千葉地方裁判所 平成15年(行ウ)80号 判決 2007年2月27日
原告
株式会社X1訴訟承継人 株式会社X2
同代表者代表取締役
A
同訴訟代理人弁護士
遠藤英毅
同
今村健志
同
戸張正子
同
宮坂英司
被告
浦安市固定資産評価審査委員会
同代表者委員長
B
同訴訟代理人弁護士
池田道夫
同
中里妃沙子
同訴訟復代理人弁護士
上甲あおい
主文
1 被告が株式会社X1に対して平成15年9月9日付けでした別紙物件目録記載1及び2の各建物に係る平成15年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査申出に対する決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)アについて
(1) 家屋に対して課する固定資産税の基準年度の課税標準は、当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(登録価格)であり(法349条1項)、同項にいう価格は、適正な時価をいうところ(法341条5号)、適正な時価とは正常な条件の下に成立する取引価格、すわなち、客観的な交換価値をいうと解される。他方、法は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示である評価基準にゆだね(法388条1項)、市町村長は、評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならないとしている(法403条1項)。これは、全国一律の統一的な評価基準による評価によって、各市町村全体の評価の均衡を図り、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するために、固定資産の価格は評価基準によって決定されることを要するものとする趣旨であるが、適正な時価の意義については上記のとおり解すべきであり、法もこれを算定するための技術的かつ細目的な基準の定めを総務大臣の告示に委任したものであって、賦課期日における客観的な交換価値を上回る価格を算定することまでも評価基準にゆだねたものではない。
そうすると、評価基準を適用するに際しては、評価基準が適正な時価への接近方法として合理的なものとなるように解釈する必要があるというべきである。そして、法は、登録価格の決定に当たり評価基準を適用することを要求しているから、登録価格がこのように解釈される評価基準を適用した価格を上回る場合には、当該登録価格の決定は違法になるというべきである。
(2) 在来分家屋の方法によって求めた再建築費評点数の評価基準適合性について
評価基準第2章第3節四の定める在来分家屋の方法は、前評価基準再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて当該基準年度の再建築費評点数を算出するものであるところ、評価基準は、前評価基準再建築費評点数を「前基準年度に適用した評価基準第2章第1節及び第3節によって求めたもの」、すなわち、前基準年度に適用した評価基準の規定によって評価した場合に得られる再建築費評点数と定めており、固定資産課税台帳に登録された前基準年度の価格の基礎とされた再建築評点数とは定めていない。そして、浦安市長が本件各区分建物の再建築費評点数を付設する際に前評価基準再建築費評点数として用いた平成12年度の再建築費評点数は、前記第2の3(2)のとおり、乗率比準方式によって、本件各区分建物新築時再建築費評点数に、平成3年度、平成6年度、平成9年度及び平成12年度の乗率をそれぞれ乗ずることによって求めたものであるところ、この乗率比準方式も、上記の在来分家屋の方法と同様に、平成3年度、平成6年度及び平成9年度の再建築費評点数、ひいては、新築時における再建築費評点数を、それぞれの時に適用した評価基準の規定によって評価した場合に得られる再建築費評点数に基づいて算定をすべきことを求めており、そのことによって、家屋の適正な時価を算出することを担保しているというべきである。
