大判例

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千葉地方裁判所 平成10年(わ)718号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官湯澤昌己出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一三〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

【罪となるべき事実】

被告人は、千葉市中央区都町一二五四番地の九コスモ千葉グレスヒルズ一〇〇二号室に居住し、同区内において、平成元年四月ころから湯嶋商事有限会社(代表取締役中村清)と共同で特殊浴場を営むとともに、平成三年夏ころから同五年八月までの間は、個人でも特殊浴場を営んでいたものであるが、同社から架空の給料支払明細書を発行させて自己が同社の従業員であるかのように仮装するとともに、所得を明らかにする帳簿を作成せず、かつ、その収入金を借名の預金口座や投資信託口座に入金するなどして自己の所得を秘匿した上、

第一  平成五年分の実際総所得金額が四〇二〇万五八九七円であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成六年三月一五日までに千葉市中央区祐光一丁目一番一号所轄千葉東税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、平成五年分の所得税額一五八三万六五〇〇円を免れ

第二  平成六年分の実際総所得金額が三九三一万三二四八円であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成七年三月一五日までに前記千葉東税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、平成六年分の所得税額一三四七万八〇〇〇円を免れ

第三  平成七年分の実際総所得金額が四五三一万一九六四円であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成八年三月一五日までに前記千葉東税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、平成七年分の所得税額一六二〇万一〇〇〇円を免れ

たものである。

【証拠の標目】

(以下の記載において、各証拠に併記の括弧内の甲又は乙及びそれに続く数字は、証拠等関係カードの検察官請求証拠番号を示す。)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(乙2ないし4)

一  中村清(謄本《甲12》)、中村洋子(謄本《甲13》)、新作洋子(謄本《甲14》)及び榊原美智子(甲16)の検察官に対する各供述調書

一  検察官作成の電話聴取書(甲17)

一  大蔵事務官作成の売上金額調査書(甲5)、経費負担金調査書(甲6)、給料賃金調査書(甲7)、交際費調査書(甲8)、不動産収入調査書(甲9)、租税公課調査書(甲10)及び減価償却費調査書(甲11)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲2)

二  山本文保の大蔵事務官に対する質問てん末書(謄本《甲18》)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲3)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲4)

【法令の適用】

被告人の判示各所為は、いずれも平成一〇年法律第二四号附則二〇条により同法による改正前の所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同法二三八条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第三の罪に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一三〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一人条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

【量刑の理由】

本件は、被告人が会社と共同あるいは単独で特殊浴場を営み、多額の所得を得ていたにもかかわらず、三年間にわたり、所得税確定申告書を全く提出しないで、合計四五五一万円余りを脱税した事案である。

動機は自己中心的で酌むべき事情はなく、犯行態様も、事業所得を得ている事実を秘匿するため、共同経営していた会社名義の架空の給料明細書を作成させるなどして同社の従業員であるかのように仮装したり、事業所得を明らかにするための帳簿を作成しなかったりした上、ほ脱により得た金銭を親類の借名口座等に分散隠匿したりするなど、大胆かつ巧妙であり、ほ脱額も高額に上っていることからすれば、その犯情は悪質である。さらに、被告人は、平成元年から特殊浴場の営業を開始していたにもかかわらず、一度も確定申告をしていなかったことがうかがわれ、本件は常習の一環としてなされたものであって、被告人の納税義務に関する法無視の態度は顕著である。

以上によれば、被告人の刑責は重いといわなければならない。

しかしながら、被告人には、罰金前科以外は前科がないこと、本件後、各犯行及びそれ以前の平成四年分の所得税に関し、修正申告をして、本税のほか延滞税、重加算税を完納したこと、捜査段階から素直に自供して捜査に協力するなど反省の態度が見られること、当公判廷においても二度と脱税をしない旨誓約していることなど被告人にとって有利な事情も認められる。

そこで、以上の諸事情を総合考慮して、被告人に対しては、主文の刑を科した上で、その懲役刑の執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

【求刑・懲役一年及び罰金一五〇〇万円】

(裁判官 山田敏彦)

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