条第一項、第五十五条、前記法律附則第四項(但し、昭和二十二年十二月三十日以降の点については後二条を適用しない)にそれぞれ該当する。そこで、先づ、被告人玉屋喜章については、金融緊急措置令違反の点につき所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文、第十条により重い業務上横領の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役二年に処する。
次に、被告人遠山七郎については、同被告人の判示第三の(一)の(イ)及(ロ)の点はいずれも一個の行為にして二個の罪名に触れるから、重い背任罪の刑に従い、その所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期範囲内で同被告人を懲役一年に処する。
更に被告人稲生清については、従犯であるから同法第六十三条、第六十八条第三号に従い法律上の減軽をし、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文、第十条を適用し法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役一年に処する。
但し、被告人遠山七郎、同稲生清に対しては、情状により同法第二十五条に従い、この裁判確定の日からいずれも二年間右刑の執行を猶予し、なお、訴訟費用の負担につき、旧刑事訴訟法第二百三十七条第一項、第二百三十八条を適用し主文第三項記載の通り被告人玉屋喜章、同遠山七郎をしてそれぞれこれを負担させるべきものとする。
本件公訴事実中
被告人玉屋喜章の分(省略)
被告人遠山七郎が(一)会社資金の融資は、営業部の所管で必ず無尽に加入させた上規定の利子を付し相当の担保物を提供させて貸付をすべきものであるのに拘らず、その任に背き会社に損害を与えるの情を知りながら、左の手続をしないで昭和二十一年一月八日から同二十三年一月三十一日まで二十九回にわたつて、千葉合同無尽株式会社で、自分の知友並びに縁故者である片岡伊三郎等十七名に対し、会社所有の現金合計二百六十五万六千五百円を貸付け、よつて、右会社に対し財産上の損害を与え、(二)被告人玉屋喜章の命を受け、同人の経営する経済政策研究所等の費用として同人が会社の所有金を流用費消するの情を知りながら更に被告人稲生清等に支出を命じ、ここに被告人玉屋喜章と共謀し、同人の業務上保管する会社所有の現金を昭和二十一年十月三十一日より同二十三年二月七日までの間七回にわたり合計金十二万千三百十五円を前記経済政策研究所等の費用として流用支出させて着服横領し、(三)千葉合同無尽株式会社専務取締役として勤務中、(イ)同会社が国民共済無尽株式会社より承継した茂原家具建物株式会社に対する貸付金二十八万五千円の弁済として昭和二十年十一月中同会社から現金十二万千七百円を受取り業務上保管中これを会社に入金せず、その頃千葉市栄町の自宅で、ほしいままに、自分の生活費等に費消横領し、(ロ)国民共済無尽株式会社社長として同会社の業務全般を統轄処理していた頃の昭和十七年九月頃から同二十一年四月までの間十回にわたり同会社市川出張所で、自分が取締役又は監査役に就任した国吉興業株式会社外三株式会社に対し無尽に加入させず、かつ、相当の担保を提供させないで、同無尽会社に損害を加えるの情を知りながら債務者の利益を図り合計金八十五万五千円を不当に貸付け、よつて右会社に財産上の損害を与え、(四)遠山三郎と共謀の上、昭和二十三年一月三十一日千葉合同無尽株式会社市川出張所で、中山博道に対し、会社の業務として現金十一万千円を貸付けた際、右中山よりこれが謝礼金として現金一万千円を要求してこれを受取り、以つて、自己の職務に関し賄賂を収受し
被告人稲生清の分(省略)
たものであるとの各点については、いずれも犯罪の証明が十分でないので旧刑事訴訟法第三百六十二条に従い無罪の言渡をすべきものとする。(但し、右の中被告人玉屋喜章の(二)の(ハ)の点は、判示第一の(四)の点と一個の行為にして二個の罪名に触れる関係ありとして、被告人遠山七郎の(一)及び(三)の(ロ)の背任の点は判示第三の(一)の点と、又、被告人稲生清の(一)の業務上横領の点は、判示第四の点といずれも連続犯の関係ありとして起訴されたものと認められるので、特に主文において無罪の言渡をしない。)よつて、主文の通りに判決する。(昭和二五年五月一日千葉地方裁判所第一刑事部)