したがって、評価基準は、前評価基準再建築費評点数の算定の基礎となる新築時の再建築費評点数について、評価基準の規定に適合した評価がされることを求めていると解するのが相当であり、本件各区分建物新築時再建築費評点数の付設が評価基準に適合しないものである場合には、結局、本件各区分建物の平成15年度の価格が評価基準にのっとって算定されたことにはならない。そこで、本件各区分建物新築時再建築費評点数が評価基準に従って算出されたものか否かについて検討する。
(3) 本件各区分建物新築時再建築費評点数の付設の評価基準適合性(本件建築設備規模補正係数について評価基準の非木造家屋評点基準表が延べ床面積1万m2程度の場合の減点補正率として定める0.93を下回る率によって減点補正することの要否)について
評価基準の非木造家屋評点基準表では、本件建築設備規模補正係数は、延べ床面積3000m2程度のものを標準である1.0とし、延べ床面積1000m2程度のものは1.05の増点補正、延べ床面積1万m2程度のものは0.93の減点補正をすることとしているが、延べ床面積1万m2を超える場合の補正係数については定めていない。
しかしながら、評価基準は、非木造家屋の各部分の工事の施工量等が非木造家屋評点基準表の「補正項目及び補正係数」欄の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合においては、当該補正項目について定められている該当補正係数によって標準評点数を補正するが、この場合に、補正項目について定められている補正係数の限度内において処理することができないものについては、その実情に応じ補正を必要とする範囲内において、その限度を超えて補正係数を決定する旨を規定する(評価基準第2章第3節二5(1))。そして、規模の補正項目は、一般に建築設備部分の工事費を延べ床面積1.0m2当たりで把握する場合に、建物の延べ床面積が大きくなれば総工事費は増加するが延べ床面積1.0m2当たりの工事費は減少する傾向が見られ、逆に建物の延べ床面積が小さくなれば総工事費は減少するが延べ床面積1.0m2当たりの工事費は増加する傾向となる点に着目して設けられたものである(〔証拠略〕)から、延べ床面積が1万m2を相当程度超える場合においても、直ちに延べ床面積1.0m2当たりの建築設備部分の工事費の減少傾向が止まると解するのは相当でなく、その傾向は継続すると考えるのが合理的である。政令指定都市のうち少なくとも札幌市、仙台市、横浜市、神戸市及び広島市が、延べ床面積が1万m2以上の場合の本件建築設備規模補正係数として非木造家屋評点基準表に定める減点補正率の下限である0.93を超える補正係数を定めており、うち札幌市、横浜市、神戸市及び広島市が評価基準第2章第3節二5(1)をその根拠として明示している(調査嘱託の結果)ことも、このことを前提とするものである。
そうすると、延べ床面積が1万m2を相当程度超え、本件建築設備規模補正係数について、評価基準の非木造家屋評点基準表に定める減点補正率である0.93の限度内の補正では、再建築費評点数を適切に付設することができない場合には、評価基準第2章第3節二5(1)の規定に従って、その建物の延べ床面積に応じて補正を必要とする範囲内において、上記減点補正率0.93の限度を超えて補正係数を決定する義務があるというべきである。
この点、被告は、評価基準第2章第3節二5(1)の規定は規模の補正係数については適用されず、本件建築設備規模補正係数については0.93が下限であるから、これを超える減点補正をすることは許されない旨を主張するが、前記判示に照らして採用できない。
これを本件についてみると、〔証拠略〕及び弁論の全趣旨によれば、本件一棟建物の建築設備部分の本件建築設備評点項目のうち空調設備に適用される計算単位の設置部分の延べ床面積は7万6458.97m2、その他の評点項目に適用される計算単位の延べ床面積は11万3561.37m2であると認められ、延べ床面積1万m2を大幅に超えており、もはや延べ床面積1万m2程度の規模の補正係数0.93を適用する合理的根拠はないことが明らかであるから、本件建築設備評点項目に係る再建築費評点数の付設に当たって、非木造家屋評点基準表に定める減点補正率の下限である0.93によったのでは、適切な規模の補正を行うことができないといわざるを得ない。そうすると、本件建築設備評点項目に係る再建築費評点数の付設に当たっては、非木造家屋評点基準表に定める減点補正率である0.93の限度を超えて、本件一棟建物の建築設備部分の本件建築設備評点項目に係る前記計算単位の床面積を考慮した適切な補正係数を決定して、それを適用しなければならない義務があったにもかかわらず、前記第2の3(2)アのとおり、本件各区分建物新築時再建築費評点数の算出の際には、本件建築設備規模補正係数は非木造家屋評点基準表所定の減点補正率の下限である0.93のまま適用されているから、本件各区分建物新築時再建築費評点数は、前記義務を怠ったまま算出されたものであって、評価基準に適合したものということはできない。
したがって、本件各区分建物新築時再建築費評点数は評価基準に適合しないものであるから、これに基づいて算出された平成15年度の再建築費評点数も評価基準に適合しないものになるというべきである。
そうすると、浦安市長は、本件建築設備規模補正係数について、本件一棟建物の延べ床面積等を考慮した適切なものとなるように、非木造家屋評点基準表に定める減点補正率の下限である0.93を超えて、減点補正した上で、再建築費評点数を求めて、これを基に平成15年度の再建築費評点数を算出すべき義務があるというべきであるところ、前記第2の3(1)のとおり、浦安市長は、前記補正を行うことなく本件各区分建物新築時再建築費評点数を求め、これを基に平成15年度の再建築費評点数を求めているから、上記義務に違反し、評価基準に従わずに本件各区分建物を評価し、本件各登録価格を決定した違法があるというべきである。
この点、被告は、浦安市独自で非木造家屋評点基準表に定める減点補正率の下限を超える規模の補正係数を定めることは、これを行っている政令指定都市にあってもその補正係数は都市ごとに異なっており、統一された合理性のある基準というものがない現状において、本件各区分建物に適用されるべき合理性を有する規模の補正係数を定めることは、浦安市長の裁量を超えるものであるから、上記義務は認められない旨を主張する。しかし、被告主張の現状がある場合においても、前記(1)判示のとおり、法は、評価基準自体が適正な時価への接近方法として合理的なものとなるように解釈適用することを要求しており、評価基準第2章第3節二5(1)の定めも、非木造家屋評点基準表所定の補正係数をそのまま適用すると適正な時価を算定することができない場合があることを想定し、そのような場合に適正な時価を算定するために実情に応じた修正が図られるべきことを定めたものと解すべきであるから、被告の主張は採用できない。
(4) 本件各区分建物の適正な規模の補正係数について
そこで、進んで、本件各区分建物の適正な規模の補正係数の数値がどの程度にされるべきかについて検討する。
この点については、規模の補正係数が、前記のとおり、延べ床面積の大小により異なるものであることを考慮した趣旨に基づくものであるから、その制度趣旨に従い、適切な裁量権を行使して、本件事案に即した規模の補正係数を決定するほかはないというべきである。この場合において、裁量事由として斟酌されるべき事情としては、例えば、建築設備の工事費用のうち固定費とみられる部分と変動費とみられる部分がどの程度の割合で存在するか、本件各区分建物が所在する浦安市において延べ床面積が1万m2を超える建物がどの程度存在するか(延べ床面積が1万m2を超える建物について、実情に応じて規模の補正係数を0.93以下に定めている地域との比較も意味があろう。)、他の地域と比較した場合の浦安市における建築設備工事費用の平均単価額の有意的差異の有無や程度等が考えられ得る。このような前記補正係数の数値決定に影響を及ぼすとみられる事情を実態調査等を通じて把握した上で、これらを踏まえ、前記規模の補正係数の制度趣旨に照らして、適切な規模の補正係数が決定されるべきである。
このように、延べ床面積が1万m2を超える建物の規模の補正係数については、一義的に決定し得ず、実情に応じた適切な裁量権の行使によらざるを得ないのであり、このことは、政令指定都市のうち少なくとも札幌市、仙台市(ただし、同市の場合は、独自の補正係数は定めず、運用によって0.93と異なる係数を適用している。)、横浜市、神戸市及び広島市が延べ床面積1万m2以上の場合の本件建築設備補正係数として非木造家屋評点基準表に定める減点補正率の下限である0.93を超える補正係数を定めているものの、その定め方は、別紙「調査嘱託に係る札幌市、仙台市、横浜市、神戸市及び広島市における各建築設備規模別補正係数の規定の仕方」記載のとおり、必ずしも統一されたものとはいえないこと(甲10、調査嘱託の結果)からも裏付けられる。
そして、前記のような実態調査等を経ていない本件においては、裁量により本件各区分建物の規模の補正係数としていかなる数値を定めるべきかの決定に際し、当裁判所がその裁量権の逸脱、濫用を判断する限度についての認定に必要な証拠が十分であるとはいえないというべきである。
そうすると、当裁判所において、適用すべき本件建物設備規模補正係数を確定して、評価基準によって決定される本件各区分建物の価格を認定することはできないといわざるを得ない。
2 争点(1)イについて
(1) 評価基準は、経年減点補正率基準表については、家屋の構造区分に従い、経年減点補正率基準表に示されている当該経年減点補正率によって求めることを規定しており(第2章第3節五1)、経年減点補正率基準表は7種類の用途別と5種類の構造別に区分されている。しかし、評価基準は、一棟の家屋が複数の用途に使用されている場合に、適用すべき経年減点率基準表の用途別区分をどのように決定すべきかについて明確に規定していない。
経年減点補正率は、家屋を通常の維持管理を行うものとした場合に、その年数の経過に応じて通常生ずる減価について補正するもので、家屋の構造別及び用途別の最終残価率(0.20)に達するまでの期間に応じて定額法を用いて算定されたものである。また、用途別区分は、経年減点補正率基準表について、家屋の用途(使用状況)に対応した経年による減価を区分するものである。
通常、一棟の家屋の最終残価までの期間(耐用年数)は、同一構造の場合には用途部分ごとに異なって考えるのではなく、一棟の家屋全体で把握されるものである。また、一般に非木造家屋においては事務所、店舗、住宅、車庫など一棟の建物が複数の用途に用いられる場合が多いが、主たる用途に付随して、又は従属的に使用されている用途部分については、その使用状況を主たる用途の使用状況の中で評価したとしても、家屋の用途に応じた適切な経年による減価を求める方法として合理性を欠くものではないといえる。
そうすると、評価基準は、家屋が複数の用途に利用されている場合に適用すべき経年減点補正率基準表の用途別区分について、原則として当該家屋の現実の使用状況に応じた主たる用途により一棟単位で定めること、その場合には、主たる用途について、床面積の割合が最も大きな用途によって判断することも許容していると解すべきである。
(2) 〔証拠略〕、前記第2の2(4)の事実及び弁論の全趣旨によれば、本件一棟建物は、本件区分建物2及び株式会社新商が所有している区分所有建物の1階から4階部分(延べ床面積約6万5281m2)において、主に原告が大規模小売店の店舗営業を行っており、5階から8階部分(延べ床面積約5967m2)においては、原告の前記店舗の事務所、塾、各種予備校、診療所等として、本件区分建物1の地下1階及び2階部分(延べ床面積約2万2022m2)は、専ら前記原告店舗等の来客用駐車場として使用されているものであると認められ、本件一棟建物の延べ床面積の過半が原告の大規模小売店舗及びその他の店舗として使用されているから、主たる用途は店舗であって、本件一棟建物全体に店舗用基準表を適用することは評価基準に従ったものというべきである。なお、浦安市長は、構造別区分については本件一棟建物の構造ごとに対応した異なる経年減点補正率を適用している。しかしながら、構造別区分は家屋の物理的な構造から生じる経年による減価を区分するものであって、用途別区分とはその趣旨が異なるから、用途別区分について、構造別区分と異なる方法で決定すること自体は、評価基準は許容しているというべきである。
(3) 原告は、本件一棟建物は2以上の用途があるから、評価基準第2章第3節二1(3)の規定を類推するなどして用途の異なる部分ごとにそれぞれに該当する経年減点補正率基準表を適用すべき旨を主張する。
しかしながら、前記規定は、部分別の方法で再建築費評点数を求める際の非木造家屋評点基準表の用途別区分の決定に関するものであり、また、同表は用途別にのみ区分されているものであるから、経年減点補正率基準表とは適用する趣旨目的や区分が異なる。また、前記規定は、一棟の建物で2以上の異なった「構造」を有する場合の規定であり、本件一棟建物のように異なった用途を有する場合の規定ではない。したがって、前記規定を直ちに適用すべき経年減点補正率基準表の用途別区分を決定する際に類推することはできないというべきである。
また、前記(2)認定事実によれば、本件区分建物1は、専ら原告が営業している大規模小売店舗等の来客用駐車場として使用されているものであるから、主たる用途である店舗に付随して、又は従属的に使用されている用途部分であるといえる。そうすると、駐車場用途部分である本件区分建物1について、本件一棟建物の主たる用途である店舗として一体で評価したことが、本件一棟建物の用途に応じた適切な経年による減価を求める方法として合理性を欠く方法ということはできない。
したがって、本件区分建物1に車庫用基準表を適用しないことが評価基準に従わないものということはできず、原告の主張は採用できない。
(4) よって、浦安市長が、本件区分建物1の経年減点補正率の適用に当たり、店舗用基準表を用いて本件店舗用経年減点補正率0.7920を適用したことは、評価基準に従ったものというべきである。
3 争点(1)ウについて
需給事情による減点補正は、建築様式が著しく旧式となっている家屋及び所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる家屋をその対象としている(評価基準第2章第3節六)。これは、<1> 家屋の利用価値及び<2> 所在地域の状況の面から家屋の減価要因をとらえて適正な時価を求めようとするものである。もっとも、評価基準は家屋の評価を再建築価格方式に基づき行うことを原則としていること、需給事情による減点補正を行うべき家屋を前記のとおり限定して規定していることからすれば、その適用は、前記<1>及び<2>の面から特にその必要がある家屋に限定されるべきである。
この点、原告は、大型店舗用建物の一般的な需要自体が低下していたこと、同種の安価な新築物件との競争関係から取引価格が低下していたことなどから市場性が減退しており、このような場合は需給事情による減点補正率を柔軟に適用すべき旨を主張する。しかしながら、前記判示のとおり、需給事情による減点補正率の適用は、前記<1>及び<2>の面から特にその必要がある場合に限定されるものであるところ、原告の主張はこれらの減価要因をいうものではなく、需給事情による減点補正率を適用すべき場合には当たらないというべきである。
そして、本件証拠上、他に、本件各区分建物の建築様式が著しく旧式となっているなどその利用価値を低下させる事情や、その所在地域の状況が本件各区分建物の価額を減少させるものとなっていた事情は認められないから、本件各区分建物について、需給事情による減点補正を行うべき必要があったとはいえない。
よって、浦安市長が需給事情の減点補正を行わなかったことは、評価基準に従ったものというべきである。
4 争点(2)について
前記1において判断したところによれば、本件各区分建物については、本件各登録価格が見直されるべきであり、これを経た後に争点(2)についてなお検討が必要な場合にその限度で審査されるべきであるから、同争点については判断しない。
5 結論
以上によれば、浦安市長のした本件各登録価格の決定については、本件区分建物1に係る経年減点補正率の適用の点、及び需給事情による減点補正をしなかった点に、評価基準に適合しない違法はないが、再建築費評点数の算定の基となる本件各区分建物新築時再建築費評点数の算出の際に適用すべき本件建築設備規模補正係数を誤った点において、評価基準に適合しない違法がある。そして、前記のとおり、評価基準によって決定される本件各区分建物の価格を認定することができないから、その余の争点について判断するまでもなく、本件棄却決定の全部を取り消すべきである。
よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 堀内明 裁判官 阪本勝 高石直樹)